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美弥るりか主演『The Palor』が開幕。宝塚出身の花乃まりあ、剣幸と三世代の母娘に

本サイトで「暮らしのパワーチャージ」を連載中の元宝塚歌劇団月組男役スターの美弥るりかが主演を務めるミュージカル『The Palor』が、いよいよ本日4月29日から東京・大手町のよみうり大手町ホールで上演される。

葛藤を抱えた祖母と孫が「ザ・パーラー」で再会

公演にさきがけ、28日に公開ゲネプロが開催され、併せて行われた取材会には美弥るりか、元宝塚歌劇団花組トップ娘役の花乃まりあ、さらに元宝塚歌劇団月組トップスターの剣幸の3人が、脚本・演出の小林香を交えて登場、舞台への意気込みを語った。

(写真左より)取材会に出席した作・演出の小林香、花乃まりあ、美弥るりか、剣幸(撮影:田中亜紀)

物語の舞台は「ザ・パーラー」と名付けられた部屋。曽祖母の時代は談話室、祖母の時代は美容室、母の時代は喫茶室として、三世代の母娘たちが守り継いできた。

そのパーラーに、LA在住のゲームクリエイター・円山朱里(美弥るりか)が、祖母の阿弥莉(剣幸)に呼ばれて数年ぶりに帰国する。阿弥莉は朱里の母・千里(花乃まりあ)がある悲劇によって亡くなったあと朱里を育ててきたが、そんな祖母に朱里は複雑な思いを抱えていた。

アメリカでゲームクリエイターとして活躍していた円山朱里(美弥)は祖母から日本に帰って来るように言われるが…

帰国した孫娘にパーラーを閉店すると告げる祖母。パーラーの常連客でシングルファーザーの小澤(植原卓也)、千里の幼馴染でクロスドレッサーのザザ(舘形比呂一)、朱里のゲームファンの主婦・アリス(北川理恵)らが閉店に反対するなか、千里にそっくりな女性が現れる。それは、千里の死後、大手おもちゃメーカー・トイッスルの社長で父親である草笛遊史(坂元健児)に引き取られた、朱里の異父姉妹の妹・灯(花乃/二役)だった。

常連たちが集う「ザ・パーラー」。しかし朱里と祖母の間はぎくしゃくしている

灯は朱里にトイッスルの人気ボードゲーム「トイ・トイ・トイ」のPCゲーム版の制作を依頼するが、事態は思わぬ方向に──。

祖母と孫、父と娘、さらには家庭や職場などさまざまな人間関係や環境のなかで生きづらさを感じている”名もなき普通の”人々が、その苦しみや葛藤から自分を解き放っていく姿を描くこの作品。今回の演出を手がける小林香が自ら企画した。

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小さなことが次代の大きな自由につながっていく

小林は『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ1812』やオフブロードウェイミュージカル『The Last 5 Years』など数々の海外ミュージカルの演出を手がけ、演出・脚本・作詞を一手に担う「オリジナルミュージカル」も得意とし、高い評価を受けている。

異父きょうだいの妹・灯(花乃まりあ・写真右)からゲームの製作を頼まれる朱里

この作品に込めた思いを小林はこう語る。
「今は本当に、地球全体が暗い雲に覆われているような状況です。ある国では人口の半分以上の子どもたちが、国内外で避難民として暮らさざるをえないというような状況を大人が作っている。それでも子どもたちには、自分は生まれてきてよかったと思ってもらいたい。どうして自分を産んじゃったの? 産まないでいてほしかったと思うような世の中にしないために、今私たちができることはなんだろうと考えました。

大きな変革というものは一人ひとりの力では無理ですけれど、身近にあるささやかな物事に対する気づきや、何かがあったら無視せずにしっかりそれを見つめること、言葉にして伝えること、自分のことも他の人のことも考えること、そういった本当に小さなことが次代の大きな自由につながっていく、そういうことを伝えたいと思ってこの作品を書きました」

新しいゲームのプレゼンまで1週間。時間はないが、トイッスルの古い価値観を打破するゲームの開発に挑む朱里

主役の朱里を演じる美弥るりかは、
「私が演じる丸山朱里は母の死により実家のザ・パーラーという場所から逃げるようにして、海外でずっと活動しているゲームクリエイターです。そんな朱里が、剣さん演じる祖母の阿弥莉さんに呼ばれて帰国したことにより、それまで遠ざけていた人間関係に向き合うことになる。そうしたなかで少しずついろいろなことを感じながら彼女なりに小さな一歩を踏み出していく、そんな姿を演じられていれば」と語る。

阿弥莉を演じる剣幸は小林の作品に出るのはこれが3作目。剣について小林は「黙っていても相手の芝居をしっかりと受けてそれを心の中に落とし込んで、何を感じていらっしゃるのかよくわかる。今回、見えない心の交流というのがすごく大事なのだけれど、それを細やかに表現してくださっている。1カンパニーに1人いていただいたらいいなと思う頼もしい俳優さんです」。

剣自身は、「香さんの作品では私は全部おばあさんの役。おばあさんをやるのは大好きですけれど、その間に自分がどんどん歳をとっていくから、今回は回想シーンが大変です。もう若くなれないって思いながらやっている」と笑う。

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かつて「ザ・パーラー」は阿弥莉(剣)とその娘・千里(花乃/二役)とで営んでいた。物語は現在と過去を行き来しながら進んでいく

一方で、「香さんがお書きになったセリフや歌詞の中に『なぜ』がたくさん出てくるんですね。香さんが世の中に対して思っている『なぜ』をいっぱいちりばめてくださっていて、最初のうちは、なぜ『なぜ』って思うのかなと、自分が想像もしないような『なぜ』がいっぱいあった。でもそのうちに、私が歳を重ねて『平穏無事に生きよう』とか『波風立てないで生きよう』とか『気の合う人とだけ会おう』というふうになっていることに気づいて、それじゃダメなんだなということをこの作品から教えられた」のだという。そして「阿弥莉とこの作品から明日への勇気のようなものをいただいて、メラメラと燃えております」と公演初日への意気込みを見せた。

今回の作品では、作曲・編曲をアメリカで活躍する新進気鋭の作詞作曲家、アレクサンダー・セージ・オーエンが担当している。劇中で歌われる数々の歌のなかで一番好きな歌を問われ、3人とも好きだと答えたのがテーマソングでもある『ザ・パーラー』。

さらに個人的に好きな歌として花乃まりあが挙げた曲は、植原卓也演じるシングルファーザーの小澤とのデュエットナンバー『Tシャツみたいな自分』。「自分は何者でもないなと思っている者同士が、お互いの存在やお互いの言葉によって特別な存在になれるかもと、希望を見出していく歌です。この人とこれからも関わって生きていこうと思うときの、一番フレッシュで大切なところだけをぎゅっと絞ったような本当に素敵な曲で、歌いながらいつも勇気をもらえる」のだという。

『Tシャツみたいな自分』を歌うシングルファーザーの小澤(植原卓也)と灯

最後に29日からの公演について美弥は「今日まで大切に大切に作り上げてきたこの作品を皆様にお届けできるのをとても嬉しく思います。ここまで私たちを導いてくださった香さんを信じて、そして今日ご一緒している剣さん、花乃さん、そして、植原さん、舘形さん、北村さん、坂元さんの7人から生まれる繊細な空気と感情を丁寧にお客様にお届けできたらなと思っています。ちょうどゴールデンウィークなので1人でも多くの方に劇場でお会いできたらうれしいです」と抱負を語った。

東京公演は本日4月29日から5月8日まで行われ、5月14日から15日まで、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールでも上演される。

撮影・編集部

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Musical「The Parlor」


公演期間: 4月29日(金・祝)~5月8日(日)
会場: 東京都 よみうり大手町ホール


公演期間: 5月14日(土)・15日(日)
会場: 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール


作・演出:小林香
作曲・編曲:アレクサンダー・セージ・オーエン
出演:美弥るりか、花乃まりあ、植原卓也、舘形比呂一、北川理恵、坂元健児、剣幸

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