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広瀬すずが2作目の舞台挑戦。NODA・MAP新作『華氏マイナス320°』への思い

数々の著名な監督たちから「天性の才能」と賞され、圧倒的な透明感と美しさで誰もが虜(とりこ)になってしまう俳優・広瀬すずさん。これまでは映像作品を中心に活躍してきたが、4月10日から始まる野田秀樹さんの舞台『華氏マイナス320°』に出演することとなった。自身のキャリアで2作目となる舞台で新境地を切り開いた先で得た気づき、自身の中で膨らむ今後への期待、そして美の秘訣(ひけつ)について語る。

本作は野田秀樹さん率いるNODA・MAPの第28回公演となる。2019年にNODA・MAPの「『Q』:A Night At The Kabuki」で初舞台を経験した広瀬さんは、今回、「正しくない科学に基づいた、正しくないSF(サイエンス・フェイクション)」に挑む。

── NODA・MAPの舞台にもう一度出演したいと思った決め手について、お聞かせください。

自分には舞台の表現が向いていないと思っていたので、実は舞台に関しては“やりたくない分野”だったんです。そんななか、前作では野田さんのおかげで本当に楽しく経験できましたし、映像とは違ったものを生み出す瞬間が私にとってはとにかく刺激的でした。「いつかまたNODA・MAPに出たい」と考えていただけに、「やらない」という選択肢はなかったです。

── これまでさまざまな現場を経験されてきた広瀬さんから見て、野田さんの演出ならではと感じることはありましたか? 

野田さんの舞台しか参加したことがないのでほかはわかりませんが、声の出し方から歩き方まで全部教えていただきました。舞台上での動き方や仕組みがわかってくると、「なるほど」と思うことが多かったです。

野田さんは公演中でも舞台が終わったあとに楽屋まで毎回来て、細かい部分を指導してくださいました。そのおかげで映像の表現との違いというのを明確に理解することができたんです。公演ごとに修正されていく表現があったので、今回もそれがとても楽しみです。

── 映像とは違う舞台の面白さや楽しさはどんなところですか?

その場でやったことがストレートに観客へ伝わりますし、いままで味わったことのない高揚感と公演ごとに違ったものに出会えたのはすごい経験でした。ただ、自分の声が響いて聞こえたり、観客のみんながこっちを見ていたりするので、不思議な感覚にはなりましたね。

常に温度感が高いこともあって、エネルギーが体内を巡ってから一気に放出される感覚は舞台ならではかなと。心地よい疲労感の中で旅をしながらやっているというのも楽しかったところです。

『華氏マイナス320°』 広瀬すず

── 舞台に出演してから、映像での表現にも変化があれば教えてください。

まずは、声がすごく出るようになったと思います。というのも、いままで発声とかの練習をしたことがなかったので気がつかなかったのですが、私はノドが強いことが分かって、みんなにもびっくりされました(笑)。

あとは解放的になったというか、怖いものが減ったようにも感じています。だからと言って、いままでこじんまりやっていたつもりはないですが、映像のお仕事だけしていたら得られなかった変化や全身を使って表現する“泥臭さ”みたいな楽しみを知ることができました。

── ご自身にとって、野田さんはどんな存在ですか?

向き合っている題材にも毎回衝撃を受けますが、あの発想力や表現力というのは野田さんにしかないものなので、そういったものをビシビシと浴びることができてすごく刺激的です。あとは、NODA・MAPのカンパニーのみなさんがアットホームなので、安心感がありますね。

── 本作では、阿部サダヲさんや深津絵里さんをはじめ、個性豊かで実力派の方々がたくさんいらっしゃいますが、皆さんとのお芝居で期待していることはありますか?

いまは緊張よりも楽しみのほうが強いと思います。こういうときの根性だけはあるほうなので!

初共演の方も結構多いので、その中で自分がどういうふうに存在したらいいのかを考えていますが、まだ想像が追いついていません。いろんな先輩たちの表現を生で見ることができるうれしさもありますが、私自身もがんばっていきたいです。

『華氏マイナス320°』 広瀬すず

── 役作りをするうえで意識していることや事前に準備しようと考えていることがあれば教えてください。

私がどういうふうに存在するかによって、意味がすごく変わっていきそうなので、セリフをどう言うかということよりも、距離感や温度感が難しいところです。しかも、これだけ個性のある先輩たちがいらっしゃると、全然違うことになる可能性もありますから……。稽古でみなさんの声を聞いて、どう表現されるのかを見たうえで考えていきたいです。

── 北九州や大阪だけでなく、ロンドンでの公演も控えていますが、場所によって反応はかなり違うものでしょうか。

国内でも場所によって、かなり雰囲気は変わりますね。前作でロンドンに行ったときはドリフのコントかと思うくらいウケていました(笑)。日本語のセリフがどういうふうに翻訳されているのかわかりませんが、野田さんの言葉遊びというのが海外でも通じることに驚いたのを覚えています。声の響き方とかも劇場によって違うので、どの公演もすごく新鮮な気持ちで向き合うことができました。

── ロンドン公演の際に野田さんとのシーンでは、一気にアドレナリンが全開になる経験を初めてされたとか。

そうなんです。いまでも一枚の写真のようにフラッシュバックしてくるくらい、いつもの野田さんとは違っていたのを覚えています。これこそが“まさに舞台”というか、ナマモノだなと思った瞬間です。日本語と英語のギャップがある空間の中でしか味わえないものだったと感じています。

── 舞台では特にフィジカル面のケアが大切だと思うので、実践している健康法やリラックス方法などがあれば、お聞かせください。

前回は想像以上に身体にこたえたというか、数か月かけて蓄積されていく疲労感はいまだに忘れられません。“身体が疲れる”という意味では、これまでで一番疲れた記憶があるので、ストレッチをしたり、睡眠をちゃんと取ったりして整えていきたいです。

基本的にすごく食べるタイプということもあって、食べて寝るという健康的なルーティーンを丁寧に作っていけたらいいなと。私は身体も結構強いほうですが、舞台の方々はそれ以上にタフな方が多く、特にNODA・MAPのみなさんは異次元ですごいなと思っています(笑)。

── では、美しさを保つために意識していることや続けていることと言えば?

まず大事にしているのは、「我慢しないこと」。私にとって一番のストレス発散は、何も気にせずに友達と飲んで食べることです。たくさん笑うことによって、急に健康的になった気がしてしまうほど(笑)。定期的にそういう時間を作るように心がけています。

家に帰ってくると自然とオフになりますが、私はつねにマイペース。「がんばらないときはがんばらない」という思考も大切だと思っています。

『華氏マイナス320°』 広瀬すず
ジャケット¥86,400(参考価格) パンツ¥67,200(参考価格)(ともにアヴァヴァブ/サカス ピーアール) ブーツ¥192,500(ジミー チュウ) ピアス¥246,400(片耳)(レポシ/レポシ日本橋三越本店)

── 今年で28歳となりますが、徐々に30代を意識している部分はありますか?

正直に言って、そういうことはまったくないですね。年齢にこだわりがないこともあって、自分が何歳でもいいと思っています。ただ、30代になれば人生経験も増えるので、これまで以上に演じられる女性像も世界も広がるのではないかなと。そういう意味では、すごく楽しみです。

いまはまだ20代前半に見られがちなので、それはそれでラッキーですが、30代に入ったらお芝居を通していままでとは違うものをお見せできたらいいなと考えています。

── そんななか、「第68回ブルーリボン賞」で主演女優賞を受賞された際に「2025年はずっとメラメラしていた」と振り返っていらっしゃいましたが、2026年はどんな年にしたいですか?

今年はこの舞台がメインになるので、知らない世界に飛び込む新人のような感覚で挑戦していきたいです。慣れている場所から少し離れて、先輩方に一生懸命ついていきたいと思っています。

── 仕事を続けていくうえでモチベーションの源やご自身にとっての支えとは?

大人になって、自分のお仕事を“生活”として捉えられるようになってきたときに楽しくなってきましたし、もっと責任を持って向き合いたいと考えるようにもなりました。それまでは若かったこともあって、周りに導いてもらっている感覚のほうが強かったかなと。でも、経験が増えたことで私の中にも欲が出てきたので、自分がしたいことが明確に見えてくるようになりました。

そうなったらわざわざ「私のモチベーションは何だろう?」と考えなくても、仕事が自分の一部になったような気がします。周りの人たちが自分を理解してくれることで、生活の形が出来上がっていったので、そこからは急に楽になりました。

── 今後プライベートで挑戦してみたいことがあれば、お聞かせください。

最近テニスを始めたので、もっとうまくなりたいですね。まだ1年も経たないですが、旅行先でやってみたらすごく楽しくて、帰ってきてすぐに始めました。

他にもスポーツはバスケット、バドミントン、卓球もしています。運動をしていると自分がリセットされる感覚があるので、私にとってはこれもある意味モチベーションとして自分を保ってくれている要素だと思っています。


『華氏マイナス320°』

華氏マイナス 320°
野田秀樹 率いる NODA・MAP が、2年ぶりの新作を上演。野田いわく「正しくない科学に基づいた、正しくないSF(サイエンス・フェイクション)」。化石発掘現場で見つかった“謎の骨”をめぐり、物語は現代から中世、古代へと時空を超えて展開する。

作・演出:野田秀樹
出演:阿部サダヲ、広瀬すず、深津絵里、
大倉孝二、高田聖子、川上友里、橋本さとし、野田秀樹、橋爪功

東京公演 当日券あり
2026年4月10日(金)~ 5月31日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
北九州公演 当日券あり
2026年6月6日(土)~ 6月14日(日) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
大阪公演 2026年6月14日(日)10:00 チケット一般発売
2026年7月22日(水)~ 8月2日(日) 新歌舞伎座
ロンドン公演
2026年7月2日(木)~ 7月11日(土) Sadler’s Wells Theatre

『華氏マイナス320°』

お問い合わせ先

NODA・MAP 03-6802-6681(平日11:00〜19:00) www.nodamap.com/kashi/


衣裳協力
サカス ピーアール tel: 03-6447-2762
ジミー チュウ tel: 0120-013-700
レポシ日本橋三越本店 tel: 03-6262-6677

関連情報
  • photos: Haruki Horikawa〈Office Briller〉/ styling: Akira Maruyama / make-up: Taichi Nagase〈VANITÉS〉/ interview & text: Masami Shimura

Profile

広瀬すず

1998年、静岡県生まれ。2012年にデビュー後、数々の映画・ドラマに出演。16年に映画『海街diary』で第39回日本アカデミー賞、報知映画賞やその他映画賞で数々の新人賞を受賞。17年に映画『怒り』で第40回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。数々の映画やドラマ、CMで活躍しており、19年の初舞台「『Q』:A Night At The Kabuki」初演では第54回紀伊國屋演劇賞・個人賞を最年少で受賞した。近年の主な出演作にドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』、映画『遠い山なみの光』『宝島』、Netflix「阿修羅のごとく」など多数。野田作品は「『Q』:A Night At The Kabuki」(初演/再演)に続き、2作目の出演。

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