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村田晴信が語る「ミラノと東京で模索した、日本人が作る素敵なドレスとは」

東京コレクションで、本場ミラノの風を吹かせているブランドがある。村田晴信が手掛ける「HARUNOBUMURATA」は、シーズンを重ねるごとに周囲の期待以上のコレクションを更新してきた。そんな若きデザイナーに、ブランドを立ち上げるまでの経緯を聞いた前編に続き、後編では東京を拠点にしながら市場に忖度せずミラノで培った手法で服作りを続けている理由、ドレスを通して表現したいことを聞く。

HARUNOBUMURATAらしさとは?

——HARUNOBUMURATAを言葉で表すと?

日本人デザイナーのブランドで、女性の振る舞いを美しくする服。背筋が伸びる、気持ちが高まるなど、着る人の気持ちさえ左右させる存在でありたいですね。身体の姿勢によって人の心持ちは変わります。実際に、人が一番美しくいられる体勢を考えたときに、どんなディテールが必要かを考えて服作りをしています。さらに、日本人の文化的な背景としての奥ゆかしさ、そこから香りだってくる色気みたいなものもあるかもしれません。

——ファーストコレクションを発表してから、6年目。どのようなことを重視して服作りをしているか教えてください。

まず、服を人の手に届けるまでがデザイナーの仕事だと捉えています。その届け方によって、ものの価値が大きく変わってくる。私たちなりのラグジュアリーと捉えています。これまでは、洋服も世界観も作家的に築いてきましたが、改めてクリエーションに集中する必要を感じて、チームの編成をしています。ブランディングや経営企画のパートナーと協力し、自分はディレクションの立場に立ちながらスタッフと作り上げたものをブラッシュアップしていく。そんな方法をトライしています。

——ランウェイでのモデル着用分のサンプルは、かなり大きなサイズに見えました。商品のサイズ展開について教えて下さい。

商品のサイズは3展開、34、36、38です。一番小さいサイズは150cm代の人も着られます。一方、ランウェイでは、モデルのサイズに合わせたサンプルを着せています。ショーで世界観や空気感のようなものを伝えるためには必要不可欠なプロセスだと考えています。実際に、ショーを見て興味を持ってくださる方の熱量がすごいので、うまくアプローチできているという実感はあります。

——ショーでブランドの世界観を伝えるための審美眼は、どのように培われたのでしょう。

ランウェイ形式でプレゼンテーションをするブランドでは、製作過程で何度もモデルに着せて、美しさを検証する場があります。そこで磨かれた勘ですね、肌感覚でつかんだというか。海外のコレクションで発表されるようなブランドのサンプルは、想像以上にサイズが大きいんです。でないと、トップモデル達の表現力も活かせないというという経験に基づく感覚値はありました。ランウェイというプラットフォームでムードを伝えるためにはこれぐらいのボリュームが必要なんだと。1着の服を作りこむというのも大事なんですが、それよりも目指しているのは、着た人の人物像を表現できるか。人物の立ち姿を美しくするならば、この生地の張り感だよね、というように逆算しながら一つ一つ選択していくんです。ただ良い素材を選んで良い服を作る、で終始しないことが大事。

——素材選びについて教えてください。

イタリアで仕事をしていた時から取引があった国内外のメーカーとお取り組みをしています。イタリアにいたときは、車を借りてコモやビエラなどの産地に行って、生地屋さんのアーカイブを見せてもらい、その中からいくつか選んで現代風に作り直したことも。やり取りを続けてつながりが生まれました。ショーの後現地のスタッフの方もですが、そういう方々からメッセージをもらうこともあり、とても嬉しく思っています。

自立した女性たちに支持される理由

——とても順風満帆にブランドが成長しているように見受けられるのですが、うまくいかなかったことはあったんでしょうか。

一番最初にお取り組みしていた卸の会社がパンデミックで民事再生になってしまい。卸し先が徐々に増えていたところでしたが、納品後だったので、1シーズン分の売り上げを失ったんです。今と比べれば品数こそ多くはないのですが、つらかったですね。それを機に、片足突っ込んでビジネスをすることにリスクを感じて。自分たちで展示会を開いてお客さんやファンを獲得しようと思い、サロン形式でコミュニケーションを取ることにしたんです。振り返ると、その方向転換はすごく良かったですね。今は代理店としてセールスとPRはザ・ウォールに入っていただき、徐々にブランドがいい方向に拡大。サロンもやってみたらとても楽しくて。作って満足するのではなく、人に着てもらい、その反応までを見届ける。人を喜ばすまでが仕事だと思っています。

——顧客やファンはどうやって広まっていきましたか。

まずは友達から始まって、それから友達が友達を連れて来ての繰り返しだったと思います。展示会では、一日中試着を楽しんでもらい、気に入って買ってくれる人もいました。顧客の方とお会いできる機会も多いのですが、色々な解釈、様々な方が着てくださって嬉しいですね。以前友人に“こういう女性になりたいと思わせてくれる服”と言語化していただいたことがあったのですが、逆に、自分の役割はそのように感じているすべての人に、クリエーションを通じて美とエレガンスを提供することだと感じています。

原点に戻ってみえてきたこと

——2024年秋冬コレクションは、写真家アウグスト・ザンダーのポートレート「Young Farmers」が着想源。2024年春夏シーズンの軽やかさから一転した重厚な世界観でした。何か心境の変化があったのでしょうか。

2024年春夏コレクションはエレガントな世界観をヒントに、美しいものを作ったシーズンでした。明確なゴールに向かって作っていきましたが、ある意味エレガントなものをヒントにエレガントを表現することでアウトプットは想像できる範疇だったのかもしれません。とても信頼している、ブランドをよく見てくれているアシュリーのvogue runwayのレビューでは、表現に物足りなさがあると指摘があったんです。既定路線の想像できる範疇のレベルのクリエイションでは、世界で戦っていくには不十分だとハッとさせられました。

次の季節は、挑戦して真逆な世界観からエレガントなものを作ろうと決めたんです。世界観を深く解釈して、自分のフィルターを通して表現する。ここ数シーズンは分かりやすいテーマで作っていたので、今回はショー直前までどうなるかをつかめず、不安に感じていました。難しいテーマに取り組むことでクリエイターとしてひとつステップを登ることができたと感じています。

——次のシーズンについては、どういった構想を持っていますか。

先日ブランクーシの展示を見に行ったのですが、本質を究極的に削ぎ落とした彫刻のアプローチに改めて感銘を受けて。エッセンシャルな美しさにどこまで近づくことができるか。ということに挑戦してみたいと考えています。

———イタリアと日本を活動拠点にしてきましたが、どういったデザイナーを目指していこうとお考えですか。

日本人の自分が作った服が海外でどう見られるのかを考えたときに、“すっと切れていく感じ”が期待されているのではないかと思っています。日本人デザイナーとしての強みはそこなのかなと。常に、その文脈の中でいかに新しい視点を与えるかが、世界に出ていく上で重要になってくる。常に模索しています。憧れていた世界だからこそ、正面から勝負したいと考えています。

——今後、やってみたいことを教えてください。

アトリエ兼ショップのような、サロン的なスペースを元麻布に作っています。これまでもショップと手を組んで、ドレスのオーダー会やイベントを開催してきました。お客さまと交流する機会を強化していきたい。クリエイションの背景もご覧いただけるような、体験を持ってブランドの世界観に触れてもらえたら。背景のある服は、同じドレスでも着用した時の高揚感がきっと高いと思うんです。



【前編】「ハルノブムラタ」デザイナーの足跡。ジル・サンダーで学んだブランドづくり


text: Aika Kawada

東コレ2024年秋冬コレクションをプレイバック。注目したい6ブランド
【メットガラ2024】ベストルックを一挙公開! ゼンデイヤは豪華2パターンを披露

Profile

村田 晴信 / HARUNOBUMURATAデザイナー

1988年、東京生まれ。エスモード ジャポン東京校出身。在学中より数々のコンテストで入賞を果たし、卒業後はPRエージェント、ステディスタディでアシスタントを務める。在学中に神戸ファッションコンテストで特選を受賞し イタリア留学資格を獲て、2010年に伊・マランゴーニ学院に入学。12AWミラノコレクションにてデビュー後、ジョンリッチモンドでデザイナーの経験を積み、ジル サンダーではウィメンズデザインチームに所属。2018年に帰国し、「HARUNOBUMURATA」を始動。

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