© Van Cleef & Arpels SA Photographe Marc de Groot ArtDirector Gaspard Yurkievich and Guido Voss
7月上旬のパリ・ヴァンドーム広場を舞台に、多くのジュエラーがハイジュエリーの新作コレクションを発表した。ハイジュエリーはファッションにおけるオートクチュールにあたる存在。希少性の高い宝石を惜しみなく使い、熟練の職人が長い期間をかけて手作業で制作を行う。一点ものの作品も多く、発表時には既に買い手が決まっていることも珍しくないため、実物を見られる機会はそう多くないかもしれない。それでもこの時期の発表に力を入れるのは、ハイジュエリーが各メゾンの独創性や大切にする価値観を体現するものだからだ。今年も、個性的なコレクションが揃った。
ヴァン クリーフ&アーペルが発表した新作ハイジュエリーコレクションは「Le Grand Tour ル グラン トゥール」。名前の由来になっている「グランドツアー」とは、18世紀から19世紀にかけて貴族階級の子弟が学業の仕上げとして、見聞を広げるために2~3年かけてヨーロッパの様々な都市をめぐった壮大な旅のこと。同メゾンはこの冒険旅行に着想を得て、ヨーロッパの様々な土地の歴史や文化、自然風景への賛美を表現するコレクションを生み出した。ヴァン クリーフ&アーペルらしい、詩的なアプローチだ。



シャネルは、創業者ガブリエル・シャネルが同メゾンのアイコンとして用いてきたツイードを新作ハイジュエリーコレクションのテーマに選んだ。ツイードが同メゾンのハイジュエリーの世界に加わったのは2020年と新しい。「ツイード ドゥ シャネル」と名付けた当時のコレクションでは、アーティキュレーション(結合)を巧みに用い、ツイードのしなやかさや風合いを初めてジュエリーで再現した。同テーマの第二弾となる今年は、5つのカラーにガブリエル・シャネルが愛したモチーフを組み合わせた5つの章<リボン=ホワイト、カメリア=ピンク、コメット=ブルー、太陽=イエロー、ライオン=レッド>を通じ、プレシャスストーンを大胆に使い、再びツイードの魅力を紐解いた。



ピアジェの新作ハイジュエリーコレクションのテーマは「Metaphoria(メタフォリア)」。“比喩”を意味する「メタファー」がその由来だ。新作コレクションの着想の源になっているのは壮大な自然だが、それをそのまま具象的に描写するのではなく、自由なアプローチでその美しさやエネルギーを比喩的に表現した。創業以来、大胆なアプローチでそのスタイルを築いてきたピアジェらしく、独創的な作品が揃った。



ポメラートは1967年の創業以来、常にインスピレーションの源としてきたミラノの街に敬意を表した新作ハイジュエリーコレクション「Ode to Milan(ミラノへの賛歌)」を発表した。歴史的建造物もあれば、最先端のデザインも生まれる街、ミラノ。その様々な表情に着目した33の作品が生まれた。ポメラートが掲げてきた「日常使いできるデザイン」というビジョンが、今回のコレクションにも反映されている。



MIKIMOTOもヴァンドーム広場の一角にブティックを構えるブランドの一つ。今年は創業者の御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功させてから130年の節目の年。ブランドの原点である海へのオマージュをささげる新作ハイジュエリーコレクションを発表した。海とともに美を創造してきたMIKIMOTOならではの感性で、ダイナミックかつドラマチックな海のシーンを表現した。



TASAKIの新作ハイジュエリーコレクションのテーマは「Nature Spectacle(ネイチャー・スペクタクル)」。壮大な海を舞台に、水の流れや幻想的な光をジュエリー作品として表現した。本コレクションはTASAKIのハイエンドなジュエリーライン「TASAKI Atelier(TASAKI アトリエ)」の一環に位置づけられる。手がけるのは、ニューヨークを拠点にファッションデザイナーとして活躍し、2017年にTASAKIクリエイティブディレクターに就任したプラバル・グルン。最先端のスタイルで世界のセレブの支持を集める彼らしいアプローチで、モダンなデザインの作品が揃った。




text: Shunya Namba @Paris Office