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映画『アアルト』監督ヴィルピ・スータリにインタビュー。夫妻の手紙から見えた素顔と男女平等先進国フィンランドについて

アイノ・アアルトの女性としての魅力。男女平等先進国フィンランドの現状について

映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督

━━ヴィルピさんはアイノ・アアルトにどんな刺激と学びを受けましたか。

モダンな女性として非常に刺激を受けました。女性が働くこと自体が珍しい100年前に第一線で仕事をして、夫のパートナーとして同等に仕事をこなしていたということ。さらに彼女は社会的意識が高い人で、飾りではなくもっとリアルなものを使って普通の人の生活を豊かにしようと考えていた人でした。そして母親でもありクリエイティブなアーティストであり、アルテックのアーティスティック・デザイン・ディレクターから、のちにCEOとなりビジネスウーマンという顔もある。色々なことを担っていた人です。私の夫も俳優で二人で会社をやっているので、今回の制作中に彼女に勇気づけられた部分がたくさんありましたね。

映画『アアルト』
(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film

━━2023年のジェンダーギャップ指数ではフィンランドは3位ですが一方、日本は125位ととても低く、その環境下で悩んでいる国民が多いのが現状です。フィンランドがここまで男女平等先進国へと成長した理由はなぜだと思いますか。

100年前からたどれば第2次世界大戦後の経済的な問題があったのが一つの理由だと思います。男女ともに働かなければ社会が立て直せない状況でした。近年の動きでいうと、社会的な福祉が発達したこともとても大きな変化です。女性が外で働けるよう保育園ができたり、社会の構成要素にそういったものがしっかりと組み込まれていきました。ただ他の国と比べたら平等かもしれないですが、女性の平均的な収入は男性に比べて80%と完全に平等ではなく、ギャップがまだあるのが現実です。またDV問題もはびこっており、皆で改善しなければいけない問題だと言われています。

━━社会面以外に家庭面での平等はどうですか? フィンランドでは夫婦で家事や育児をすることがノーマルなスタイルとのことですが、夫婦で話し合ったりうまく生活するコツなどはありますか。

家庭面はここ20年くらいで大きく変化したと思います。私の父は全く家事をやらず、母が家事をして父が働き生計を立てるスタイルでした。ですが、夫や息子を見ていると家事をすごくやるんですね。どうしてそういう流れになったかというと、私は「教育」が鍵を握っていると思います。フィンランドの大学は男性より女性の学生が多く、これは女性の教育レベルが高いとも受け取れます。また、すべての教育課程において、男女平等の考え方が浸透しているので、段々とそういう考え方に自然とシフトできたのかもしれません。私の家では夫が全て料理をしますよ。最初の頃は私がやっていましたが、今は夫がやっていますね。

━━最後にこの映画をどんな人に観てもらいたいですか。

色々な側面がある映画に仕上がったと思うので、建築が好きな方にはアアルトの親密な部分が分かると思いますし、デザインが好きな人にはアアルトの生活すべてがクールに見え、インスピレーションがわくと思います。できるだけたくさんの方に観てもらえることを祈っています。

photos:Tomoko Hagimoto
interview & text:Saki Shibata 
edit: Maki Kunikata

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映画『アアルト』
公開日:1013日(金)
監督:ヴィルピ・スータリ 
出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト 他
日本語字幕:横井和子 
字幕監修:宇井久仁子
配給:ドマ 
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会
協力:アルテック、イッタラ
公式サイト:https://aaltofilm.com/

Profile

ヴィルピ・スータリ(VIRPI SUUTARI)

1967年生まれ。フィンランドのヘルシンキを拠点に、映画監督、プロデューサーとして活躍。ヨーロッパ・フィルム・アカデミー会員。映画「アアルト」は、“フィンランドのアカデミー賞”と称されるユッシ賞にて音楽賞、編集賞を受賞した。

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