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BTSが「ソロ活動専念」に至った深い訳。なぜK-POPアイドルのキャリア形成は難しいのか

キャリアの節目となる「7年」の契約期間

K-POPアイドルグループは、デビューしてから7年でメンバーが脱退したり、解散したりするケースが多く、「魔の7年」「7年のジンクス」などとよく言われている。その背景にあるのは、アイドルと所属事務所が結ぶ最長7年の専属契約だ。デビュー前の練習生時代の投資コストを回収する前に事務所を離れられてしまってはビジネスが成り立たないため、契約を結ぶことで事務所側がそのリスクを回避する。もともとは10年以上の長期にわたる”奴隷契約”が横行していたが、アイドルの人権を尊重し、現在は最長7年に短縮されている。

しかし、短縮された現在も、契約満了とともに事務所と再契約をするグループは多くない。7年という限られた期間で成果を最大化するための過密スケジュールによって心身ともに疲弊してしまったり、契約内容について見直した際に事務所と意見が合わなかったり、個人活動へとキャリアをシフトしたくなったりするのだ。ちなみに、BTSは2013年6月にデビューし、2018年10月に所属事務所と再契約を結んでおり、契約満了(7年)まで1年以上を残した状態で契約を更新したことになる。これは、K-POP界では珍しいケースと言えよう。

男性アイドルグループが避けて通れない「兵役」の存在

上記に加え、男性アイドルがグループ活動を辞める決定打となってしまうのが、兵役の存在である。兵役とは、原則として満28歳の誕生日までに約2年間、軍隊で訓練を受けなければならない韓国国民の義務だ。デビューして数年後、人気が定着しつつある「旬」な20代の貴重な時間を捧げなければならず、兵役をきっかけにファンが離れ、解散の危機に見舞われることが多々ある。芸術、体育分野での功労者を対象に兵役が延期、免除となる特例制度もあり、BTSの兵役免除を巡ってこれまで幾度となく議論が交わされてきたが、このままいけば今年の12月に30歳の誕生日を迎えるメンバー最年長のJINが3ヶ月以内に入隊することになる(BTSは、特例により30歳まで入隊延期可)。

迫るJINの入隊期限を目前に、BTSを含む大衆文化の発展に寄与したアーティストの兵役義務を代替服務に切り替えることを柱とする「兵役法改正案」が提出されるなど、今後の動向にも注目が高まりそうだ。

とはいえ、上記のような移り変わりの激しいK-POP界で、ハードなアイドル生活、事務所との確執、メンバー間の意見の食い違い、兵役など、実にさまざまな壁を乗り越え、アイドルグループとしてのキャリアを維持するグループもいる。トータル約10年の兵役期間を乗り越え、今も楽曲のリリースやコンサートを精力的に行うSUPER JUNIORや、所属事務所がバラバラになった後も個人活動と並行してメンバー同士の交流を維持し、8月にカムバックを果たした少女時代がいい例だ。

動画で「さらなるステップアップのために、今は自分の時間が必要だ」と長年アイドルとしてグループ活動を続けることの苦悩と今後の決意を語ったBTS。長い人生、個人活動に振り切る期間があったっていい。彼らの発言を悲観せず、「BTS 第2章」を応援したい。

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Profile

Akari Hiroshige

Akari Hiroshige


1994年生まれの自称、韓国インディーズPR大使。韓国のミュージシャンや業界人を中心にインタビュー記事を多数執筆。「韓国の音楽をジャンルレスに紹介する」をモットーに、韓国インディーズ音楽特化型メディア「BUZZYROOTS」の運営やDJイベントへの出演、アーティストのアテンドなど、多岐に渡り活動中。
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