【メットガラ2026】のレッドカーペットに“デニム”で登場! 新イット・モデルの“一見普通”なルックが議論を呼ぶ
Taylor Hill / Getty Images
毎年5月第1月曜日に開催される恒例のメットガラが、2026年5月4日(現地時間、以下同じ)、ニューヨークのメトロポリタン美術館(通称MET)で行われた。今年は「Fashion is Art」というドレスコードのもと、レッドカーペットでは芸術作品さながらの装いが次々と披露されるなか、インド出身の新鋭モデル、バヴィータ・マンダヴァがエフォートレスな“デニムルック”で登場。一見ごく普通に見えるスタイルはまたたく間に賛否を呼び、ネット上ではファッション議論へと発展した。さらにこの日はバヴィータが、会場でSNS投稿が禁止されているメットガラの隠れた伝統、「バスルーム・セルフィー」をインスタグラムに投稿。410万を超える「いいね!」を集め、こちらも大きな話題となっている。マリ・クレール インターナショナルの米版デジタル記事よりお届け。
バヴィータ・マンダヴァのメットガラでの「デニムルック」で浮き彫りになったファッション界の「矛盾」
ファッション界は、控えめさ、ステルス・ウェルス(見せびらかさない豊かさという、富裕層の美学)、そして「気取らない」着こなしを好むと言われている。それなのに、なぜバヴィータ・マンダヴァが実際にそのスタイルでレッドカーペットに登場したとき、ネット上は騒然となったのだろうか。
バヴィータの2026年メットガラの装いは、極めて現代的なファッションの謎から始まった。その夜最も物議を醸した「デニム」は、果たして本当にデニムだったのかどうかという謎である。
バヴィータは、ファッション界で最も注目されるMETの階段に、色あせたブルーのデニム、白いタンクトップに透け感のあるジップアップトップスを着用して登場した。この組み合わせは、ニューヨークの他の月曜の夜であれば、トレーダー・ジョーズ(アメリカで若者の間でおしゃれとされるスーパーマーケットチェーン)への買い出し、ダウンタウンで行われるオーディション、あるいは地下鉄のL線で電車を待つ、顔の輪郭がシャープな美しい人物を連想させたかもしれない。メットガラのレッドカーペット上においては、このルックは、ゲッティ・イメージズの写真検索ページを何度か更新して、自分の目が正しいのか確かめたくなるようなものに見えた。
巨大なトレーンはどこ? アーカイブのティアラは? 「私を見て」と言わんばかりのコルセットは? カーペットが敷かれた階段を上がるのに3人がかりで支えながら、無事に階段を上れるよう祈るしかないような18kgもあるドレスは? バヴィータのシャネルのルックには、メットガラの豪華さを象徴するような、わかりやすい視覚的要素が一切なかった。そのかわり、まるで自分が実際に持っているかもしれない服のような、どこか気まずいほど親しみやすい雰囲気をもたらした。
その「デニム」は、実のところ、デニムではなかった。シャネルのメゾンによると、バヴィータが着用したのは、2025年12月にニューヨークで開催されたシャネルのメティエダール コレクション ショーのオープニングで彼女が着たルックの「オートクチュールの再解釈」であり、彼女が最初にスカウトされた街、ニューヨークへの意図的なオマージュだった。シャネルはまた、この衣装はメゾンのアトリエで250時間を要して制作されたことを明らかにした。
つまり、一見シンプルなその姿こそが、職人技の結晶だったのだ。シャネルのアトリエの手にかかれば、ファッション界で最もありふれた衣服でさえも、あえてごく普通に見えるように丹念に作り込まれたものへと変貌する。
ネット上では、ほぼ即座に賛否を呼んだ。このルックをスマートで控えめだと評価する人もいれば、メットガラのデビューとしては物足りないと感じる人もいた。シャネルをまとって非常に重要な瞬間を迎えるモデルなら、なおさらだというのだ。
しかし、この議論のどこかで置き去りにされていたのは、実際に誰かがバヴィータ本人に、このルックについてどう思うか尋ねたのかどうかという点だった。話題はすぐに彼女自身のことから、「ファッション・モーメント」とはどうあるべきかという理想像を語るものになってしまった。
そうしたせめぎ合いが、ネット上の反応をこれほど激しいものにした一因だ。2025年12月、バヴィータはニューヨークの地下鉄の廃駅内で開催されたシャネルのメティエダール コレクション ショーに出演し、同ブランドのランウェイショーのオープニングを飾った初のインド人モデルとなった。この起用そのものが彼女のキャリアにおいて象徴的な出来事だった。バヴィータはニューヨーク大学に在学中、ブルックリンの地下鉄駅でスカウトされたことで有名だからだ。
そのルックは偶然の産物ではなかった。バヴィータをシャネルのブレイクスターのひとりにしたランウェイの瞬間を、クチュールレベルで再現したものなのである。
しかし、ファッションの物語性というのは、特にメットガラのような、これほど多くの意味を背負ったイベントにおいて真空状態で成立するものではない。一部のファッションファンは、本来ならモード史に名を刻むようなデビューを果たす人物に与えられる、あからさまな華やかさがバヴィータには与えられていなかったと感じた。ファッション界は控えめなスタイルを愛するというが、実際にそのスタイルで現れると、話は別だ。
そして正直なところ、その矛盾こそが、現在のモダン・ラグジュアリーの核心にある。ファッション界は、高価なものを一見普通に見えるようにすることに夢中だ。家賃より高いのに使い古したようなバッグ、実際は全く普通ではないのに、一見ただの白いタンクトップ、シャネルのアトリエで丹念に作り上げられたシルクモスリンの「デニム」などがその例である。
だからこそ、議論が続くにつれて、バヴィータのルックは興味深いものになっていった。それは、スマートフォンをスクロールしながらパッと見ただけで理解されるようには作られていなかった。それを理解するには文脈が必要だった。地下鉄でスカウトされたこと、地下鉄の廃駅でのランウェイの再現、素材のトリック、そして、いまだに派手な演出が評価される空間で、これほどまでにカジュアルなルックが現れたという“違和感”。
そしてもちろん、アナ・ウィンターがメットガラのルックを承認するのは周知の事実であり、つまりこれらはすべて計算されたものなのだ。シャネルは、このルックがメットガラにふさわしいかどうか、人々が疑問を抱くことを承知していた。また、シャネルは、ステルス・ウェルス、ノームコア・ラグジュアリー、トロンプルイユ(だまし絵)的な装いへの熱狂を考えれば、このルックが議論の的になることも理解していただろう。
ファッション業界は、目を見張るような値札がついた、一見普通のフラップバッグを私たちがほしくてたまらなくなる対象へと難なく変えてしまう一方で、メットガラの階段に「デニムではないデニム」が現れただけで、ネット上を存在論的危機のような騒ぎにおとしいれる。おそらくそれは、人々がいまだにメットガラ特有の派手な見た目のドレスコードを求めているからだろう。しかし、ファッションはこれまでルールに縛られすぎて前に進んだためしはない。
とはいえ、どこかでAmazon創業者ジェフ・ベゾスは、ネットがあの夜、怒りをぶつける別の相手を見つけてくれたことに、胸をなでおろしているかもしれない(今回、ベゾス夫妻はメットガラの名誉共同議長を務めていたが、会場周辺では超富裕層とファッション業界の結びつきを批判する抗議活動も行われていたと報じられている)。
※( )内編集部注
translation & adaptation: Akiko Eguchi
・まるで歩く芸術作品!【メットガラ2026】圧巻のレッドカーペットルック14選 ・億万長者ジェフ・ベゾス夫妻の資金援助も話題!「メットガラ」2026年のテーマが発表に
Share
リンクを コピーしました