×

映画『アアルト』監督ヴィルピ・スータリにインタビュー。夫妻の手紙から見えた素顔と男女平等先進国フィンランドについて

幼少期から身近なアアルト建築の存在

映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督

━━幼少期の頃からアアルトの設計した図書館で過ごしたとのことですが、幼いながら、どんな部分に惹かれていたと思いますか。その空間はどんな快適さがありましたか。

私は北極圏の小さな街で生まれ育ち、子供だった、1970年代は質素で贅沢なものがないエリアでした。そんな中、図書館へ行くととても豪華で贅沢な感じがしたのを覚えています。それは子供だけでなく、大人にとっても贅沢な場所だったと思います。特に冬は寒くてマイナス30℃まで下がるので、図書館に入るととても暖かくて歓迎してくれている気がしました。革の椅子や真鍮(しんちゅう)でできたランプなども美しい印象が残っています。その隣にアアルトの建物の音楽学校もあり、私たちは午後の時間をアアルト設計の建物で過ごしていたのですが、それは公共の広場を美しいものとしてみんなで共有するという社会民主主義的な考え方だと思います。アイノにもそういった考え方があり、普通の人の日常生活をより豊かにする考え方が基盤となっています。またアイノは子供が使うような家具や幼稚園、ヘルスセンターなどみんなが使う公共の場所を建築していました。フィンランド人はアアルト建築に囲まれて育ったと言えるでしょう。

映画『アアルト』
(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film

━━そういった存在であるのは現代でも変わらず?

私たちの世代は日常生活に属しているもので、みんな慣れているといった感じでした。いつもあるので流行遅れにもならない存在でしたが、どの家にもあるからあまりかっこ良くないよねと批判された時期もありました。しかしここ数年、若い人たちにも人気が出ていて、アートの再発見といったムードが流れています。

━━批判を受けた時期もあったのですね。

アアルトが年を取ってきた1960年代頃、若い建築家に攻撃された時期がありました。彼らはむき出しのコンクリートを使っていて、アアルトは主に大理石や木材など高い材料を使っていたので「エリート建築だ」と批判されていました。今のフィンランドでは木の建築がまた復活してきて、ある種ルネサンスのような感じでクールだねと言われてきています。

━━世代を超えて愛されている存在だということがわかります。

私自身もそう感じたことがあって。3人子供がいるのですが、長男が家を出るときに家にあるアアルト スツールを全部持っていってしまったんです(笑)。また2番目の子供が家を出るときは、私が持っていたアイノグラスを全部(笑)。それを見て、本当に人気なんだと実感しましたね(笑)。

(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film
映画『アアルト』
(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film

映画『アアルト』
公開日:1013日(金)
監督:ヴィルピ・スータリ 
出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト 他
日本語字幕:横井和子 
字幕監修:宇井久仁子
配給:ドマ 
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会
協力:アルテック、イッタラ
公式サイト:https://aaltofilm.com/

Profile

ヴィルピ・スータリ(VIRPI SUUTARI)

1967年生まれ。フィンランドのヘルシンキを拠点に、映画監督、プロデューサーとして活躍。ヨーロッパ・フィルム・アカデミー会員。映画「アアルト」は、“フィンランドのアカデミー賞”と称されるユッシ賞にて音楽賞、編集賞を受賞した。

リンクを
コピーしました