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オードリー・ヘプバーンによるジバンシィの見事な着こなし『パリの恋人』【ドレスに見惚れる名作シネマ】

(C) 1956 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ジューン・ブライドの季節、ウエディングドレスをはじめ、美しい衣装をまとったヒロインに心奪われる名作映画を紹介しています。今回ご紹介するのは、ジバンシィのミューズでもあったオードリー・ヘプバーンが、斬新かつ芸術的なデザインのドレスで見るものを魅了するこのラブ・ロマンスです。

フレッド・アステアとのダンスシーンも必見

革新的な流行を探し求めるアメリカのファッション誌編集長と一流ファッションカメラマンが、哲学に傾倒する地味な書店員の女性を “発見”し、ハイファッションを身に纏うミューズに変身させるシンデレラストーリー。それが『パリの恋人』(1957年)である。

本作のスペシャル・ビジュアル・コンサルタントとしてクレジットされている写真界の巨匠リチャード・アヴェドンが、かねてより友人だった脚本家のレナード・ガーシュに、エレガンスと知性を兼ね備えたモデルを探す物語を映画にしようと持ちかけたのが発端だった。

実際にアヴェドンは、1951年にイヴリン・フランクリンと出会い、一流のファッションモデルに育て上げた後に結婚していて、その実話が下敷きになっている。

カメラマンに扮したのは、ミュージカル映画界のレジェンドであり、マイケル・ジャクソンが崇拝したことでも知られるフレッド・アステア。そして、書店員からファッションモデルに開花するヒロインを演じたのがオードリー・ヘプバーンである。

ファッションカメラマン、ディック(フレッド・アステア)にモデルとしての資質を見出されたジョー(オードリー・ヘプバーン)。ジョーをミューズにしようというディックの提案に、ファッション誌の名編集長は「彼女はファニー・フェイスだからダメ」と反論する。本作の原題でもある「ファニーフェイス」は当時の流行語となった。しかし編集長もジョーの美しさに気づき、ルーヴル美術館での撮影に臨むことになる (C) 1956 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

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『パリの恋人』はオードリーにとって2つの念願が叶った映画だった。

ひとつは、フレッド・アステアとの共演である。

小学生の頃にバレエに出会い、バレリーナとして将来を嘱望された時期もあったオードリーにとって、アステアとの共演は夢だった。本作出演の打診を受けたオードリーのエージェント、カート・フリングズは脚本を読んで「こんなものをオードリーに送りつけるとは!」と激怒したが、オードリー自身が出演を快諾した。その理由が「フレッド・アステアが出るミュージカルだから」だったという。夢を叶えた彼女が、ときに快活に、ときに優雅に踊るシーンは必見だ。

もうひとつの念願は、ジバンシィの衣裳である。

オードリーとジバンシィの出会いは1953年の夏に遡る。「ミス・ヘプバーンが新作映画のためにドレスを選びに訪れる」と聞いたジバンシィは、当時人気実力ともにトップ女優のひとりだったキャサリン・ヘプバーンが来るものと期待していたが、現れたのは見たことのないオードリーという痩せっぽちの女の子だった……というのは有名な話。

最新モードを装い、パリの名所での写真撮影を行うジョーとディック。その最後のシーンは教会でのウエディングシーンだった。花嫁衣裳を纏ったジョーは、これまで秘めていた感情を抑えきれず、告白するのだった (C) 1956 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ジバンシィが関わった『麗しのサブリナ』(1954年)を経て、『パリの恋人』のオファーを受けた頃には超売れっ子になっていたオードリー側は、ジバンシィの衣裳の大半を映画会社から譲り受ける権利を手に入れた。

パリの人気デザイナーの最新作、という設定でデザインされた衣裳の数々は、65年前の作品とは思えないほど斬新で優雅で美しい。それだけ芸術性が高く、普通じゃ真似できない服ばかりなのだが、重要なシーンでオードリーが着るウエディングドレスは、シンプルで可愛くて参考にしたくなる。もちろん、オードリーのように痩せて、手脚が長くなければなかなか着こなせないデザインなのだけれど。

オードリーとジバンシィは、若き日に出会ったことで互いのキャリアに影響を与え、生涯にわたる信頼関係を築いた。『パリの恋人』は、永遠の妖精とクチュリエが創り上げた映画史に残る名シーンの数々を堪能できる作品である。

『パリの恋人』
Blu-ray: 2,075 円 (税込)  /  DVD: 1,572 円 (税込)発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
Prime Videoでレンタル・購入配信中(掲載しているのは2022 年 6 月の情報です)
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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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