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Lifestyle

インタビュー

どん底から踊ることで救われたベリーダンサー NONOさん

【go'in my way】自分の信じる道を歩み続ける人へのインタビュー。人生のどん底から踊ることで救われたと話すベリーダンサーのNONOさんに、ダンスとの出会いや、その魅力などについて、お聞きしました。

めちゃ笑顔で踊っていた同僚に衝撃を受けベリーダンサーに

「ハハハハハ、わたしも同じことを言って笑われました。『それはリンボーダンスだよ』って。32歳のときに、職場の同僚に『ベリーダンスの発表会に出るので、見に来ない?』と誘われたのです。当時勤めていた職場は、ものすごく仕事がハードで、帰りが終電というのも珍しくありませんでした。みんなうつろな、死んだ魚のような目で働いていて、同僚もわたしもそうでした。ところが、舞台に上がった同僚を見て、びっくりして、衝撃を受けたのです。派手な付け睫に、すごいお化粧をして、きらきらの衣装を着て、めちゃ笑って踊っていたのです。それを見て、『わたしも、やりたい!』と思って、ベリーダンスを始めました」

2005年、その世界ではだれもが知るLUNAさんに師事し、ベリーダンスを始めた。高田馬場、池袋、千葉と3つのスタジオを展開するBaris Oriental Dance Schoolで10年ほどインストラクターを務めるかたわら、各種コンペティションに参加し、優勝歴を持つ。踊り担当で参加している多国籍民族音楽風ジャズロックバンド「Polonets(ポロネッツ)」は、東京都が公認する「ヘブンアーティスト」(第13回)に公募し、ライセンスを取得。ライブハウスや公認の路上などでパフォーマンスを披露している。現在は、やはり第一人者のひとりであるZIZIさんに師事している。

「ベリーダンスに出会ったころが、ちょうどわたしの人生のどん底の時期だったのです。25歳でできちゃった婚して、ベリーダンスを始める直前に離婚しています。ただ、それは前向きな離婚というか、互いに束縛されるのが嫌なタイプで、メールで『そろそろ友だちに戻らない?』と送ると、『いいね』って返事があって、それで別れました。いまでも、いい友だちです。ところが、2人ともお金がないので、別れたあともしばらく同居していて、その間に、わたしに彼氏ができるのですが、浮気されてしまうのです。仕事が忙しい上に、1人娘は小学1年生でいろいろ世話をしてあげないといけない、家も探さないといけない、それなのに彼氏とのことで感情的には、もうぐちゃぐちゃで、最悪の状況でした。それが、ベリーダンスを踊っていると、楽しくて楽しくて、いろんなしんどいことが『なんとかなるか!』と思えるようになったのです」

キラキラの笑顔で踊りを披露するNONOさん。引っ込み思案だったというのが信じられないくらいのはじけようだ。photo by TAKAO SEKI

引っ込み思案がなぜか小学4年生で学級委員

愛知県豊田市の出身。小さいころは引っ込み思案で、小学4年生ごろまで友だちがいた記憶がないという。それがなぜ、ここまではじけてしまったのかというと……。

「子ども心に、『このままではいけない』と思ったのでしょうね。小学4年生のときに、いきなり学級委員に立候補して、なってしまったのです。それでずっと高校3年までクラスのリーダー役を引き受けるのですが、根っこの部分は変わっていないので、『ひきこもりリーダー』なのです。

漫画の『ガラスの仮面』が大好きで、その影響から『女優になりたいから堀越高校に行かせて』と母親に頼んで『お金がないからだめ』と断られたこともあります。堀越の生徒みんなが俳優やタレントというわけでもないのに、おかしいですよね。結局、高校3年のときに、映画専門学校を受けたものの落ちてしまい、女優の道を諦めました。

もともと女優志望だったので、ダンスが向いていたのかもしれません。どん底のとき、ベリーダンスを踊ることで、エネルギーをもらうことができました。ご飯も喉を通らないし、通勤で電車に乗っても息苦しい、そんな状態だったので、あのとき、ベリーダンスに出会えて、ほんとよかったです。とても救われました」

「人生どん底のときにベリーダンスに出会えてよかったです」と話すNONOさん 撮影 繁田統央

98%は苦しい、2%の喜びのために踊り続ける

これまでの生涯で2度、最高と思えるパフォーマンスを経験することができたという。それでも、根が引っ込み思案なNONOさんにとって、舞台出演は大きなプレッシャーになるそうだ。コロナ禍で途切れてしまった踊りのキャリアや今後について、NONOさんは、こう話す。

「いまも会社勤めを続けていて、プロかアマかがあいまいではあるのですが、わたしとしては舞台に上がるときは、あくまでもプロであって、お客様にどれだけ楽しんでもらえるかを常に考えながら踊っています。単純に踊るのは『楽しい楽しい』ではなく、本番の予定が入った途端、プロダンサーとしての意識がはたらき、修行モードに突入するのです。

舞台まであと何日か逆算し、踊りの構成や衣装などを考えながら、練習します。一方で、仕事もある。黙々と、修行のようです。98%が『苦しい』なのに、残り2%の喜びがあるから、やめないでいられる。修行中の私が、一度の舞台で、音と一体となって心技体がそろった恍惚感を得られるは、ほんの数10秒です。そんな瞬間のために踊っています。

ベリーダンスは、その名前にあるように、ベリー(belly)=お腹を丸く描くように踊ります。基本の動作はありますが、バレエのように型があるわけではないので、割と自由がきく、初心者の方にもとっつきやすい踊りだと思います。衣装も露出が多いですし、最初は恥ずかしいかもしれませんが、踊っているうちに、自分を解放していくことができます。『わたし、こんなことして、いいんだ』と。ふだん勤め先でプレッシャーを感じている女性に、おすすめですね。

わたし個人は、コロナ禍で舞台に上がることができなくなり、ふとこれまでを振り返って、いろいろと考えることがありました。どうしても体育会系みたいになってしまい、根を詰めて踊ってきたのですが、これからはもっとゆったりと、自分のために、純粋に踊りを楽しんでみてもいいのかなと。でも、わたしのことですから、再び舞台に上がれるようになると、がんがん踊っているかもしれませんね」

これまでで2度経験した最高のパフォーマンスを発揮できたステージのうちのひとつ。ふだんと違い、OL姿で踊りを披露した。photo by HORI

NONOさん プロフィル

女性の人生すべてを表現できるオリエンタルダンスに魅了され、2005年LUNAに師事。Baris Oriental Danceインストラクターでの10年を経てフリーに。現在はZIZIに師事。クールに情熱疾走する多国籍民族音楽風ジャズロックバンド「Polonets(ポロネッツ)」では踊り担当。同バンドにて、東京都公認 第13回ヘブンアーティストライセンス取得。レストランザクロ(日暮里)レギュラーダンサー。ライブハウスや大道芸など様々なシーンで活動。“心から沸き立つ踊り”を大切に、日々修行中。Winds from Nileフォークロア部門グループコンペティション優勝。広告代理店勤務。

Profile

二居隆司

読売新聞に入社以来、新聞、週刊誌、ウェブ、広告の各ジャンルで記事とコラムを書き続けてきた。趣味は城めぐりで、日本城郭協会による日本百名城をすべて訪ねた。

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