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『クーパー家の晩餐会』より クリスマスの食卓を囲むクーパー夫人(写真右・ダイアン・キートン)や妹(マリサ・トメイ)たち
2021年のクリスマスに見たいオススメ映画③『クーパー家の晩餐会』
2021.12.16
いよいよクリスマスも間近。家族、友人、恋人…いろいろな人間関係が交錯するこの季節にぴったりの映像作品を紹介しています。ラストは豪華な面々が演じる、ある一家のクリスマスの物語
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『クーパー家の晩餐会』より クリスマスの食卓を囲むクーパー夫人(写真右・ダイアン・キートン)や妹(マリサ・トメイ)たち
2021.12.16
いよいよクリスマスも間近。家族、友人、恋人…いろいろな人間関係が交錯するこの季節にぴったりの映像作品を紹介しています。ラストは豪華な面々が演じる、ある一家のクリスマスの物語
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大人になれば家族や親戚に隠しておきたいことのひとつやふたつ、誰にだってあるもの。そんな面々が、年に一度実家に集まるクリスマスを無難にやり過ごそうとして巻き起こす珍騒動を描いたハートウォーミングなホームコメディ。それが『クーパー家の晩餐会』である。
毎年恒例、親族が一堂に会するクリスマスディナーの準備を進める熟年のクーパー夫妻。ふたりの間には、約40年間の夫婦生活であらわになった価値観の違いがもとで亀裂が生じ、今年のクリスマスが過ぎたら離婚することを決めている。でも、おそらく最後になる晩餐会をしょっぱい思い出にしたくないからと、暗い事実は秘密にしようと決めていた……のはクーパー夫妻だけではなかった。
リストラされて失業中、就活しても惨敗続きの長男。普通の幸せに憧れているのに、望みゼロの不倫にどっぷりハマっている長女。子どもの頃から優秀な姉に対するコンプレックスを抱き続け、そんな姉のためにクリスマスプレゼント代を払う気になれず衝動的に万引きしてしまう妹。反抗期と妄想恋愛期が一度にやって来て、ブサイクな青春真っただ中の孫。
全員が、そっとしておいてほしい現実を抱えている。そんな家族たちが嘘で武装し、幸せですって顔をしてクリスマスの食卓を囲んだが、すべてを吹っ飛ばす出来事が起こる——。
登場人物が多いので、とっちらかっている印象があるかもしれないが、この映画のツボはストーリーを追うことではなく、心の機微を語るセリフの数々である。こんなはずじゃなかった人生を歩む人々の淡々とした述懐。その言葉のひとつひとつに自分を重ね合わせて、グッとくる人は少なくないはず。
監督は、ショーン・ペンとダコタ・ファニングが知的障害を持つ父とその娘を演じた『アイ・アム・サム』(2001年)で知られるジェシー・ネルソン。
そしてクーパー家の人々を演じるのは、名匠ウディ・アレン監督『アニー・ホール』(1977年)でアカデミー主演女優賞を獲得したダイアン・キートン、ゴールデングローブ賞はじめ数々の栄誉に輝く名バイプレイヤーのジョン・グッドマン、『レ・ミゼラブル』(2012年)や『Mank/マンク』(2020年)での演技が印象深いアマンダ・サイフレッドなど実力派揃い。公開当時はオールスターキャストのクリスマス映画としても注目された。
クリスマスという特別な日は人を高揚させるもの。さらに思わぬアクシデントが相まって、それぞれの「秘密」に変化をもたらす。さて、この家族はどんなふうに今年の晩餐会を終えるのか?
ときにめんどくさい存在だけど、年に一度クリスマスの食卓を囲み、おしゃべりしたり、たまに小競り合いができる家族って、悪くないなと思わせてくれる映画だ。
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香月友里
かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る
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