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Lifestyle

ブドウ畑の風景そのものがワインになる【三澤彩奈のワインのある暮らし】

「甲州」の名を世界に広めた女性醸造家の三澤彩奈さん。2121年秋のブドウ畑の収穫の風景とともに、新たに甲州の魅力を引き出したワインへの思いをつづります。

秋晴れの中、2021年の収穫も無事に終えることが出来ました。

深夜の静まり返った醸造所では、発酵中の果汁の息づかいが聴こえてきます。そっとタンクに手を当てると、発酵熱の温もりが伝わります。幼い頃、ブドウが投入されたタンクから自然に炭酸ガスが出始め、いつの間にかワインとなる様子がまるで魔法のように感じられました。見慣れたはずの光景ですが、酵母の神秘的な働きは、作業で憔悴した身体に感動を与えてくれます。

土着酵母で発酵する甲州                                      

女性醸造家が語る「夏に楽しむロゼ」【三澤彩奈のワインのある暮らし】

「甲州」に新たな思いを乗せて

11月はボージョレヌーヴォーや国内外の新酒が解禁となり、山梨でもワインツーリズムなどのワインイベントが開催されます。12月にはフェスティブシーズンを迎え、ワインが最も皆様の身近に感じられる季節ではないでしょうか。

11月末、当ワイナリーより名前も装いも新たに再出発するワインがあります。銘柄は『三澤甲州』、白ワイン用品種「甲州」を醸したワインです。

南コーカサスに発祥した「甲州」は、約1300年前に日本に伝播し、日本固有の品種となったと言われています。ややグレーがかった美しいピンク色の果皮を持ち、日本に辿り着いた当初は、ブドウの甘味による滋養効果が期待され、法薬として栽培されていたようです。山梨県のワイン生産量の半分を占めることからも、今なお地元で愛され続けているブドウです。 甲州の特徴は、はつらつとした酸と繊細な味わいにあります。近年、食のヘルシー志向と相まって、低アルコールのワインが人気を博すようになり、一般的な白ワインよりも1%ほどアルコール度数の低い甲州も、世界から注目を集めるようになりました。当ワイナリーも生産量の3割近くを輸出していますが、最も海外で親しまれているワインが甲州です。

三澤農場の甲州

世界の「甲州」はブドウの持つ力を信じて生まれた

私は、祖父や父が甲州に人生を賭ける姿に憧れ、醸造家となりました。 日照時間日本一の町、山梨県明野町の自社農園から造り上げた甲州が、世界最大のワインコンクールでの日本ワイン初の金賞受賞に輝いたとき、「甲州はまだまだのびしろがある」と確信しました。醸造の技巧には頼らず、ブドウ畑において、太陽の受光率を向上させる栽培法を採用するなど試行錯誤を繰り返し、ブドウの持つ力を信じて生まれた一本でした。

垣根式栽培

人生で最も忘れられないスパークリングワインの味【三澤彩奈のワインのある暮らし】

「三澤甲州」 新たにブドウ畑の産地の味わいを表現

それから7年。このたび、リリースする『三澤甲州』は、甲州のポテンシャルを信じて誕生したワインから、ブドウ畑の産地の味わいを信じ、表現したワインへと変化を遂げることとなりました。 ブドウ畑の特性をワインに表現するべく、畑の土着酵母を使用し、明野町の甲州に含まれる特異的な有機酸の組成を生かし、乳酸菌によるマロラクティック発酵(乳酸菌がリンゴ酸を乳酸に分解する発酵)が行われています。

ブドウ畑の土着酵母

爽やかな白ワイン 熟成による変化も楽しむ 

甲州の情趣ある個性を秘めたまま、海外の銘醸ワインにあるような複雑さやダイナミックさを楽しむことのできるワインに仕上がりました。このワインが出来上がっていく過程には、まさに風景そのものがワインになっていく姿が写し出されていました。

今お飲みいただいても爽やかな白ワインとしてお楽しみいただけますが、5年ほど待っていただくと、飲み頃に入るのではないかと考えています。このワインが熟成をしていく中でどのような顔を見せてくれるのか、私自身も一緒に成長していきたいと思っています。

ラベルは、グラフィックデザイナーの原研哉氏のデザインです。表ラベルのワイン名は、書聖・王羲之の書がモデルとなっています。ワイン造りを通して、まっとうな美を追求していきたいと身の引き締まる思いです。

『三澤甲州 2020』

関連情報
  • 【展示のお知らせ】・「ワインとデザイン」 銀座蔦屋書店(GINZA SIX 6階:東京都中央区銀座6-10-1 EATALY銀座前)の一角にて、グレイスワインのラベルデザイナー、原研哉氏による展示が行われます。期間:11 月26 日( 金) ~ 12 月9 日( 木) ・「甲州と美」展 11月27日(土)~グレイスワインサロン(山梨県甲州市勝沼町等々力173 2階)にて、展示会「甲州と美」を開催。『キュヴェ三澤 明野甲州』から『三澤甲州』へ進化していく過程を原研哉氏のラベルデザインを通してご覧いただきます。古屋絵菜氏(山梨県甲州市出身、染色作家)による作品「甲州.」、大隅良典氏(東京工業大学栄誉教授)の寄稿「自然の酵母と葡萄がもたらすワインの魅力」も併せ展示されています。【映画上映のお知らせ】 山梨県立科学館のドームシアターにおいて、「ワイナリーには不思議がいっぱい! 世界に羽ばたけ 山梨ワイン」の上映が始まりました。お子様から大人のワインファンまで楽しめるようワイン造りが分かりやすく解説され、プラネタリウムで見るブドウ畑の耽美な風景も余韻に残り、見応えのある作品です。『三澤甲州 2020』がまさに畑で造られていく瞬間を映像に収めていただいています。世界に挑戦し続ける山梨ワインの奮闘を是非ご覧ください。2021年11月6日~2022年3月13日 土日祝11:30~ https://www.kagakukan.pref.yamanashi.jp/theater/info.php?no=52

Profile

中央葡萄酒株式会社 栽培醸造責任者 三澤彩奈

山梨県の中央葡萄酒4代目オーナーの長女として生まれる。ボルドー大学ワイン醸造学部を卒業し「フランス栽培醸造上級技術者」の資格を取得。2007年に中央葡萄酒の醸造責任者に就任。栽培と醸造に取り組む。 2014年に世界的ワインコンクール「デキャンター・ワールドワイン・アワード」の金賞を日本で初めて受賞。甲州ワインの名を世界に。「グレイスワイン」は海外で最も飲まれる日本ワインに成長。

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