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凱旋門を包むーー壮大なアートはどのように完成した?

Christo and Jeanne-Claude L'Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961-2021 Paris, 2021   Photo: Benjamin Loyseau © 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation

今パリでは、あの凱旋門が壮大なアート作品と化し、大きな話題を集めている。亡き芸術家夫妻が1961年から構想していた計画が、60年を経て実現した。それにしても、あの大きな構造物をどう包んだのか。その様子をマリ・クレールの特派員がレポートする。

それは芸術家からの巨大な贈り物

芸術家の故クリスト(1935-2020)とジャンヌ=クロード(1935-2009)夫妻が構想していたパリの「凱旋門」を布で梱包するという作品。この壮大なプロジェクトの作業は、実際、かなり大規模なものだった。

まず、凱旋門を25,000平方メートルに及ぶリサイクル可能なシルバーブルーのポリプロピレン生地で覆い、同じくリサイクル可能なポリプロピレンの3000メートルの赤いロープで縛った。そして凱旋門の彫刻を布の圧力から保護するためのスチール柵が組み立てられ、布をクレーンで屋上に持ち上げる大掛かりな作業が数ヶ月間続いていた。

21年7月、凱旋門に施されている4つの彫刻を保護するために、スチール製のケージを設置する(Photo: Wolfgang Volz © 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation)

その後、訓練された高所作業員たちが布を降ろしドレープを作り、ロープを縛っていく。作品が完成するまでの数日間は、作る工程も見て楽しむことができるインスタレーションのアートと化していた。

21年9月、ファブリックパネルを設置、凱旋門の屋根の上に固定する作業員たち(Photo: Wolfgang Volz © 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation)
21年9月、布で覆っていく作業を多くの人が見守る(Photo: Benjamin Loyseau © 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundation)

クリストは生前、「それは風に吹かれて動き、光を反射する生きたオブジェと化すだろう。布のドレープが動くことで、このモニュメントの表面はより官能的になり、人々は皆、凱旋門に触れてみたくなるだろう」と語っていた。日常を非日常に変え、私たちに忘れられない記憶を与えてくれるこの巨大なアート作品は、天候や光の移り変わりで様々な表情を見せ、一瞬一瞬の美しさを皆で体験し共有できるという楽しさがある。

誰もが近寄って触れることができる(Christo and Jeanne-Claude L’Arc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961-2021 Paris, 2021 Photo: Lubri© 2021 Christo and Jeanne-Claude Foundatio)


準備から撤収までの3週間、週末は歩行者天国となり、誰でも自由に凱旋門の間近に行き見て触れることができる。クリストとジャンヌ=クロードからの巨大な贈り物を目の当たりにして、改めてアートに対するこの街の懐の広さを感じる。

取材・文 須山佳子

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Profile

須山佳子

すやま けいこ marie claireパリ特派員。東京生まれ、パリ在住20年。大学を卒業後パリに渡り、INSTITUT FRANCAIS DE LA MODEでファッション経営のMBAを取得。ファッション界で働いた後、日本の美容とライフスタイルブランドを欧州市場へ紹介するコンサルティング会社と、ECサイトhttp://www.bijo.parisを立ち上げる。高級デパート「 ル・ボンマルシェ」に定期的に招待され、年に数回ポップアップを開催している。公式Instagram:http://@keikosuyama_paris

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