フランスで100万人突破の大ヒットを記録! 常識を覆す近未来スリラー『動物界』トマ・カイエ監督にインタビュー

2023年、フランスのアカデミー賞と呼ばれるセザール賞で日本でも話題を呼んだ『落下の解剖学』をしのぐ最多12 部門のノミネートを達成し、同国で観客動員100万人超えの大ヒットを飛ばした衝撃作『動物界』が、ついに11月8日、日本に上陸する。

2023年、フランスのアカデミー賞と呼ばれるセザール賞で日本でも話題を呼んだ『落下の解剖学』をしのぐ最多12 部門のノミネートを達成し、同国で観客動員100万人超えの大ヒットを飛ばした衝撃作『動物界』が、ついに11月8日、日本に上陸する。
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本作は、人間が様々な動物に変異する奇病が蔓延(まんえん)し、混乱に陥っている近未来を舞台に、人類が直面している人種差別、移民、ルッキズム、感染症など現代的なテーマを内包した、常識を覆すアニマライズ・スリラーだ。徐々に身体が動物に変異していく病に罹(かか)った人間は“新生物”と呼ばれ、その凶暴性ゆえに隔離され、周囲から心ない差別を受けていた。主人公・フランソワの妻もそのひとりだった。そして、その病は愛する一人息子・エミールにも迫っていた。人間と“新生物”の分断が激化するなかで、親子が辿(たど)る衝撃の運命とは…!?

現代の社会的なテーマと、父と息子の絆のドラマを融合させ、斬新な物語を作りあげたトマ・カイエ監督。「独創的で深い感動を呼ぶ、紛れもない傑作」「極上の家族ドラマ」「2023年度フランス映画の頂点」と世界の批評家たちから絶賛を受けた類まれな才能をもつ監督が、本作を通して伝えたい熱い想いを語ってくれた。

──本作には人種差別、ルッキズム、未知のものへの恐怖による分断など、現代的なテーマが込められていますが、この問題は日本でも深刻化しています。 本作は、それらの問題と向き合うことで家族の愛がさらに深まっていく素晴らしい物語でした。監督がのこの作品を通して伝えたかった1番の想いは?
大きなキーワードは<変異>です。つまり<違い>ということです。<違い>を持った時にそれに対して、社会として、個人として、どのような視点を当てるか、どのような接し方をするかが重要だと思っています。おっしゃるように、人種差別などで<違い>の影響が表れてくることもあります。肌の色の違いだけでなく、性的指向の違いも含めて多様性があるなかで、どうやって調和して生きていくかが重要なのだと思います。
── ホラーやスリラーだと聞いていたので、怖くて悲しい物語かと思っていましたが、現実的で自分に起きているかのようなリアルさに没入し、ラストは深い愛に包まれてとても感動しました。意外な結末でした。このラストは最初から決めていましたか? また、テーマや設定がファンタジー映画のようになりがちですが、自分ごととして捉えられる家族の物語にした理由は?
私が今回の映画で目指したのは、いくつかのテーマがクロスオーバーするようなものでした。ファンタジーであり、家族愛の話でもあり、学びの話でもあります。とてつもない未来の話ではなく、私たちの今生きている世界の話にしたかったのです。そういった意味で主人公たちの視点の物語にしたかった。父と子の物語に。だから、私にとっては怪物が出てくるスリルや恐ろしさよりも、親子の軌跡の物語、子供たちを導く物語を描くことが重要でした。そのため、ラストは最初から決めていました。
──監督自身の経験なども反映されていますか?
まずは場所ですね。映画の中に登場する森は、私が育った場所です。子供時代から10代までこの森の近くで育ちました。高校も私が実際に通っていた学校です。あとは、私自身が2人の子供をもつ父親としての不安や、子供たちに大切な価値観をどう伝えるか。例えば“自由”についての価値観をいかにして伝えるかという難しさ。それは個人的なこととして本作に反映しています。

──特殊メイクが素晴らしく、とてもリアルで本物のようでした! こだわったことは?
一番目指したところは、リアルであること。ファンタジー映画ではありますが、リアリズムを追求したかった。魔法みたいに急に変異するのではなく、病によってゆっくり人間が変異を遂げるという物語なので、リアルにみせるディテールがとても大事でした。デジタルで変化を加える、というよりも特殊メイクなどで実際に俳優たちに物理的なアプローチをしました。フィクス役(鳥に変異していく青年)の俳優は、特殊メイクに6〜7時間ほどかけています。彼は撮影場所に夜中の1時に来て、朝の撮影に備えるという状態でした。
──本作では鳥になったり、タコになったり、カメレオンになったり… 様々な変異を遂げるキャラクターが登場します。それぞれの動物に意味はありますか?
特にルールは決めませんでした。唯一のルールは、この地球上に存在するあらゆる種に変化する可能性があるということでした。哺乳類もいれば、鳥類もいる。なかには虫に似ている変異を遂げる人もいますよ。それは一つのエコロジーとしてのメッセージです。環境の種の多様性。地球上にはすべての種が存在する権利があるということを指しています。
──本作を観て『第9地区』『ブラック・スワン』『ザ・フライ』『ロブスター』などの映画を思い出しましたが、参考にした作品や影響を受けているものなどはありますか?
デヴィッド·クローネンバーグの『ザ・フライ』には影響を受けています。特にあの映画のリアリズムが素晴らしいし、愛の物語であることが印象的でした。いわゆるファンタジーのジャンルに囚(とら)われることなく、親子関係で影響を受けたのはシドニー・ルメットの『旅立ちの時』や小津安二郎の『父ありき』で、参考にしました。

── エミールと鳥に変異していくフィクスが関係性を築いていく場面がとても好きですが、監督自身がお気に入りのシーンはありますか? また、撮影中の印象的なエピソードなどがあれば教えてください。
私の好きなシーンは、エミールがニナに電話をかけて、お互いに声が聞こえるか叫んでみようというシーンです。ちょっとしたシーンですが、エミールにとって身を隠すことから自分の存在を初めて認めることができた瞬間なので、とても重要なシーンだと思っています。
撮影場所はほとんど森だったので、夜の追跡シーンはとても大変でした。撮影は2022年夏に行っていたのですが、ちょうど撮影場所で山火事が発生し、森が焼け落ちてしまったんです…。急遽(きゅうきょ)、別の撮影場所を探さなければならなかった。灰の雨が降ってきたりと非常に黙示録的な光景が広がっていました。ただ、そういう条件で撮影したゆえの特殊な光が捉えられています。太陽の光が煙ったように映っているのは、山火事の灰越しに撮影しているからなんです。この経験から、自然はとても脆(もろ)く、すぐに消えてしまうものなんだ、と思い知りました。

──最後にこの映画を通して、読者の皆さんに伝えたいこと、こんな人に観てほしいなど、メッセージがあればお願いします。
この映画は自由と自然の強大な力、そして愛の物語です。人と人との絆を描いています。読者の皆さんもご存知の通り、素晴らしい俳優ロマン・デュリス、そして新進気鋭の若手俳優ポール・キルシェが素晴らしいパフォーマンスをみせています。ぜひ劇場で楽しんでください。
text: DIZ
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動物界
11月8日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他公開
【2023 年|フランス|フランス語|カラー|スコープサイズ|DCP|原題:LE RÈGNE ANIMAL|英題:THE ANIMAL KINGDOM|128 分|字幕翻訳:東郷佑衣|映倫区分:PG12】
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
© 2023 NORD-OUEST FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 2 CINÉMA – ARTÉMIS PRODUCTIONS.
公式 HP:https://animal-kingdom.jp
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