安藤桃子が移住先の高知を案内【ASICS WALKING JOURNAL SPECIAL TALK/MOMOKO ANDO】
2024.10.18
2024.10.18
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仁淀川に沿って進んで行くと、川幅はどんどんと広くなり、街と海が少しずつ近くなってきたのを感じられる。川から離れ、海のそばの山を登って行くとこんもりと緑が茂るなか近代的な建物が見えてきた。「日本の植物分類学の父」といわれる牧野富太郎博士の業績をたたえて開園した〈高知県立牧野植物園〉だ。
「牧野富太郎さんは、生涯をかけて日本中を歩いて雑草といわれるような植物にも名前を付けていかれました。 “名付ける”という行為は、存在を認めて愛のまなざしを向けているように感じられます」



石垣沿いのむせかえるような緑の小道に入ると、安藤さんがスマートフォンでシャッターを切っている。
「この道はお遍路さんが歩く遍路道ですね。四国では遍路道がいたるところにあって、この植物園にも残されています。こういう道が残されているのも素晴らしいですよね。植物園を建てた建築家の方が『建てた時点ではまだ未完成。植えられた植物が成長して、建物と一体化することで建築も完成する』とおっしゃっていたのを聞いたことがあります。だから山とのボーダーがなく、歩いているとキツネやサルに会えたり、ネコがのんびり歩いていたりする。その環境がとっても平和で、ここに身を置くだけで心地よくなります」



植物園を出ると「仁淀川もそうですが、もう一つ、あの『竜とそばかすの姫』の舞台になった場所があるからちょっと行ってみましょうか」と安藤さんが誘ってくれた。鏡川にかかる〈天神大橋〉は、朱色の欄干が風情ある趣で、その下をまたゆったりと川が流れている。
「今日、このルートを選んだのは山と川、海、街や人が全部つながっているのを感じてほしかったからなんです。自然とつながり自然のままにあることは、生きやすさにも通じると感じています。社会で生きて仕事をしていたら、どうしても“いい”“悪い”で判断しがちですが、そうしていると苦しくて生きにくくなる。だから自分にとって自然か、不自然かという判断基準を持っていて、自然と不自然の間がグラデーションになっている感覚があるといいなと思って。そういうイメージでこのロケーション、道のりを選びました」


映画監督 安藤 桃子/Momoko Ando
1982 年、東京都生まれ。高校時代よりイギリスに留学し、ロンドン大学芸術学部を卒業。その後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て 2010 年「カケラ」で監督・脚本デビュー。14 年に、自ら書き下ろした長編小説「0.5 ミリ」を映画化。同作で報知映画賞作品賞、毎日映画コンクール脚本賞、上海国際映画祭最優秀監督賞などを受賞し、国内外で高い評価を得る。
「0.5 ミリ」の撮影を機に高知県に移住。ミニシアター「キネマ M」の代表や、子どもたちの未来を考える異業種チーム「わっしょい!」を立ち上げる。現在、NPO 地球のこどものメンバーとして、全てのイノチに優しいをモットーに、子ども達との映画作りやアートなど、食育、自然、農を通じ、優しい地域の地場づくりを行なっている。21 年には、初のエッセイ集 「ぜんぶ愛。」を上梓。23 年 11 月、映画を通じて心と文化を伝える「キネマ ミュージアム」が高知市中心市街地にオープンするなど、多岐にわたり活動中。
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