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賀茂川のほとりで「BYOB 野点茶会」を開催!【町家宿おかみの、たびする京都くらす京都。】

賀茂川でお茶会を開いたkariganeの下岡夫妻

京都・洛北、紫野にある町家宿「karigane(かりがね)」。昭和初期に建てられた京町家をリノベーション、和の情緒を満喫できるとして人気の宿を夫とともに営む下岡莉香さんが、四季折々の京都の表情をスケッチします。今回は下岡夫妻が企画したアウトドアでお茶を楽しむ「野点」の模様をレポートします

秋にぴったり、野点のススメ

10月23日、本日は二十四節気の霜降(そうこう)です。シュウメイギクやホトトギスといった秋の野花が美しく、京都はすっかり秋真っ盛り。karigane 女将の下岡です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

秋は涼やかな風が心地よく、日の光も和らかで、野点(のだて)が楽しい季節です。

私たちはこれまで、五山の送り火が有名な大文字山や、日本仏教の母山とも呼ばれる比叡山など、様々な場所で野点をしてきました。

以前お茶会を行った大文字山での一コマ。夫婦でお茶を楽しんでいるとハイカーさんから「気持ちいいですね」と声がかかります。「そうですね、よければ一服ご一緒にいかがですか?」なんて返事をすれば、一期一会を楽しむお茶会の始まりです

今年は BYOB 野点茶会と称し、賀茂川の河川敷公園で、どなたでもご参加自由のお茶会を催しました。

BYOB とは、Bring Your Own Bowl、つまり「ご自身のお茶碗をお持ちください」の意味。もちろん感染症予防の意図もありますが、知らない者どうしが集まり、道具の力を借りて語りあう場をつくりたかった、というのがその趣旨です。

皆さんにお持ちいただいたお茶碗をいくつか紹介いたしますと…

こちらは現代作家さんによって製作された茶碗だそう。井戸形の茶碗ながら、黒い釉薬を全体にまとって、楽茶碗のような雰囲気もあります。お茶碗をきっかけとして会話が生まれ、初めてお会いする方ともお話がはずみました。

お抹茶用ではない、うるし塗りの木椀をお持ちいただきました。木のお椀ですと軽くて割れにくく持ち運びに便利ですし、案外お抹茶を点てやすいという新たな発見もありました。

平らで取っ手付きという独創的なカップ。こちらはなんと、ご自身で作った器だそう。個性的な器で点てたお抹茶は、服し方もユニークです。

「小指をたてて飲もうかな」との声に、一同笑みがこぼれます

ハイライトはこちら。なんと初めて出会った二人が、まるで示し合わせたかのように、同じ作家さんがつくったお茶碗をお持ちくださいました。楽しい偶然が、一期一会をより思い出深いものにしてくれます。

私たちが世界一周の旅をしているとき、各地で現地の方々が言葉も通じない私たちを受け入れ、美味しいお茶をふるまってくださいました。トルコやウズベキスタンといったシルクロードの国々では、くびれの付いたガラスコップに甘いチャイを注いでいただき、身振り手振りで会話を楽しんだことを思い出します。あの時に感じた、言葉にしがたい旅の面白みが、私たちが宿泊業を始めたことや、こうしてお抹茶を振るまう原点となっているように思います。

京都は茶の湯が楽しい街です。「在釜(ざいふ)」の文字を見かけたら、「ここではお茶を出していますよ」という意味です。次の京都旅行ではぜひお茶を一服お楽しみください。

撮影・構成:下岡広志郎

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Profile

下岡莉香

しもおかりか 大阪府出身。奈良女子大学卒業後、繊維商社で生地輸出を担当。より活躍できる場を求めて退社後、夫婦で1年5ヵ月44ヵ国世界一周の旅へ。日本文化の奥深さに目覚め、町家一棟貸しの宿kariganeを開業。一児の母。 karigane公式HP:https://rokushou.net/karigane/  Instagram:https://www.instagram.com/karigane.kyoto/?hl=ja

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