【国際女性デー】2025年受賞者、中島さち子さんが目指す「ひとりひとりが輝く社会」とは。クレ・ド・ポー ボーテの「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」Vol.5
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2019年にクレ・ド・ポー ボーテが創設した「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」。特にSTEM/STEAMの領域における女子の教育に貢献している女性を毎年表彰し、寄付金を通して女性のエンパワーメントを後押ししている。2025年の受賞者である数学者でジャズピアニストの中島さち子さんは、様々な形でSTEM/STEAM領域の面白さを伝える活動に力を入れていて、4月13日に開幕する大阪・関西万博でテーマ事業プロデューサーも務める。受賞者としての思いや今後の活動について語った。(聞き手:マリ・クレールデジタル編集長 宮智 泉)
── STEM/STEAM教育に情熱を傾ける理由について教えてください。
STEM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を重視する教育で、これにARTS(芸術/リベラルアーツ)をプラスしたものがSTEAMです。
20世紀後半にインターネットが登場し、21世紀にはものを作ったり表現したりすることへのハードルが下がりました。「作ることは楽しい」という喜びや「問いを作ることの意味」をさらに表すためにARTSが加わり、STEAMになったと考えています。STEM分野に不可欠な創造的思考を養うことが非常に効果的です。
私はずっと音楽も数学も好きで、とても面白いと思ってきました。30代になって、書道家や建築家など、私とは全く異なる分野の方々と出会って、コラボレーションをしていくうちに、さらに面白さが増し、気付くこともありました。STEM/STEAMの分野に、「作ること」と「つながること」のふたつの要素が大切だということです。
私自身は器用でもないし、実験も苦手。でも、上手下手、得意不得意に関係なく、時にはできなかったりすることも面白がること。こうした思想を大事にしたいと思っています。数学者や芸術家、スポーツ選手だって、みんな一緒です。ARTSの要素が入ってくることでもっとわくわくする。STEAMの背景にある思想は重要で、いろいろな可能性を引き出すことができ、社会を変えていく力があると考えて、活動に力を入れています。
── 日本の現状はいかがでしょうか。
既存の日本の学校教育における科学や技術は、何かを生み出すことよりは「正解を学ぶ」、つまり最初から正解ありきで、知ることに重点が置かれてきました。一方、STEM/STEAM教育は正解がわからないものを作ってみようという考え方が重視されていますが、日本では、STEM/STEAM教育の思想よりも、「正しい定義」にこだわりすぎ、「真面目に」捉えすぎているようにも感じます。
でも、海外では楽しいものとして捉えられているのです。「プレイフル(遊び心のある)」や「キュリオシティー(好奇心)」などという言葉が頻繁に使われ、失敗してもいい環境や遊び場なども作られており、楽しさの中から何かを生み出していくことに意義があるのだと捉えられています。
── 2024年10月2日、国際ガールズデーを記念して、クレ・ド・ポー ボーテが米国版「マリ・クレール」と共催したイベントがニューヨークで行われました。中島さんは2025年の受賞者として出席されましたが、ここでの体験はご自身に何をもたらしましたか。
「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」で2024年受賞者、レシュマ・サウジャニさんと
実は2018年から20年までニューヨークで娘と生活したことがあります。その時に感じたのは、みんなが立場に関係なく、それぞれに考えたことを話す。お互いにリスペクトがあり、そのうえで深い話やディスカッションができる。多様性があるから実現することであり、すばらしいと感じていました。
今回イベントに参加して、あらためてそのすばらしさを体感し、とても刺激を受けました。
登壇された方も参加者もみんなパワフル。STEMや女性のエンパワーメントを中心に活動しているインフルエンサーも多かったのですが、自分の意見もしっかり持っており、圧倒されるような存在感でした。でも、それだけではありません。パワフルでありながら、それぞれが弱さについて語ったことが強く心に残りました。
「私はマイノリティーだった」「女性だからこう言われた」「幼いころは貧しかった」など。それに加えて、逆境をどのように考え、どう乗り越え、どう生きるかまで語り、それがみんなを鼓舞する強力なメッセージになっており、ものすごいエネルギーをもらいました。
── 弱さを語ることは、日本であまりなじみがありません。
日本ではこうした雰囲気を作りづらい空気があります。弱さを見せないのを良しとしているところもあります。もちろん、日本には日本の良さがあり、「言わないからこそいい」ということもたくさんあるでしょう。ただ、日本では、教育的にも文化的にも、自分の考えを自分の言葉で伝える訓練をあまり受けていません。弱さをさらけ出すこともない。ですから、当たり障りなく、先生に褒められるような優等生的な回答だけでなく、意見を活発に交わせる環境づくりが大切だと考えています。
また、弱いからといって、弱々しくしている必要はないのです。弱さを語るとき、その人らしくあればいい。謙虚さは大切ですが、結果として自分の言いたいことが言えなくなる状況は、マジョリティー(多数派)だけが強くなることです。さまざまな活動を通して、こうした社会に変化をもたらしたいのです。
── 2025年の「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」の受賞者として、今後どのようなことに取り組まれる予定でしょうか。
2024年の受賞者、レシュマ・サウジャニさんはパワー・オブ・ラディアンス・アワードとの共催で、「20 under 20」というコンテストを行いました。アメリカでも20歳になるまでの若い女の子がSTEM分野での学習を諦めてしまうことが多いため、STEMに関わる若い子たちがやりたいことを膨らませるためにクレ・ド・ポー ボーテの先端研究施設や研究員からのメンターシップ、助成金などや特別なプログラム提供がありました。ニューヨークのイベントでは、ファイナリストたちのプレゼンテーション動画を見ましたが、そのエネルギッシュな姿に圧倒され、刺激を受け、今回は日本でSTEM分野に興味がある女の子たちを応援するという目的のコンテスト「STEAM Girls Award~探究心と創造力で『好き』を発見、可能性の鍵を解き放つ。~」を開催する予定です。
日本は、OECD諸国の中で科学技術分野における女性研究者の割合が最下位です。数学や科学などを学ぶ女の子もまだまだ少ないのが現状です。「数学が好きだったけれど、親に言われて諦めざるを得なかった」「地方で就職できない」「STEM分野に進学したけれど、あまりにマイノリティーで、途中でその道を諦めた」などの声をよく聞きます。科学や数学を面白いと思う気持ちを持ち続け、自分なりの人生を築いていけるような社会にしていくには、幼いころからいろんな人と出会ったり、何かを生み出す場があったりすることが必要です。
コンテストをある種のメディアと捉え、活用したいと思っています。見た人がまた自分も何かやってみたいと思ったり、発見したり。コンテストは結果がすべてではありません。プロセスも重要です。また、評価軸はひとつではありません。「こんなアイデアがあるんだ」とか「なるほど」と思えるようなものがいくつも見えると、自分でももっと何かに取り組んでみようという気持ちになります。面白いと思うことを語る場も作ろうと計画しています。
── 中島さんは、4月13日に開幕する大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーも務められています。どんなことを伝えようと考えていますか。
これまで「創造性の民主化」をずっと訴えてきました。「創る喜びをすべての人に」ということです。今回、テーマ事業プロデューサーとしてシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」をプロデュースしていますが、中では、いろいろな魔法のSTEAM遊びや体験、多様な出会いができるようなしかけを作っています。ワークショップやライブも行います。私が作っているという感じではなく、関わってくれている多くの人たち、そして万博に来る人たちも含めて、「作り手」になり、何かを感じ、次のステップにつながるような場にしたいと思います。
── 3月8日は国際女性デーです。メッセージをお願いします。
すべての人は芸術家であり、研究者であり、発明家だと思っています。つまり、それだけ人は多様なのです。20世紀は大国や大企業をはじめ、「大きな」組織などが新しいものを生み出してきました。21世紀は技術革新と共に、みんなが多様な個性を発揮し、自分なりの未来のかけらを生み出せる可能性が膨らんでいます。さらにAIも劇的に成長しています。多様ないのちの輝き、まさしく「パワー・オブ・ラディアンス」が発揮できる未来社会を作っていきたい。そのためにひとりひとりの輝きを大切にしていく。未来社会を作るのは、私たちひとりひとりなのですから。
Profile中島さち子 1979年大阪生まれ。内閣府STEM Girls Ambassador(理工系女子応援大使) 。国際数学オリンピック金メダリスト。数学研究者・STEAM教育者。大阪・関西万博テーマ事業「いのちを高める」プロデューサー。 New York University Tisch School of the Arts, Interactive Telecommunications Program(メディアアート)修士。東京大学理学部にて数学を専攻しつつジャズに出会い、一転、音楽の道へ。音楽・数学と並行して株式会社steAmや一般社団法人steAm BANDを立ち上げ、多様な「好き」を基軸にしたSTEAM教育を推進。東京大学大学院数理科学研究科や明治大学MIMS(先端数理科学インスティテュート)にて数理・芸術学際研究に携わる。