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40代モデル浜島直子さんの「服」をめぐるストーリー

“はまじ”の愛称で親しまれ、雑誌やT V、ラジオなどで活躍する人気モデル・浜島直子さんが4月に上梓したエッセイ集『けだま』(大和書房)。モデルというイメージから想定する華やかな服ではなく、くだらなくも愛おしい日常の中での「服」を入り口にした珠玉のエピソードはどのように綴られたのか。モデルとして歩んできた道のりとともに、話を伺った。

読む人を記憶の旅へと誘うような二十二篇の物語

浜島さんがエッセイを出版するのは、2020年に出版した初の随筆集『蝶の粉』に続いて2冊目。「服」にまつわる書き下ろしのエッセイ集という今回の企画は、『蝶の粉』に感銘を受けた大和書房の担当編集者からの熱烈なラブコールを受けて実現した。

「お話をいただいたのは、1冊目の『蝶の粉』を産み落とした直後で、まだ産後の骨盤グラグラみたいな時期。すぐに次を書く気にはならなかったのですが、打ち合わせをしているうちに、洋服を入り口にするなら書けるんじゃないかという気がしてきて、月に1本ずつ、少しずつ書き溜めてきました」

中学時代、富良野で唯一のジーンズショップ「サトミ」で買った「サムシングのジーンズ」、授乳を拒む息子に涙した「水色のロンパース」、ミステリーハンター時代の体験を彩る「エルエルビーンの黄色いカッパ」など、服を入り口に、するすると蘇る記憶を綴った二十二篇の物語は、読む人をも、自身の記憶の旅へと誘い出す。

「今回は洋服という共通のテーマがあったので、飽きないで最後まで美味しく食べられる幕の内弁当を裏テーマににしていました。22品目バランスよく散らばるように、この章はがっつり揚げ物とか、さっぱり酢の物とか、そういう感じで書いていたのですが、最後は全部のおかずをしっかり受け止められる白米を書かなくちゃと思い、二十二篇目はタイトルでもある『けだま』という章を書きました」

浜島直子 けだま

<以下書籍「けだま」の「おわりに」より一部引用>

今回タイトルにもした「けだま」とは、日々のなんてことない営みや、その時間そのものを表したいという想いを込めてつけました。

毎日必死で鬱々とすることもあり、決して楽しいことばかりではない日常。気がつけばいつの間にかできている毛玉を目にすると、嫌でも生活の息づかいを感じてしまう。

しかし、それこそが魂を寄せ合って暮らしてきた証なのではと、そんな毛玉ができるような日常の時間そのものが愛おしくてたまらないのだと、感謝にも似た想いで書きました。

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Profile

浜島直子

1976年、北海道生まれ。モデル。愛称「はまじ」。18 歳でモデルデビュー。「LEE」では 10 年間専属モデルを務めるなど、現在も様々な女性誌で活動中。またTBS「世界ふしぎ発見!」では 12 年間ミステリーハンターとして出演する他、NHK「あさイチ」、bayfm「Curious HAMAJI」など、多くのテレビ・ラジオ番組にも出演している。〝あべ はまじ〞名義で絵本『ねぶしろ』シリーズや、初の随筆集『蝶の粉』 も出版。今年4月に上梓した新刊『けだま』(大和書房)では、服を入り口に、日常の何気ない風景を描いた22篇の物語でも、瑞々しい筆致が光る 。

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