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ディカプリオ、ローレンス、アリアナ・グランデ…スターが勢ぞろいの2022アカデミー賞候補作『ドント・ルック・アップ』

来る3月28日(日本時間)に発表される「第94回米国アカデミー賞」。作品賞候補のなかで、いますぐ配信で見られる作品を紹介しています。2作目は主役級スターを惜しみなく配したこの作品です。

Netflix史上最長記録を打ち立てた話題作

今年のアカデミー賞は、史上最多のノミネートを果たしたNetflix作品の行方が注目ポイントのひとつとなっているが、作品賞候補に挙がった2本のうち、超豪華なキャスト陣が話題となり、公開後1週間の総視聴時間でNetflix史上最長記録を打ち立てたのが『ドント・ルック・アップ』である。

ミシガン州立大の天文学教授・ランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)。教え子が彗星を発見したことで、とんでもない騒動に翻弄されることになる

監督・脚本・共同制作は、リーマンショックの混乱に乗じて巨額の利益を得たトレーダーたちの実話を元にした『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)や、ジョージ・W・ブッシュ大統領のもとで副大統領を務めたディック・チェイニーを描いた『バイス』(2018年)など、社会派作品で知られるアダム・マッケイ。本作も彼らしい現代への風刺が効いている。

天文学部の大学院生・ケイト・ディビアスキー(ジェニファー・ローレンス)

天文学部の大学院生ケイト・ディビアスキー(ジェニファー・ローレンス)が未知の巨大彗星を発見した。研究室の面々は歓喜するが、大学の師であるランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)は軌道を計算し、この彗星があと6ヶ月と14日後に地球と衝突し、地球上の生物が滅亡するほどの破壊力を及ぼすことを知る。

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ふたりは危機を世に訴えるべく奔走するが、大統領(メリル・ストリープ)は聞く耳を持たず、コマーシャリズムに毒されたマスコミの反応もトンチンカン。地球滅亡の訴えは抹殺された……と思われた。

地球の危機を世に訴えるため、テレビのニュースショーに出演するケイトとミンディ博士。ケイト・ブランシェット(写真左端)が、パッと見彼女とは思えないほど米国のTVあるあるな女性キャスターに化けているのも見どころ

ところが、スキャンダルのせいで間近に迫った中間選挙敗北の窮地に立たされた大統領が、支持率アップを目論んでミンディ博士の主張を利用することを思いつき、彗星衝突阻止プロジェクトをぶち上げると方向転換。さあ、ここから地球救済のドラマティックな物語が始まると思いきや、ポンコツな面々による唖然呆然な展開が繰り広げられることになる——。

ディカプリオ、ローレンス、ストリープのほか、ケイト・ブランシェット、アリアナ・グランデなど主役級スターがずらりと顔を揃える。また、本作とアカデミー賞作品賞を争う『DUNE/デューン 砂の惑星』で主演を果たし、“新時代のプリンス・オブ・ハリウッド”と謳われるティモシー・シャラメも出演。本作の見どころは、そんなスターたちが群像劇の中で顔見せだけに収まるものかとガチで爪痕を残していることだ。

ミンディ博士とケイトが企画した地球の危機を訴えるイベントでメッセージソングを熱唱する人気歌手ライリー・ビーナ (アリアナ・グランデ)

メリル・ストリープが扮する大統領はトランプ前大統領を模しているといわれ、利権と支持率しか頭にない愚かな政治家をリアルに表現している。一方、ケイト・ブランシェットは社会問題を娯楽として報じることに疑問を持たないTVキャスターを批評性たっぷりに演じた。

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目先の利益しか頭になく、全人類をミスリードするポンコツ大統領(メリル・ストリープ)

そんな強者たちが怪演を見せつける中、演技の幅広さを再認識させたのはレオナルド・ディカプリオである。実直な科学者が国家権力や世間にもてはやされることであっさりと迷走してしまうさまを、おかしみと愛らしさもって演じきっていて、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされなかったのが惜しまれる。

ブラックジョーク満載のSFコメディと見せて、実は痛烈な社会批判を込めたメッセージ性の高い作品だ。ディカプリオはNetflixのインタビューで、「これは現代文化における例え話。科学的事実に耳を傾けられない人間の物語だ」と語っている。かねてより環境問題に積極的に取り組んでいる彼自身、長年にわかって科学的根拠を基に危機を訴えているが、まともに耳を傾けてもらえないジレンマを抱えている。

今ここにある危機を彗星衝突になぞらえて、目を背けていたら取り返しがつかないことになると訴える本作。地球温暖化による環境変化が深刻化し、また、トランプの復活が噂される昨今、リベラルな姿勢を堅持するアカデミー賞で、本作が意外などんでん返しを巻き起こすかも……?

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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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