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2021年のクリスマスに見たいオススメ映画②『キャロル』

『キャロル』より 年末で賑わうデパートで出会うキャロル(写真右・ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ) © NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

いよいよクリスマスも間近。家族、友人、恋人…いろいろな人間関係が交錯するこの季節にぴったりの映像作品を紹介します。2作目は主役2人のファッションも見逃せないこちら!

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惹かれあうふたりの女性、そのファッションにも注目

『アビエイター』(2004年)、『ブルージャスミン』(2013年)でアカデミー賞に輝いたケイト・ブランシェットと、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)の演技で高い評価を受けたルーニー・マーラが、1950年代の道徳観に抑圧されながらも惹かれ合う女性を演じたラブストーリーが、『キャロル』である。ニューヨーク映画批評家協会賞やトロント映画批評家協会賞などで作品賞を受賞。ルーニー・マーラはカンヌ国際映画祭で女優賞を獲得した。

物語の始まりはクリスマス間近のニューヨーク。テレーズ(マーラ)は写真家になることを夢見ながらアルバイトで生活している。彼氏からは結婚をせがまれているが、なんとなく気が乗らない。

写真家になることを夢見るテレーズ
© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVE

ある日のこと、彼女はバイト先のデパートで、娘に贈るクリスマスプレゼントを買いに訪れた美しい婦人(ブランシェット)に目が釘付けになる。婦人が店に置き忘れた手袋をテレーズが郵便で届けたところ、婦人がお礼にランチをご馳走したいと電話をかけてきた。それをきっかけに、ふたりは徐々に距離を縮めていく。

婦人の名はキャロル。娘と邸宅で暮らし、別居中の夫とは離婚することになっているという。テレーズが初めてキャロルの自宅に招かれたとき、キャロルの夫が不意打ちで姿を見せる。そうして始まった夫婦の口論で、テレーズはキャロルが同性愛者であることを知り、テレーズ自身の心に芽生えた恋情にも気づくのだった——。

忘れた手袋を送ってくれたお礼にと、テレーズをランチに誘ったキャロル
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原作は、アルフレッド・ヒッチコックの『見知らぬ乗客』(1951年)や、フランスの巨匠ルネ・クレマンの代表作『太陽がいっぱい』(1960年)の原作者としても知られるパトリシア・ハイスミスが、1952年に発表し大ベストセラーとなった小説『The Price of Salt』。ただし、当初は「クレア・モーガン」というペンネームで出版された。同性愛が当時の社会では受け入れ難い題材だったので、世間の非難を恐れて偽名を使ったという(1990年にハイスミス名義で再販された)。

そんな時代に書かれた恋愛物語である。同性愛は治療できる“病気”で、同性愛者であることが我が子の親権を剥奪される理由にもなっていた世の中で、法に則った最低限の権利を主張するために、キャロルとテレーズは自分の本心を封殺するしかなかった。

恋人とは毎朝一緒に出勤するほどうまくいっているテレーズだが……
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この映画の見どころは言うまでもなく、魂に突き動かされるように求め合うふたりの愛の行方だが、主役ふたりのファッションも見逃せない。特に印象的なのは、キャロルの登場シーンのいでたちだ。艶やかなブラウンの毛皮コートと、コーラル系の帽子とストール。彼女の美貌と気品を際立たせ、テレーズが一目で心奪われるシーンに説得力を与えている。

一方、テレーズの服装はクリエイターを目指す若い女性らしいセンスの良さを窺わせる。衣裳を担当しているのは、『恋におちたシェイクスピア』(1998年)、『アビエイター』(2004年)、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009年)で、3度のアカデミー賞衣裳デザイン賞に輝いたサンディ・パウエル。愛が深まるにつれて成長する心情の変化を、ファッションで見事に表現している。

キャロルと出会った頃、自分が何を望んでいるかわからず、いつも相手に流されると語っていたテレーズ。彼女が最後に自らの意志で下した決断を見届けてほしい。

『キャロル』Prime Videoで配信中© NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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