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時代の先を行くブランドは面白い【マリ・クレールデジタル編集長のパリコレ日記】

2025年春夏パリコレクションが9月23日から10月1日まで開催されました。ファッションショーやプレゼンテーション、イベントなど盛りだくさん。ファッションのことだけでなく、街で見かけた気になること、パリらしいものなどをお伝えします。ばたばたしていてだいぶ遅れてしまいましたが、今回はDAY 5。

夏のギリシャに行きたくなった「レオナール」

2025年春夏シーズンのテーマは「HELIOS」。ギリシャ神話の「太陽の神」です。1960~70年代のグラマラスな女性たちへのオマージュとしてデザインされたコレクションは、刺すほどの日差しの中に映えるような鮮やかなプリントと、美しいドレープが施されたドレスが中心。地中海の風をはらんで揺れるドレスを着て歩けば、道行く人が振り向きそうな雰囲気で、どんどん気温が下がっていったパリで見ていると、夏のギリシャに行きたくなりました。

軽やかで、時代の先を行く「ロエベ」

会場はパリの東にあるヴァンセンヌ城です。歴史ある場所で、ロエベのクリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソンが披露するのは、いつも時代の先を行くコレクション。入り口の壁は楽譜のプリントで覆われています。今回は何がでてくるのか、またまた期待です。

ファーストルックから驚かされました。プリントのドレスの数々。骨組みによって、シルエットが形作られています。すぐに思い浮かべたのが、19世紀のクリノリンスタイル。鯨のひげなどを使ってスカートを膨らませたスタイルです。でも、異なるのは、すべてが軽やかだということ。モデルの歩きに合わせて揺れる軽やかなスタイルは、19世紀の女性たちが見たらうらやましいと思うかも。ほかにもワイヤーを使っているのか、すそがめくれ上がっているコートなど。また、羽根で覆われたシャツにプリントされたモーツァルトやショパンの肖像画のほか、ゴッホの「ひまわり」やマネの「笛を吹く少年」など、名作曲家や名画をこうした形で使っているのも面白い。ちなみにラストは、モデルの胸元にバッハが登場していました。

イッセイミヤケのDNAが進化した「イッセイミヤケ」

パリ花公園内にある、自然の光あふれるパビリオンが会場。入ると、「なんだろう」と思う丸太の切り株のような白い塊があちこちに。招待客はみんなじっと見たり、触ったり。表面は年輪のようにも見えます。実はスツールで、イッセイミヤケで行われているプリーツ加工の副産物である薄い紙の塊を再利用したもの。工程に必要なこの薄紙は、加工後にリサイクルするために、機械に入れて円柱形に圧縮していますが、その形を生かして一定の高さに裁断してスツールにしたのだそうです。

コレクションのテーマは「The Beauty of Paper(紙の美しさ)」。和紙を中心とした紙にまつわる素材に着目。「視て触って気付く質感から感情に及ぼす影響までの、紙がもたらす感覚を探り直しています。紙にふれる際に感じる心地よさは何に基づき、またどのような形で 伝わってくるのでしょう。そんな問いをめぐり、紙の歴史、つくり方、また紙による手仕事についてリサーチし、服づくりに落とし込むように、発想を膨らませた多様なスタディに取り組みました」とリリースに書いてありました。

和紙を使ったコートやパンツ、ヘンプ(大麻繊維)を100%使ったシリーズに、2着を同時に編むという、無縫製ニットの新たな技法に挑戦したニットシリーズ・・・。時に透明感、時に躍動感あふれ、見る側の心が躍る服の数々は、先端の技術等も取り込みながらも、どこか素朴な作り手の温かさが感じられます。それを確実に形にしていくために地道にコツコツ研究を続けるデザイナーの近藤悟史さんとチームのみなさん。ポエティックでもあり、ユーモアも隠し味という、イッセイミヤケのDNAが一本の線でつながり、進化していることを確認するショーでもありました。

黒と赤のセンシュアルな「ヨウジヤマモト」

ヨウジヤマモト パリ市庁舎

巨大なシャンデリアがある荘厳な雰囲気の会場。ここはパリ市庁舎内です。毎回、ここにくるたびにその美しさに感動してしまいます。こうした歴史的な建物で、ルールや常識を壊しながら美しさを生み出していくという服作りを続けるブランドと、歴史を積み重ねてきた建物の組み合わせが調和する。これもまたパリコレなのでしょう。

生のピアノ演奏が流れる中、目に留まったのは黒の中の赤。黒の服に赤のストラップが効いています。黒に赤が入ってくることでセンシュアルさが際立ちます。無造作に布を結んだり、布片をつないだりしたようなドレスの間から見え隠れする肌。どこかけだるさと妖しさが絶妙なバランスで表現された服がヨウジヤマモトなのでしょう。こうした服を見ながら、ふと耳を澄ますと、ピアノによる演奏はイルカの「なごり雪」だったりして。それにしても流れるようなドレープのドレスはいつ見ても美しい。

道の名前の表示が多言語で

パリ ラペ通り

ショー会場からの移動中、見つけたのがこの表示。オペラ座近くのRue de la Paixで見つけました。「paix」とはフランス語で「平和」の意。いくつもの言語で表示されていました。ヨーロッパにいると、ロシアもウクライナも、イスラエルもパレスチナもレバノンも、紛争地域が近くにあるのだと実感します。このことばの意味も重く感じます。

text: 宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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