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百花繚乱! パリで発表されたハイジュエリーコレクションの数々

© Van Cleef & Arpels SA Photographe Marc de Groot ArtDirector Gaspard Yurkievich and Guido Voss

7月上旬のパリ・ヴァンドーム広場を舞台に、多くのジュエラーがハイジュエリーの新作コレクションを発表した。ハイジュエリーはファッションにおけるオートクチュールにあたる存在。希少性の高い宝石を惜しみなく使い、熟練の職人が長い期間をかけて手作業で制作を行う。一点ものの作品も多く、発表時には既に買い手が決まっていることも珍しくないため、実物を見られる機会はそう多くないかもしれない。それでもこの時期の発表に力を入れるのは、ハイジュエリーが各メゾンの独創性や大切にする価値観を体現するものだからだ。今年も、個性的なコレクションが揃った。

ヴァン クリーフ&アーペル

ヴァン クリーフ&アーペルが発表した新作ハイジュエリーコレクションは「Le Grand Tour ル グラン トゥール」。名前の由来になっている「グランドツアー」とは、18世紀から19世紀にかけて貴族階級の子弟が学業の仕上げとして、見聞を広げるために2~3年かけてヨーロッパの様々な都市をめぐった壮大な旅のこと。同メゾンはこの冒険旅行に着想を得て、ヨーロッパの様々な土地の歴史や文化、自然風景への賛美を表現するコレクションを生み出した。ヴァン クリーフ&アーペルらしい、詩的なアプローチだ。


18世紀パリの宮廷文化を想起させるイヤリング。カラーストーンを絶妙に組み合わせ、華やかなシャンデリアを表現。「ルセンディ イヤリング」ローズゴールド、ホワイトゴールド、ルベライト、モーヴサファイア、ダイヤモンド © Van Cleef & Arpels SA – 2023


鮮やかな色彩を放つオーバル形のターコイズを16個用い、ヴェネツィアの美しい水辺を表現したネックレス。「シャン デ ゴンドリア ネックレス」ホワイトゴールド、イエローゴールド、サファイア、ターコイズ、ダイヤモンド © Van Cleef & Arpels SA – 2023


ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)にある町、バーデン=バーデンの伝統的な祭りを題材にしたリング。カラーストーンをぜいたくに使い、祭りの参加者がかぶる、色とりどりのビーズ、リボン、花で飾られた冠を表現した。「シャペル リング」ローズゴールド、ホワイトゴールド、ルビー、エメラルド、ピンク&イエローサファイア、スペサタイトガーネット、ダイヤモンド © Van Cleef & Arpels SA – 2023

シャネル

シャネルは、創業者ガブリエル・シャネルが同メゾンのアイコンとして用いてきたツイードを新作ハイジュエリーコレクションのテーマに選んだ。ツイードが同メゾンのハイジュエリーの世界に加わったのは2020年と新しい。「ツイード ドゥ シャネル」と名付けた当時のコレクションでは、アーティキュレーション(結合)を巧みに用い、ツイードのしなやかさや風合いを初めてジュエリーで再現した。同テーマの第二弾となる今年は、5つのカラーにガブリエル・シャネルが愛したモチーフを組み合わせた5つの章<リボン=ホワイト、カメリア=ピンク、コメット=ブルー、太陽=イエロー、ライオン=レッド>を通じ、プレシャスストーンを大胆に使い、再びツイードの魅力を紐解いた。

ガブリエル・シャネルのスタイルのアイコンであり、優美さや格別さを象徴するカメリアをモチーフにしたネックレス。立体感と奥行きのあるツイードの上に、幾何学的なカメリアの花を刺繍のように繊細に表現した。「Tweed Camélia Style(ツイード カメリア スタイル)」ネックレス、ピンクゴールド、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、ピンクサファイア

ブラックとブルーのツイードにダイヤモンドやイエローサファイアを散りばめ、小さな星が煌めく夜空を再現したネックレス。「Tweed Céleste(ツイード セレスト)」ネックレス、ホワイトゴールド、イエローゴールド、ダイヤモンド、サファイア、オニキス

大ぶりのストーンを交互に配した透明感のあるツイードにより、太陽の光が通過するかのような輝きを放つブローチ。「Tweed Byzance(ツイード ビザンス)」ブローチ、イエローゴールド、ダイヤモンド、ベリル

ピアジェ

ピアジェの新作ハイジュエリーコレクションのテーマは「Metaphoria(メタフォリア)」。“比喩”を意味する「メタファー」がその由来だ。新作コレクションの着想の源になっているのは壮大な自然だが、それをそのまま具象的に描写するのではなく、自由なアプローチでその美しさやエネルギーを比喩的に表現した。創業以来、大胆なアプローチでそのスタイルを築いてきたピアジェらしく、独創的な作品が揃った。

アクアマリン、アコヤ真珠、ダイヤモンドというユニークな組み合わせで、霜と氷のイメージを表現したネックレス。「Aqua Summa(アクア スマ)」ホワイトゴールド、アクアマリン、アコヤ真珠、ダイヤモンド
樹木の葉を表現したイヤーカフ。ゴールドには、ピアジェが得意とする精巧な金細工が施されている。「ALATA(アラタ)」イエローゴールド、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、マザーオブパール

6.59カラットのクッションカットエメラルドをセットしたジュエリーウォッチ。カフの下にさりげなく文字盤が配置されている。「Foliatura(フォリアトゥーラ)」ホワイトゴールド、エメラルド、ダイヤモンド

ポメラート

ポメラートは1967年の創業以来、常にインスピレーションの源としてきたミラノの街に敬意を表した新作ハイジュエリーコレクション「Ode to Milan(ミラノへの賛歌)」を発表した。歴史的建造物もあれば、最先端のデザインも生まれる街、ミラノ。その様々な表情に着目した33の作品が生まれた。ポメラートが掲げてきた「日常使いできるデザイン」というビジョンが、今回のコレクションにも反映されている。

直線的な構造に多様な色彩の128のスピネルを配し、高層ビルに囲まれたミラノの日暮れを再解釈したネックレス。「SKYLINE(スカイライン)」ローズゴールド、スピネル、ダイヤモンド

ポメラートのアイコンであるチェーンモチーフに3つのインディゴライトを組み合わせ、ミラノのインテリアによく使われるエレガントなベルベットを表現したネックレス。「GIARDINI VERTICALI(ジャルディーニ・ベルーティカリ)」ローズゴールド、インディゴライト、ダイヤモンド

グリーントルマリンとバイオレットブルーのタンザナイトを組み合わせたイヤリング。ミラノのファサードを連想させるモザイクテイストの風合いは、エメラルドカットのジェムストーンを表裏逆にセットすることで表現した。「GIARDINI VERTICALI(ジャルディーニ・ベルーティカリ)」ローズゴールド、チタン、ダイヤモンド、グリーントルマリン、タンザナイト

MIKIMOTO

MIKIMOTOもヴァンドーム広場の一角にブティックを構えるブランドの一つ。今年は創業者の御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功させてから130年の節目の年。ブランドの原点である海へのオマージュをささげる新作ハイジュエリーコレクションを発表した。海とともに美を創造してきたMIKIMOTOならではの感性で、ダイナミックかつドラマチックな海のシーンを表現した。

シロナガスクジラの親子が寄り添いながら泳ぐ姿を投影したネックレス。大ぶりのグリーントルマリンが海の生物のオーラを象徴し、その中心に向かって泳ぐ小魚の群れを繊細に描いている。トルマリン、サファイア、アクアマリン、ガーネット、ダイヤモンド

色とりどりの魚が群れをなして泳ぐ姿を表現したネックレス。多様なパールを立体的に構成し、海流のような流麗な流れや、海の泡をほうふつとさせるきらめきを生み出した。アコヤ真珠、ベリル、タンザナイト、トルマリン、アメシスト、ガーネット、サファイア、スピネル、アレキサンドライト、アクアマリン、ダイヤモンド

独創的な感性でウニの造形美を表現したリング。アレキサンドライトを中心に寒色のカラーストーンやダイヤモンドを配し、神秘的な印象に。アレキサンドライト、トルマリン、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド

TASAKI

TASAKIの新作ハイジュエリーコレクションのテーマは「Nature Spectacle(ネイチャー・スペクタクル)」。壮大な海を舞台に、水の流れや幻想的な光をジュエリー作品として表現した。本コレクションはTASAKIのハイエンドなジュエリーライン「TASAKI Atelier(TASAKI アトリエ)」の一環に位置づけられる。手がけるのは、ニューヨークを拠点にファッションデザイナーとして活躍し、2017年にTASAKIクリエイティブディレクターに就任したプラバル・グルン。最先端のスタイルで世界のセレブの支持を集める彼らしいアプローチで、モダンなデザインの作品が揃った。

海の中で潮の流れがダイナミックに旋回したり、らせんを描くように大きく躍動する、生命力あふれる情景を描いたネックレス。「Swirl(スワール)」。ホワイトゴールド、ダイヤモンド

水のしずくが光を浴びてきらめきながら流れ落ちるシーンを表現したネックレス。パライバトルマリンとパールを幾重にも連ねた奥行きのあるデザイン。「Cascade(カスケード)」ホワイトゴールド、アコヤ真珠、ダイヤモンド、パライバトルマリン



text: Shunya Namba @Paris Office

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