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'西島秀俊  俳優。1971年生まれ。東京都出身。94年、『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。最近の出演作はNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、ドラマ「シェフは名探偵」など。映画『劇場版 きのう何食べた?』『シン・ウルトラマン』などの公開も控える。 / photo: Hiromasa Sasaki / ヘアメイク: 亀田 雅 / スタイリスト: カワサキ タカフミ'

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西島秀俊 俳優。1971年生まれ。東京都出身。94年、『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。最近の出演作はNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」、ドラマ「シェフは名探偵」など。映画『劇場版 きのう何食べた?』『シン・ウルトラマン』などの公開も控える。 / photo: Hiromasa Sasaki / ヘアメイク: 亀田 雅 / スタイリスト: カワサキ タカフミ

西島秀俊スペシャルインタビュー!自分を変える出会いとは?

第74回カンヌ国際映画祭で、映画『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞を受賞した。主演を務めた西島秀俊は、この作品の経験が自身にとって転機になりそうだと語る。

『ドライブ・マイ・カー』は、濱口竜介監督が村上春樹の短編小説を映画化した作品で、日本映画として初めてカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した。濱口監督は近年、ヴェネチア、ベルリン、カンヌと、世界3大映画祭で立て続けに評価されている。西島秀俊も、濱口監督の作品に強く惹かれていた。

「監督の『寝ても覚めても』を観て、才能に衝撃を受けました。それまでの作品もそうですが、画や演出がすばらしい。作品ごとにどんどん総合的にレベルが高くなり、どこまで行くんだろう、と。今回ご一緒できて嬉しかったです」

『ドライブ・マイ・カー』は、妻を亡くした演出家の喪失と希望を描いた物語だ。濱口監督は原作の世界を大事にしながら、村上春樹が同時期に書いた別の短編のモチーフも使い、さらに『ワーニャ伯父さん』や『ゴドーを待ちながら』などの演劇作品も大胆に取り入れた。

『ドライブ・マイ・カー』
脚本賞は、濱口竜介監督と共同脚本の大江崇允に贈られた。TOHOシネマズ日比谷ほかで全国上映中 ©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

「監督は今までも、人の底知れなさを描いています。登場人物や観客が『この人はこういう人物だ』と思っていたら、突然変貌する。今回の原作にもそういう要素がたくさんあり、監督がテーマにしてきたことと一致していると思いました。僕が演じた家福という男は、いろんなことがわかっているように見えて、周囲の人の底知れなさにたびたび驚かされています」

小説では主人公の内面が綴られるが、映画においては明示されないため、当初は演じ方に迷いも生じたという。

「内面を表現するために、キャラクターに何かを付け加えて演じる必要があるのではないかと不安に思いました。でも、監督はそうしなくていいと。過剰な演技をすることなく、役に集中すればいい。登場人物の間に心の行き来や断絶があることで、十分ドキドキするものになるという考えでした」

また、「本読み」をくり返す演出法が刺激的な体験を生み出したという。

「感情を入れずに脚本を何度も読みあげ、相手の台詞も完全に入っている状態になるまで、徹底的に準備しました。ジャン・ルノワールが実践し、ロベール・ブレッソンの本にも書かれている演出法です。そういう方法があることは知っていましたが、体験するのは初めて。言葉は何度も交わしているけれど、本番で急に相手の感情が自分に入ってくるんです。生きている人間が目の前に現れ、愛情や憎しみが一気にあふれる。本当に不思議で、感動的な出来事でした」

この体験を経て、ほかの作品に取り組むうえでも変化が生まれそうだと話す。

「改めて台詞の重要さを感じましたし、相手と自分の心のやりとりがさざ波のように繊細であっても、見ていて面白いものになるのだと実感しました。今後、言葉を聞くことや脚本を読みこむこと、自分の中で起こる感情を信じることに、より重きを置くようになるのかなと思います」

20代で俳優デビューし、今年50歳を迎えた。今、話題作に次々と出演しているが、これまでの歩みは決して順調ではなかったと振り返る。

「20代、30代は仕事のない時期が長かったので、今は仕事があることが幸せで楽しくて仕方がない。現場が一番好きです。仕事がない頃には、毎日映画館へ行っていました。当時、黒沢清監督が映画館で3000本以上観ているとおっしゃっていて。3000本観るには、1日1本観ても10年近くかかる。今すぐ始めようと思いました」

その頃に観て、脳裏に焼きついた特集上映があるという。若き西島も濱口監督も、そこに居合わせていた。

「2000年に、ジョン・カサヴェテス監督の映画を集めた『カサヴェテス2000』という特集上映がありました。観た後に渋谷を自転車で走り回るくらい興奮して。どこがすばらしいのかを話すにはすごく時間がかかるけど──奇跡のような映画で。僕はそこで感じたものと、自分の仕事を結びつけられず、カサヴェテスのことを考えると演じられなくなると思って避けてきました。でも、濱口監督はその奇跡に向かって、ずっと作ってきた。20年を経て濱口監督と出会い、自分もまた一から積み重ねていきたいと思いました。『ドライブ・マイ・カー』は僕にとって、大きな意味を持つ作品です」

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