こんな時代だからこそ美しいものを見たい【マリ・クレールデジタル編集長のパリコレ日記①】
2026~27年秋冬のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)が3月2日から10日まで開催されました。期間中、パリ市内各所でショーや展示会なども行われました。ファッションだけでなく、街で見かけた様々なモノやコトをつれづれなるままにつづります。
2026~27年秋冬のパリ・ファッションウィーク(パリコレ)が3月2日から10日まで開催されました。期間中、パリ市内各所でショーや展示会なども行われました。ファッションだけでなく、街で見かけた様々なモノやコトをつれづれなるままにつづります。
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パリへ出発する前日、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まり、イランの最高指導者ハメネイ師が殺害されるというニュースが入ってきて、世界中に衝撃が走りました。この日パリから東京に戻る予定の友人のフライトの航路も変更になったと聞き、不安になりました。
出発当日の変更は何もなく、3月1日に無事にパリに到着。水などの買い出しに街に出たところ、ルーブル美術館前のリヴォリ通りで、大規模なデモ行進に遭遇しました。フランス在住のイラン人を中心としたデモ行進でした。警察による警備は厳重です。

ものすごい数の人たちに圧倒されました。中にはアメリカやイスラエルの旗を振っている人たちの姿もあり、また「MAKE IRAN GREAT AGAIN」と書かれたボードもありましたので、今の体制が崩壊したことを喜ぶ側の人たちだったのでしょう。

これまでパリに行くこと、30回以上。何度もデモ行進を見る機会はありましたが、こんなに長い列を見たのは初めてです。ホテルに帰ってテレビをつければ、ニュースは戦争一色。パリに来て、戦争が間近になりました。

ショー会場はOGATA。いつもと同様、デザイナーの黒河内真衣子さんにとってシーズンのインスピレーション源になったものなどが展示されています。写真、押し花、布の一部など。今回は美しい緑のガラスの器が印象的。江戸時代から大正時代にかけて日本で発展した和ガラスだそうです。



テーマは「Reflection」。これまであまりマメのコレクションでは目にすることのなかったアウトドアウェア的なものが加わることによって、新鮮さが増した気がします。展示されていた和ガラスの器のような緑が美しく映えます。
また、1965年創業の日本のレザーブランド「TSUCHIYA KABAN」とのコラボレーションで、バケットバッグやレザーベストなども登場しました。
マレ地区にある「ドーバー ストリート マーケット パリ」。歴史的建造物の中庭には、いつも驚かされるようなインスタレーションがあります。春夏シーズンの始まりは、ダイレクトメールとして送られてきた印刷物がベース。かつてコム・デ・ギャルソンが出していた雑誌「Six」がもとになっています。

「Six」は第六感、Sixth Senseの意味。「反骨精神=戦うのに最高の良い方法はクリエーションの場にあると思います。だからこそ、コム・デ・ギャルソンのエネルギー源なのです」という、コム・デ・ギャルソンの川久保玲さんのメッセージが目に飛び込んできます。言葉もビジュアルも共に強い。
ど迫力のインスタレーションには、吸い寄せられるように多くの人が見に来ていました。
会場はパリのポンピドゥーセンター内にあるIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)。階段を下りていくと、無機質な空間が現れます。今季のテーマは「GHOST」。デザイナーの森永邦彦さんは、1995年公開の押井守監督による劇場用アニメ「GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊」にオマージュを捧げました。この作品では、サイボーグの主人公が、光とコードが織りなす肌がきらめく都市へと溶け込んでいく。ランウェーでもそんな感覚が服で表現されました。



肩が大きく、まるで骨格のようにも見えるジャケットジャケットやワンピースなど、いずれもアニメの世界から出てきたような雰囲気です。服に合わせた革製の刀やスタンド、電話や花束などの小物も独創的です。
後半で登場したLEDを使ったドレスの数々は様々な柄に光り、変化します。そして最後には壁に「攻殻機動隊」の映像が映し出され、ドレスにもまるでカモフラージュ柄のように映像が映し出され、境界線が消えていくような不思議な感覚になっていきました。森永さんのLEDのドレスは回を重ねるごとに進化し、いずれは私たちの着る服の柄も自由自在に変えられるのではないか。ふと未来が見えた気がしました。
アニメの世界とこうした技術をリンクさせながら、服の世界と融合させていけるのは、日本人デザイナーならではのことかも。
text: Izumi Miyachi
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