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コム・デ・ギャルソンな一日【マリ・クレールデジタル編集長のパリコレ日記】

2025年春夏パリコレクションが9月23日から10月1日まで開催されました。ファッションショーやプレゼンテーション、イベントなど盛りだくさん。ファッションのことだけでなく、街で見かけた気になること、パリらしいものなどをお伝えします。今回はDAY 6。

パワフルな「ジュンヤ ワタナベ」

パリコレ期間中の土曜日といえば、コム・デ・ギャルソンデー。日本のコム・デ・ギャルソン傘下のブランドが3つ登場し、パリコレらしさが感じられ、エネルギッシュな一日となります。

朝いちばんはいつも「ジュンヤ ワタナベ」。コレクションノートに記された渡辺淳弥の言葉によれば、「日常にアブノーマルな服も必要だと感じます。それらは日常のモダンな材料をアップサイクルすることと造形的なテクニックで作られています」。よく見ると「DEGNER」の文字が目立つところについた服も。京都の老舗バイク用品メーカー「DEGNER」の素材をアップサイクルしているよう。「日常のモダンな材料」とは、工事現場やバイクなどで使われる機能的で丈夫な材料のことだったようです。

シルバーがメインカラーで、いつもどこかロックな感じのジュンヤワタナベの服は確かにアブノーマルであり、美しかった。

黒を引き立たせる赤「ノワール ケイ ニノミヤ」

「ノワール ケイ ニノミヤ」も毎回何が出てくるか、とても期待してしまうブランド。ほかのどこにもない、考えようもない服を出してくるからです。

今回のコレクションノートによれば、「DARK ROSE 」がキーワードらしい。「そのイメージやメッセージなどをコレクションで表現。赤をアクセントに黒を引き立たせ、ミステリアスでロマンティックなシェープ、素材を探求しました」とありました。

短い黒のジャケットをたくさんのサスペンダーのクリップエンドでつないだボトムス。その間から見える赤もあれば、真っ赤なドレスや、暗い赤のバラに覆われたドレスも。常識的な「服」というものから解き放たれた「ノワール ケイ ニノミヤ」の服を見ると、人間の創造力に限りはないと、いつも思ってしまいます。

言語化できない「コム・デ・ギャルソン」

下町っぽい雰囲気が残る12区でのショー。毎回どんな服がでてくるか、想像もつきません。それがパリコレらしさを作っているのかもしれません。

コレクションノートでは「不確実な将来 世界で起こっている様々なことに対する空気と透明性で立ち向かうことはある種の希望を意味するかもしれない。それを表現する素材として透明感のある素材を使用しました」とありましたが、ファーストルックに度肝を抜かれました。モデルの動きから見ても、とても硬そうな素材です。布にアクリルでコーティングしたものです。チュールなど下が透けて見える素材も多用しており、その下に重ねているプリントの柄が血だったり、環境問題、人権の問題をとらえた写真のプリントだったり。これが今、世界で起きていること。

登場した服は容易に言語化できません。「スカート」とか「ジャケット」などと単純に表現できる服ではありませんし、普通に着られる服でもありません。「何なのだろう、これは」という思いが頭の中をぐるぐると巡ります。見る人たちの心を揺さぶる。その揺さぶられ方も人それぞれ。それがデザイナー川久保玲さんのメッセージなのでしょう。

ダークな美しさ「マックイーン」

会場はセーヌ川沿いの左岸にある国立美術学校。荘厳な雰囲気の建物に入るのは久しぶりです。きれいなタイルの床がランウェーの部分だけ崩されています。そこにスモークがたかれてショーが始まりました。

クリエイティブ・ディレクターに就任して2シーズン目のショーン・マクギアーはアイルランド出身。その彼がテーマに選んだのは「バンシー」。アイルランドの妖精で、死が近い人の家に現れるという言い伝えがあります。

「バンシーはマックイーンの歴史に根ざした存在ですが、私にとっても幼少期からなじみ深い物語でもあり、個人的な思い入れがあります。アイルランドで母がこの孤独で不吉な人物の叫び声を描写した話をしていたのを覚えています。私にとって、バンシーは今や現実的で強力な存在を象徴するようになりました。感情豊かで率直な人物、導き手と見なされる人物という概念です」というのがクリエイティブ・ディレクターの言葉。

亡くなったアレキサンダー・マックイーンが作ったこのブランドは、常に美しいテーラリングとともにどこか闇を感じさせる服という印象があります。

今回のショーでは、英国のテーラリングを覆すようなシャープなスーツのほか、きゃしゃで繊細なドレス、そして最後はシルバーのスパンコールなどに全身覆われたボディースーツ。亡くなったアレキサンダー・マックイーンのテーラリングとどこか闇を抱えた美しさ。その要素が継承されていました。

歩くのが楽しみなパサージュ

さて、パリの街は渋滞が多く、車に乗ってショー会場に向かったものの、渋滞に巻き込まれて焦るということがしばしばあります。そのため移動はもっぱら地下鉄で、あとは歩き。パリの街は地域によって雰囲気も香りも違います。ですので、できるだけ同じ道を通らないのが私の主義。特に近くにパサージュがあるときには、必ずと言っていいほど通り抜けることにしています。

パサージュとは、18世紀末頃から増えていったアーケードのことで、両側にお店が立ち並び、ガラスなどの天井が特徴的です。詳細は仏文学者の鹿島茂さんの「パリのパサージュ 過ぎ去った夢の痕跡」(中公文庫)が面白いので、ぜひお読みください。

私がパリに行くたびに立ち寄るのは「ギャルリー・ヴィヴィエンヌ」(写真左)。デザイナーの高田賢三さんが初めてブティックを開いた場所です。

それぞれにデザインも雰囲気も異なり、ちょっとタイムトラベルした気分にもなります。

text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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