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明治・大正期に煌めいた超絶技巧を秋の京都で堪能する【what to do】

刺繍絵画の超絶技巧に驚きの連続

この秋の京都は、超絶技巧に触れられる格好の場所だ。京都髙島屋7階グランドホールでは9月26日まで、「刺繍絵画の世界展 明治・大正期の日本の美」も開かれている。明治期を中心に海外向けの輸出染織品の制作が盛んに行われる中で、華麗で精巧な刺繍絵画が作られた。その多くが輸出され、コレクターに所蔵されていたこともあり、日本では近年になって注目を集めるようになった。同時にビロードの表面を起毛させてリアルな質感を強調した「天鵞絨(ビロード)友禅」と呼ばれる作品も展示されている。京都へ巡回する前の9月初旬、東京の日本橋髙島屋S・C本館で同展を先入観なしに観たが、その過剰とも言える精緻さに驚きの連続だった。

岸竹堂《虎》 明治26(1893)年 東京国立博物館蔵 TNM Image Archives ※京都市京セラ美術館で展示

下絵を著名な日本画家が描いたこともあり、幸野楳嶺や今尾景年、竹内栖鳳、山元春挙ら今展にクレジットされている作家の多くが、京都市京セラ美術館の企画展の出品作家と重なっている。岸竹堂もその一人。両方の展示に同じ「虎」をテーマにした作品が展示されている。京都市京セラ美術館に展示されているのは、絹本着色の軸でシカゴ万博(1893)に出品されて銅牌を受賞している。一方、京都髙島屋で展示されているのは、彼が下絵を描いたビロード友禅。ビロードの一部を毛羽立たせ、本物の虎の風合いが迫ってくる。この作品を京都で見比べられる贅沢さ!

ビロード友禅 (下絵:岸竹堂、友禅:村上 嘉兵衛)《金地虎の図》 明治時代 髙島屋史料館蔵 ※京都髙島屋で展示

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Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。近年、盛んに開かれるようになった超絶技巧がらみの展示。正直、「ネタ切れ」の雰囲気もあったが、今回の刺繍絵画展を観て、まだまだ底知れないリソースがあるように感じた。

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