×

2023エウロルーチェから話題の照明をピックアップ ミラノサローネ【後編】

日本人デザイナー、日本ブランドの新作は、次代の名作照明の予感

エウロルーチェで存在感を示した日本人デザイナー、日本ブランドについても紹介しよう。プロダクトデザイナー、深澤直人がスペインのLLADRO(リヤドロ)のためにデザインし、スペイン・バレンシアのリヤドロの工房とのコラボレーションにより発表したシャンデリア「MOKUREN(モクレン)」の静謐(せいひつ)な佇(たたず)まいは、光り瞬くエウロルーチェの会場の中にあって独自の存在感を持って来場者を魅了した。2021年のミラノサローネ特別展「supersalone(スーパーサローネ)」に出展したAmbientec(アンビエンテック)も、エウロルーチェ初出展を果たした。水中撮影機材の開発製造というバックグラウンドを持ち、実力派デザイナーのデザインによるポータブル照明で注目される同社は、ロングセラーとなっている既存製品とともに、ミラノ在住のデザイナー、大城健作とエリーザ・オッシノの新作を発表。大城が会場構成を手がけた同社のブースには、アンビエンテックのライティングを手がけたデザイナー陣が揃った。

ミラノサローネ
LLADRO(リヤドロ)のブースより。スペインの伝統工芸とモダンデザインの融合により生まれた「モクレン(MOKUREN)」は早春に高貴な花を咲かせる白木蓮(はくもくれん)のイメージそのもの
ミラノサローネ
2021年にインテリアデザイナーの袴⽥広基が立ち上げたSTUDIO ROW(スタジオ・ロー)は、「灯さなくても美しい、灯してなお美しい」とのブランド・フィロソフィーを掲げ、真鍮(しんちゅう)をベースに、高品質な素材を組み合わせた新作を発表。
Courtesy of STUDIO ROW
ミラノサローネ
ミラノ在住のデザイナー、エリーザ・オッシノによるアンビエンテック(Ambientec)の新作は、月の満ち欠けを表現したポータブル照明「マドコ(madco)」。
Courtesy of Salone del Mobile,Milano,Photo: Diego Ravier

心が揺さぶられるような灯り、ただじっと見つめていたくなる灯り、思わず吸い込まれてしまう圧倒的な灯り、懐かしさと郷愁の念に駆られるような灯り──仄暗いエウロルーチェの会場に浮かび上がった「光」と「輝き」は、「ライティング」の世界にまつわる対話や学び、最新デザインやテクノロジーに出合い、ブランド各社のフィロソフィーやデザイナーの新たなクリエイションからインスピレーションと気づきを得るものだった。

今に始まったことではないが、ミラノで出合うライティングの多様性には目を見張るものがある。エウロルーチェだけではない。ミラノサローネの各展示会場や、ミラノ市街のインテリアブランド、ブティック、レストラン、ホテル、そして全ての基本である住宅も、実に多彩で美意識を感じるライティングに彩られている。日本の照明を省みると、天井からの白い蛍光灯一辺倒の時代は確かに過ぎ去ったものの、尚も画一的であると感じるのは私だけではないだろう。今こそ改めて、「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」の国にふさわしいライティングについて再考したい。(敬称略)

text: Toshie Fujino

サンローランと国立新美術館が共催 蔡國強の大規模個展「宇宙遊 ─〈原初火球〉から始まる」

リンクを
コピーしました