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Lifestyle

極上の貴腐ワイン「ソーテルヌ」で新年に彩りを…醸造家・三澤彩奈の見た世界

【三澤彩奈のワインのある暮らし】「甲州」の名を世界に広めた醸造家の三澤彩奈さんがワインとつむぐ景色をつづります。

ブドウ畑にも山からの北風が吹き付ける季節となりました。

地元、山梨の勝沼ではブドウの収穫が終わる頃になると、民家の軒先を干し柿のカーテンが鮮やかに彩る光景が見られます。私の実家でも、百目柿という渋柿を吊るして天日干しを行い、自家製の干し柿を作っているのですが、山々からの「おろし」によって干し柿はぎゅっと甘味が凝縮します。ブドウと同じように、自然が産み出す農産物には毎年異なる滋味があることを実感します。

北風が吹きつける冬、民家の軒先を干し柿のカーテンが鮮やかに彩る

自然が産み出す唯一無二の甘口ワイン

今年も残すところあとわずかとなりました。読者の皆様はどんなワインで一年を締めくくるのでしょうか。

シャンパン、熟成した赤ワインなど、いつもより少しだけ特別なワインを家族や友人と分かち合いたくなる年末年始。年末年始の食卓に是非おすすめしたいワインの一つが貴腐ワインです。

貴腐ワインとは、ボトリティス・シネレアという菌がブドウの果皮に付着することで、結果的に水分が蒸発し、ブドウの糖や成分が凝縮され生み出される甘口ワインです。 通常、このボトリティス・シネレアは、花、果実、茎や葉に発生し、腐敗をもたらす病原菌として知られています。それが、ある特定の産地では“Noble Rot”(貴腐)と呼ばれ、極上の甘口ワインを生み出すのです。朝は霧で覆われるような湿度がありながら、日中はからっと晴れる気候に恵まれた、特殊な産地でなければ生産することができません。まさに自然が産み出す唯一無二の甘口ワインです。

ボトリティス・シネレアがブドウの果皮に付着することで極上の甘口ワインを生み出す                    

ブドウ畑の風景そのものがワインになる【三澤彩奈のワインのある暮らし】

一本の樹からつくる一杯のグラスワイン

一般的に、一本の樹からボトル一本のワインが生まれると言われる辛口ワインに対し、貴腐ワインは、一本の樹からグラス一杯のワインしか造ることができないと言われます。貴重であり高価です。貴腐菌に覆われた果粒のみを収穫するため、一列の樹を何日もかけて摘み取ります。 私が留学していたボルドーから生まれる貴腐ワイン「ソーテルヌ」は、世界三大貴腐ワインの一つに君臨し、素晴らしい酒質のワインが造られていました。

「シガラス・ラボ―」の収穫風景

1855年、パリ万国博覧会の開催に際し、ボルドーのメドック地区の赤ワインとともに格付けの対象となったソーテルヌ。その格付けにおいて、最上の特別第一級となった「シャトー・ディケム」の名は、普段ワインをお飲みにならない方でもお聞きになったことがあるかもしれませんが、今日、紹介させていただきたいのは、第一級に格付けされた中で最も小規模の「シャトー・シガラス・ラボー」のワインです。大企業の買収が進むボルドーのワイン産業においても、家族経営を守っているワイナリーです。フランス語では語末の子音は発音しないことも多いため、「シガラ・ラボー」と呼ばれることも多いのですが、ワイナリーの方にうかがうと正しくは「シガラス・ラボー」とおっしゃるそうです。

「シガラス・ラボー」を飲み、感嘆してしまうのは、甘口でもとてもフレッシュであることです。そのフレッシュさがワインに上品な印象を与え、驚くほど長い熟成に耐えることができます。以前、亡くなった祖父のワインコレクションを眺めていたら、1969年産の「シガラス・ラボー」が現れて驚いたのも束の間、父のコレクションにも1996年の「シガラス・ラボー」が。いつとはなしに、嗜好は代々に受け継がれていくのだなあと思った記憶があります。

「シガラス・ラボ―」のワイン

人生で最も忘れられないスパークリングワインの味【三澤彩奈のワインのある暮らし】

一滴で格別な余韻と歓び おせち料理にも

現在の「シガラス・ラボー」のオーナーであるロール・ド・ランベール・コンペイロ氏とは、ともにボルドー大学で学びましたが、この地区では珍しい、セミヨンという品種主体の辛口ワインにも挑戦しています。至極のソーテルヌを生み出す土壌から造られる辛口白ワインもまた特別な一本です。

デザートやブルーチーズと合わせられることの多いソーテルヌですが、フランスでは、フォアグラなどと合わせて食中で楽しまれることもありました。以前、ボルドー大学の故ドゥニ・デュブルデュー教授が来日した際、日本の肉厚な生ガキとご自身の手掛けられた貴腐ワイン「シャトー・ドワジー・デーヌ」を合わせていたことも印象的でした。

栗きんとんや錦玉子などのおせち料理と合わせるのも良く、また甘美な味わいを単体で楽しむのも良く、一口ならず一滴で、格別な余韻と歓びを与えてくれるワインがソーテルヌだと思います。

「シャトー・シガラス・ラボ―」にて(左は筆者)

【三澤彩奈のワインのある暮らし】女性醸造家が語る「夏に楽しむロゼ」

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Profile

中央葡萄酒株式会社 栽培醸造責任者 三澤彩奈

山梨県の中央葡萄酒4代目オーナーの長女として生まれる。ボルドー大学ワイン醸造学部を卒業し「フランス栽培醸造上級技術者」の資格を取得。2007年に中央葡萄酒の醸造責任者に就任。栽培と醸造に取り組む。 2014年に世界的ワインコンクール「デキャンター・ワールドワイン・アワード」の金賞を日本で初めて受賞。甲州ワインの名を世界に。「グレイスワイン」は海外で最も飲まれる日本ワインに成長。

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