モヤシを食べにマレーシアへ【藤﨑聡子のémoi style】
ワインジャーナリストの藤﨑聡子が送る「émoi style (エモワ スタイル)」。なるほど、これは面白そうと思わせてくれる意外な発見や情報をご紹介する連載。マレーシアへの旅は「モヤシ」がテーマ。シンプルな食材だからこそ生まれるモヤシのあり方を体験する。
ワインジャーナリストの藤﨑聡子が送る「émoi style (エモワ スタイル)」。なるほど、これは面白そうと思わせてくれる意外な発見や情報をご紹介する連載。マレーシアへの旅は「モヤシ」がテーマ。シンプルな食材だからこそ生まれるモヤシのあり方を体験する。
[INDEX]
青森・大鰐温泉モヤシは長い。30㎝前後あると思う。とある焼肉店で登場したモヤシのナムルは見たことのない太さ、大豆の大きさで驚いた。お気に入りの四川料理店で登場するサンラータンメンにトッピングされているモヤシは麺の細さに合わせている。
ちなみにこちらのモヤシは最近若干太くなった。理由を尋ねたら「この細さを生産できる農家がなくなってしまった」とのこと。モヤシってすごいふり幅がある、と思っていた時に「マレーシアにモヤシの名産地がある」ことを思い出した。クアラルンプールから列車で2時間ほどのイポーという街。 これは行って確認しなければモヤシの世界観が日本だけで終わってしまう。もったいない。ビーンスプラウトと言えば通じる食材なだけにどのように世界が食しているのか、知ることも大切である。

モヤシの街・イポーの存在を知ってから10年。ようやく訪問となった。イポーの街は駅から歩ける範囲に様々な飲食店がある。目指したのはおそらく一番の繁華街と思われるエリア。ランチ時に行ったので閑散としていたがこれは夜、かなり盛り上がるだろうなという空気が流れていた。一通り散策してみて地元の方がひっきりなしに入っていく料理店が2軒あることがわかった。モヤシを食べるためだけに来ているのだからとにかくモヤシを片っ端から食べる。そう決意しハシゴすることにした。こちらが1軒目。

こちらは2軒目。

メニュー名はともに「sprouts」。ザ・モヤシである。熱湯をかけた程度のゆで感に料理店のオリジナルソースをあえていただくスタイル。イポーのモヤシを分析するならば「短い」、「若干太い」、「食べ方は同じ」だった。イポーという街はミネラル成分のある水が豊富、その水を使用してのモヤシ栽培なのでおいしい、とされている。それは理解できた。2秒ゆでたくらい、いや、湯にくぐらせた程度に火入れしたモヤシを店舗オリジナルソースとあえるというスタイル。モヤシとソースのマリアージュである。モヤシ独特の香りが抑えられている(おそらく水の性質)のでソースと合わさりやすい。日本のモヤシだとやはり香りがあるのでそれはこのソースの邪魔になるだろうなと思った。
一方で私としては「モヤシ料理」のバリエーションが知りたかった。ゆでる、あえる、トッピング、炒める、以外にどのような味わい方があるのか。地元ならではのそれは面白い!という食し方があるのではないか、その点に期待をして突撃したのだが……それには巡り合えなかった。他にモヤシのメニューはあるか、と尋ねたら、それ(私が注文したもの)がベストだ、と教えられたほど。悔しいので、帰りがけに立ち寄ったカフェでもメニューにモヤシを発見、いちるの望みをかけた。結果は同じだった。

イポーは日帰りし、翌日クアラルンプールを観光する。すっかりモヤシ熱は冷めており何を食べようか悩みながらモスクを探検した帰り、ひっきりなしに人が入っていく料理店を見つけた。様子をうかがっていると他にも同じような料理店があるのにそこには入っていかない。これは!と思い入店し、メニューをみてモヤシを確認、周りのテーブルと同じように頼んだ。

ここで発見した料理店は牛肉麺が名物であるがモヤシ&チキンを注文しているケースが多い。それぞれ単品でも頼めるが欲張ってみた。昨日のイポーで学んだことの仕上げ、と思いそこまで期待せず食べてみる。驚いた。これは名産地のイポーをはるかに上回る出来である。
調理方法はイポーと同じだが、こちらのモヤシはモヤシそのもののおいしさが光っている。そして合わせるソースがしょうゆ系の塩気をきちんと表現していて変な甘さがない。東南アジア系の料理ってどうしてこう甘くしちゃうのかな、と思うメニューがあったりするので見た目で判断することは避けた方がよい。特にソース系は油断ならない。そう思っているからこそのソーステイスティング。これは素晴らしい。ソースもモヤシもきちんと存在感を主張している。
なんだ、イポーに行かなくてもクアラルンプールで自分の好きな味に出合えたではないか……。いや、イポーに行ったからこそわかる味わいなのだ、と自分に言い聞かせたマレーシアの旅。モヤシのアレンジメニューには巡り合えなかったけれど、それはこれからの旅先での課題としてとっておこうと思う。
information
店名:Soong Kee Beef Ball Noodle
住所:86,Jalan Tun H S Lee,50050 Kuala Lumpur Malaysia
Tel:+60-14-967-1945
photos & text: Satoko Fujisaki
・アンコールワットは早朝から活動が充実のカギ【藤﨑聡子のémoi style】
・韓国を旅するなら欲張ってはいけない【藤﨑聡子のémoi style】
藤﨑聡子

ワインジャーナリスト・撮影構成ディレクター。世界中の食とワインのペアリングについて編集者歴25年以上ならではの目線で追求し続けている。わかりやすい言葉を綴(つづ)ることで長年のファンが多い。SM Entertainmentグループの韓国を中心としたカルチャー情報サイト・PIVImではスーパーバイザーとしても活躍中。
韓国情報⇒pivim.jp
リンクを
コピーしました