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今、知っておきたい更年期最前線。頼れる対処法や“男性更年期”について聞く

2021年の「新語・流行語大賞」にノミネートされ、注目を集めた「フェムテック」。元々は女性の健康課題をテクノロジーを使って解決していくことを指していたが、日本では女性の健康課題に対する様々なアプローチのことを示すようになった。 初期は生理や妊活などが注目された中、最近では「更年期」というキーワードが注目を集めている。公益社団法人「女性の健康とメノポーズ協会」の理事長である三羽良枝さんに、更年期の基本的な知識や、まだまだ知られていない男性更年期について話を伺った。

女性ホルモンの減少が引き起こす「更年期障害」

更年期とは閉経前後の5年間を指す言葉。個人差はあるものの、一般的に閉経は50歳前後で、更年期は45歳~55歳ごろに訪れると言われている。この時期には更年期症状と言われるホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗など)、頭痛、めまい、うつ症状など、心身に様々な異変が生じる場合がある。

その原因は、卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の量が、加齢によって低下するから。エストロゲンはもう一つの女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)とともに、そのバランスが変化することで生理を引き起こしていた。更年期を迎え、女性の全身を守り・作用をしていたエストロゲンが急激に減っていき、閉経でエストロゲン分泌はほぼ0になることで、更年期症状として様々な不調が表れる。

編集者として活躍していた三羽さんは、40代の頃に体調の変化を感じ始めたという。

「ちょうど40代の初め頃に『なんだかこれまでとは違うな』と感じ始めました。他にも色々と病気の手術経験していたこともあり、その時に『女性特有の健康に関する勉強会やネットワークがあれば』と感じました。1980年代はまだまだ更年期症状について、医者であっても誤解をしているような状況でした。更年期のコの字も言えないといった声も女性たちから届いていた時代でした。」

自身の経験からも女性のための情報を発信したいと思い、1996年に公益社団法人「女性の健康とメノポーズ協会」の前身となる「メノポーズを考える会」を立ち上げた。

十人十色の更年期障害の症状

更年期症状は人によって異なる。それゆえになかなか情報を共有しづらく、かつ「メンタルの不調」などと片付けられてしまうため、長年ないがしろにされてきた分野だ。「更年期の女性はイライラしているから嫌だ」などの心ない言葉をこの年代の女性たちは耳にすることも多かったという。

更年期障害の症状として代表的なのは、過度な発汗やほてりを繰り返す「ホットフラッシュ」。顔から汗が噴き出て止まらなくなったり、急に体が熱くなったりする現象で、更年期の多くの人が経験する。

頭痛やめまいといった、風邪か疲れだと片付けてしまいそうな症状も。これらは仕事や日常生活に支障が出ることも多い。うつ気分や不眠、イライラなど、薬ではなかなか対処できない。特にイライラは「更年期の女性」の代名詞のように揶揄(やゆ)されてきた。

その他にも、のどの渇きやドライアイといった乾燥による悩みや、肩こりや関節痛といった加齢に伴う症状と誤解してしまいそうな症状、生理不順や尿失禁などの泌尿器・生殖器系の症状などがあり、「更年期症状は一口では言えないほど多様です」と三羽さんは言う。

「女性の健康とメノポーズ協会」では1998年から「女性の健康電話相談」を開催しており、全国の更年期世代の女性から相談が寄せられている。「イライラすることが多くなり夫婦喧嘩(けんか)が絶えなくなった」「重要な仕事を任されているのにうつ気分で身が入らず、自分を情けなく思って責めてしまう」。家庭内のトラブルや仕事の滞りなど様々あるが、どの事例にも言えるのは「更年期の不調は、その人の気の持ちようや考え方が悪いのではなく、女性ホルモンのエストロゲンが急減するメカニズムが要因なので、自分を責めないでほしい」と三羽さん。現代では更年期症状・障害に対して治療法が確立されているので、婦人科(更年期外来)のかかりつけ医を見つけて適切な対処法をとってほしいという。

更年期の後半に訪れる「骨粗しょう症」

さらに、更年期の半ばに差し掛かってくると新たな症状も出てくるという。それが骨粗しょう症だ。原因はエストロゲンの減少。エストロゲンは生殖に欠かせないだけでなく古い骨を溶かす細胞の働きを抑える性質があり、エストロゲンが減少することで骨密度の低下につながってしまう。

「骨粗しょう症も更年期症状の一つですが、気づかないまま骨折して初めて自身が骨密度の低下と骨粗しょう症であると知るケースが多いのです。年齢を重ねてから骨折をしてそこから寝たきりに、さらに認知症につながってしまうこともあるのです。いま、日本の要支援・要介護率が高いのは、男性より女性であるこの現状からも推測されます。そしてこの骨粗しょう症は更年期の時だけ気をつければいいものではなく、若い時から意識をしていただきたいのです。骨密度の最高値は20歳ごろまでに確保されるのですが、この時期に過剰なダイエットでエストロゲンの分泌が落ち生理が止まりいわば閉経状態になり、若くても隠れ『骨粗しょう症』になる女性も少なくないのです」

骨粗しょう症を防ぐためには、エストロゲンの状態と併せて、カルシウムとビタミンD、そしてコラーゲンなどの栄養素の摂取と併せて適度な運動も上手に取り入れていくことが大事だという。

更年期、どう対処する?

約10年間に及ぶ更年期。人それぞれの困難が待ち受けていると言われると身構えてしまうが、どういった対処法があるのだろうか?

「まず、治療法があるということを知ってほしいです。更年期症状・障害は我慢するものではなく、例えば『ホルモン補充療法(HRT)』は、更年期症状に有効な治療法として世界的に使われています。婦人科の更年期外来で受けられますから、まずは近くの婦人科に相談してみましょう。当電話相談では、希望される方に最寄り医療機関をご案内しています」

更年期障害の対処法として用いられる「ホルモン補充療法」とは、その名の通り、減少してしまったエストロゲンを微量補うことでホルモンバランスを整える治療法を指す。

日本で主に用いられているのは飲み薬や貼り薬、塗り薬だ。子宮のある人、病気など手術で子宮を摘出した人で、それぞれ投与方法が異なる。子宮のある人は子宮体がんを予防するために、エストロゲンに加え、プロゲステロンを併用する。飲み薬は定期的に服用することでホルモンバランスを整える。貼り薬や塗り薬は下腹部などに使用することで、胃や肝臓を通らないメリットがある。ただ、HRTには血栓のリスクも多少あるため、自身の身体の状況にあった受け方を医師と十分にに相談するのが大切です。HRTを受けることで更年期の女性のQOL(生活の質)向上につながることなど、公式のHRTガイドラインもあり、安心して受けられる治療法となっています」

「薬の他にも、症状の抑制が期待できるサプリメントも。女性ホルモンのサポートと言えば大豆イソフラボンですが、近年、その大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されて生成されるエクオールという成分に注目が集まっています。しかし日本人女性の半数はその変換機能を持った腸内細菌を持っていないと言われています。そこで、エクオールの研究が進み、サプリメントの形で補充することができるようになりました」

男性の更年期を知っていますか?

女性の更年期症状への理解は進んできたが、男性にも女性の更年期の時期と同じ年代に心身に何らかの不調が出るのを知っているだろうか?

男性は女性のようにホルモンバランスの急変はなく、また男性ホルモン分泌の減少は半減で留まることから、症状が出ない人も多いが、その分世間的に認知されておらず、女性と同じく口に出せず悩んでいる人もいる。

近年、男性更年期とも称されるが、女性のように閉経は存在しないため「閉経前後の5年」と期間が定められない。多くは40代以降に症状が出始めるが、症状が長引くケースも見受けられる。

「男性の更年期の症状としては、疲労感や不眠、うつなどの精神的な症状の他、女性と同じく発汗やほてりを感じることや、EDの悩みなどの身体的症状もあります。男性の場合はストレスや加齢が要因となり不調を感じ出す傾向がありますね。」

40、50代はまだまだ働き盛り。そんな時に徐々に心が重くなってしまうことで、さらに思い詰めてしまう人が多いのだとか。男性更年期という言葉自体あまり広まっていないため、自分自身で更年期だと気がつく男性は多くない。

まずは女性の更年期が社会問題としてスポットライトを浴びたように、男性の更年期も存在するということを伝えていくことが必要だという。

更年期と向き合っていくために

人生100年時代と呼ばれる今、更年期はいずれは訪れるもの。今は当事者でなくとも、家族や職場などに更年期症状や障害で悩んでいる人がいるかもしれない。「症状は人それぞれ。だからこそ更年期前の年代であっても、今後に備えるという意味でも更年期について知っておくことが大切」と三羽さん。

その一つの手段として「女性の健康とメノポーズ協会」では2021年に、女性のライフステージにおけるエビデンスに基づいた知識を学ぶ検定を開設。北九州市では市長他、市の執行部全員が同検定を受検、また旧YahooJapanでも全執行役員全員が同検定を受検するなど、現在では多くの企業や自治体の研修などに導入され、男性にも女性にとっても、更年期だけにとどまらない健康や女性活躍の知識を深めるきっかけになっているようだ。


一方で気をつけなければならないのは、近年では更年期症状・障害という言葉が知れ渡った反面、不調を更年期症状と思い込み、別の隠れた病気を見逃してしまわないよう、不調を感じたら先ずは婦人科を受診して診断を受けることも大切だ。最後に三羽さんに今の時代にあった、更年期との向き合い方について心得を伺った。

「更年期について知識を深めるのに、20、30代では早すぎるということはありません。女性は世代毎で生じやすい不調や疾患が異なります。女性特有の健康課題を知ることで、自分の今の時期にはどのような女性ホルモンの作用や影響があるのかを推測でき、不調に対しても賢く対応ができるようになります。例えば40歳前後の心身の変わり目の時期に婦人科での女性健診などの受診行動で病気の予防につながり、またエストロゲン値の変化を把握することもでき更年期への準備やその後の人生の健康づくりにも役立ちます。女性特有の疾患には治療法など対処方が確立していますから、自分のライフスタイルにあったものを選ぶことができます。大事なことは、婦人科のかかりつけ医を見つけておくこと。丁寧に自分の心身の状態と向き合っていきましょう」

text: Azu Sato, intervew: Mio Koumura

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Profile

三羽良枝


編集者としてのキャリアを経て、1996年にメノポーズを考える会を設立。更年期を柱に女性の生涯を通した健康づくりの活動を開始。2008年には厚生労働省女性の健康づくり推進懇談会委員就任。「女性の健康週間」の創設・「女性の健康宣言」作成に参画し、翌年には団体名をNPO法人女性の健康とメノポーズどへと改名。2021年には同協会を一般社団法人格とし、2023年に公益社団法人に認定される。経済産業省経済「令和5年度フェムテック等サポートサービス実証事業」審査委員のほか、2023年日本医療研究開発機構(AMED)公募に採択され共同研究者を務める。本女性医学学会会員、日本女性心身医学学会会員、日本骨粗鬆症学会会員、日本更年期とヘルスケア学会会員、メディカル・プラットフォーム・エイジア理事他。また編著出版には、「ホルモン補充療法(HRT)がよくわかるQ&Aハンドブック」「更年期一人で悩まないで!」などがある。
https://www.meno-sg.net/

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