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ラグジュアリーブランドのイベントが数多く開催

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。2023年は東京にいながらにして、世界を代表するブランドの真髄がわかる展覧会を観ることができた。

印象的な展覧会が目白押し

今年5月8日、新型コロナウィルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に移行し、アフターコロナの時代に入りました。

この発表をうけ、海外から日本への訪問客も大幅に増えています。円安もその動きを加速させているのは間違いないでしょう。

ファッション業界も例外ではありません。このところ、海外からのVIPの来日が多く、それに合わせて5月から11月にかけて、大きな展覧会・イベントも日本で次々に開催されました。そんな中印象に残ったイベントがいくつかあります。

展覧会では、大阪中之島美術館で開催された「エルメスのpetit h-プティ アッシュ」展、東京都現代美術館で開催された「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展、新宿住友ビル三角広場でのスイスの時計ブランド「パテック フィリップ・ウォッチアート・グランド・エキシビション(東京2023)」、六本木の国立新美術館での「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」、そして原宿で開催された「ブルガリ セルペンティ 75周年 時を超えて紡がれる 無限のストーリー展」です。

「エルメスのpetit h-プティ アッシュ」展では、余った材料や使用されなかった素材を使ってアート作品のようなアイテムを作り上げ、「エルメス」の誇る職人技を見せました。「パテック フィリップ」は過去最大規模の展覧会で、今までの創作の全てを壮大に展示。「クリスチャン・ディオール」はメゾンができてから現在に至るまでの歴代デザイナーの代表作品や日本との関係を、斬新な展示方法で見せてくれました。「イヴ・サンローラン」は幼少時代からの写真やスケッチ、そしてファッション界と舞台や映画とのつながりも含めた数多くの作品を展示していました。「ブルガリ」は代表的なモチーフである「セルペンティ」と現代アートとのドラマティックなコラボレーションで、新たな魅力を見せてくれました。

どの展覧会もブランドの歴史を誇りを持って語り、またその裏付けとなる数多くの資料や製作物を展示し、それらをじっくり見ればそれぞれのブランドの成り立ちや考え方がよく理解できる、まさに「百聞は一見に如かず」の展示ばかりでした。

こうした華やかで中身の濃い展示が多くあったということだけでなく、コロナ以降、ファッション界の大きな潮流として特筆しておきたいのは、ハイジュエリーブランドの日本への姿勢が大きく変化してきたということです。

本国のCEOがわざわざ各ブランドの諸所のイベントのために来日したこともその表れの一端です。幸いにも「ブシュロン」のエレーヌ・プリ=デュケンCEO、「ショーメ」のジャン=マルク・マンスヴェルトCEO、「ティファニー」のアレクサンドル・アルノー・プロダクト&コミュニケーション部門エグゼクティブ ヴァイス プレジデントらと、いろいろ話をする機会がありました。彼らが異口同音に語っていたことは「いままで日本ではブライダルマーケットでのビジネスを確立してきた。これからはブライダル商品以上に、本当の意味でのハイジュエリーに重点を置いていこうとしている」ということでした。

ショーメ 銀座
銀座中央通りで存在感を放つ「ショーメ」

ハイジュエリーの進出も本格化か

東京にだけブライダルの専門店まで設けているハイジュエラーもあるほどですが、これからはターゲットが本当の富裕層になってきたということです。そのためそうした人々がハイジュエラーの世界観を体験できる場とし、銀座に店を構え、その店構えや内装から、物語を通してブランドの真髄を感じてもらい、認知度を高めたいとしています。

「ティファニー」はニューヨーク本店のリニューアルに続いて、銀座本店のリニューアルを実施、デザインはニューヨーク本店も手掛けたピーター・マリノが監修しています。またパリの老舗ジュエラー「ブシュロン」は銀座本店を中央通り沿いに移転しリニューアル・オープンさせました。パリのヴァンドーム広場の本店に次ぐ世界最大規模の売り場面積を誇る、自然をテーマにした興味深い空間といった具合です。「ショーメ」は日本の伝統工芸家やアーティストと積極的にコラボレーションをしています。

ブシュロン 銀座
銀座中央通りに移転し、リニューアルオープンした「ブシュロン」

ハイジュエリーは貴重なもので高額です。もちろん身に着けるために買う場合もありますが、ヨーロッパでは代々相続されていくものとしての位置づけもあります。またアート作品のように貴重なものとして、投資としての側面も重要だ、とあるCEOは語ってくれました。

ティファニー銀座本店
今年7月、リニューアルオープン時のティファニー銀座本店
©TIFFANY & CO.

そこまで日本のジュエリーマーケットは成熟してきているとの見方を各ブランドが持っているのは驚きでした。確かに高額商品や限定商品から売れていくという現在の状況を考えると、この潮流に納得せざるをえません。

円安で不安定な社会を感じさせるこの日本ですが、そういう時代だからこそ、どんなときでもその価値が揺るがないハイジュエリーに人々の関心が向くということなのでしょうか。

2023年12月7日

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