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市川染五郎の覚悟を見た。歌舞伎座初主演『信康』で“絶対に負けられない戦い”に挑む

『信康』の市川染五郎 

2日に幕を開けた歌舞伎座の「六月大歌舞伎」。第二部の『信康』は、17歳の若手俳優が主役を勤めている。襲名披露公演などを別にして、歌舞伎座の本興業で十代がタイトルロールを張るのは極めて稀なこと。その重責を担って大役に挑戦しているのが、市川染五郎である。

『鎌倉殿の13人』では美しき源義高役で話題に

『信康』は、織田信長が天下統一を推し進める戦国時代の物語。主人公である徳川家康の嫡男・信康は、武田軍との戦いで徳川軍一手の大将として頭脳的な軍略で敵を蹴散らし、織田勢の勝利に貢献した。本作は、武功で一躍名を上げた信康が、その優れた資質ゆえ信長に危険視され、非業の死を遂げるまでの物語である。

『信康』の公演を前に開かれた取材会で意気込みを語る 

初演は1974年で、新作歌舞伎を対象とした脚本賞である大谷竹次郎賞を受賞した。上演されるのは、七代目市川新之助(現在の十一代目市川海老蔵)が信康、父の十二代目市川團十郎が家康を演じた96年の歌舞伎座公演以来、26年ぶり。今回、染五郎の祖父である二代目松本白鸚が家康役を勤めていることも話題だ。

市川染五郎は、2007年に2歳で初お目見得。4歳で四代目松本金太郎として初舞台を踏み、祖父・父とともに高麗屋三代揃っての襲名となった18年1・2月の歌舞伎座公演で、12歳にして八代目市川染五郎を襲名した。以後、歌舞伎の舞台に数多く立ち成長を示す一方、美麗なルックスからファッションモデルなど俳優業以外の仕事も多い。

歌舞伎座初主演にあたり、信康ゆかりの地を訪ねて役柄へのイメージも膨らませた 

また、現在放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に源義高役で出演。美しすぎる貴公子として反響を呼び、義高が亡くなる回が放送された5月1日の夜はSNSで「義高ロス」のワードが飛び交った。

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そんな追い風を受けて歌舞伎ファン以外にも知名度が上がっていることもあり、『信康』は歌舞伎公演としてはいつにも増してマスコミで紹介されるなど、初日前から期待が高まっていた。

だからこそ、染五郎にとって本作は、次代の歌舞伎界を背負って立つ役者の道を歩む上で“絶対に負けられない戦い”であることも間違いない。評判を取れば今の追い風をさらに強くすることができる。その一方で、信康は勇猛果敢な戦国武将だ。史実では乱暴者だったという説もある。染五郎がこれまで演じてきたのは、美少年のルックスも相まって繊細な役柄が多かっただけに、どのような信康像をつくるのか注目されていた。

【六月大歌舞伎】
●公演期間: ~6月27日(月)
●劇場:歌舞伎座(東京都中央区銀座4丁目12−15)
●上演時間:第一部 午前11時~/第二部 午後2時15分~/第三部 午後6時~  
※【休演】9日(木)、20日(月)
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Profile

香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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