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カンヌ国際映画祭に足跡を残した女性監督たち

Stephane Cardinale - Corbis / Getty Images

2024年5月14日(現地時間)に開幕した第77回カンヌ国際映画祭。是枝裕和監督が審査員に選ばれたことで日本でも話題を呼んだが、今回、審査員長を務めるのは映画『バービー』を世界的に大ヒットさせたグレタ・ガーウィグ監督。女性監督としてはジェーン・カンピオンに次いで2人目のことだそう。そこで約80年のカンヌ国際映画祭の歴史における、女性監督の活躍を振り返ってみた。マリ・クレール インターナショナルのフランス版デジタル記事よりお届け。

1993年、ジェーン・カンピオン(70歳)がカンヌ国際映画祭の最高の栄誉であるパルムドールを受賞。以来、フランス人女性のジュリア・デュクルノー(40歳)とジュスティーヌ・トリエ(45歳)という2人の女性監督が続いている。オフィシャル・コンペティション部門において、女性はまだ少数派だが、クロワゼット(カンヌ国際映画祭はラ・クロワゼット大通りで行われる ※編集部注)では多くの女性監督が名をあげてきた。

2024年、カンヌ国際映画祭のオフィシャル・コンペティション部門に選出された女性監督作品はわずか4本。しかし昨年は、7人の女性監督がパルムドールを競うという新記録が樹立された。

とはいえ、約80年にわたり、多くの女性が作品、ビジョン、そしてお気に入りのテーマで、クロワゼットにその名を刻んできた。フランス人、アメリカ人、イタリア人、日本人……。ここでは、第7芸術(フランス語で映画のこと ※編集部注)の祭典と切っても切り離せない女性監督たちを紹介する。

ジェーン・カンピオン、ジュリア・デュクルノー、ジュスティーヌ・トリエ:3人のパルムドール受賞者

ジェーン・カンピオン

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彼女は1993年『ピアノ・レッスン』で、中国のチェン・カイコー監督作『さらば、わが愛/覇王別姫』と並んでパルムドールを受賞した初の監督である。(女性監督として、またニュージーランド出身の映画監督として初 ※編集部注)この作品は斬新なリリシズム(抒情性)で観客を魅了し、アカデミー賞脚本賞も受賞した。

監督、プロデューサー、脚本家である彼女は、その多彩でパーソナルな世界観が、映画界で高く評価されている。2009年、イギリスの詩人ジョン・キーツの晩年を描いた『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』で再びカンヌに登場。2014年には審査員長を務めた。

ジュリア・デュクルノー

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ジュリア・デュクルノー監督は、彼女にとって2作目となる長編ホラー映画『TITANE /チタン』で、パルムドールを受賞した2人目の女性監督となった。2021年に発表された、このフランス人監督の衝撃的な作品は、クロワゼットを震撼(しんかん)させ、人々は気分が悪くなったり嘔吐(おうと)したりした。好むと好まざるとにかかわらず、ちまたの話題をさらったのである。

ラ・フェミス(フランスの映像・音響専門のグランゼコール)の卒業生でもある、この若い監督は、実験的かつ挑発的で、型にはまらない。彼女の処女作である『RAW〜少女のめざめ〜』は、カニバリズム(人間が人間を食べる行為)とティーンエイジャーをテーマにした作品で、2016年、すでに映画祭に衝撃を与えていた(カンヌ国際映画批評家週間で国際映画批評家連盟賞を受賞 ※編集部注)。2023年には審査員を務めている。

ジュスティーヌ・トリエ

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2019年、コンペティション部門に『愛欲のセラピー』を出品したフランス人監督ジュスティーヌ・トリエは、2023年5月、ザンドラ・ヒュラー主演の心ゆさぶる法廷映画『落下の解剖学』で、オフィシャル・セレクション部門に戻ってきた。

そして2023年5月27日、彼女はパルムドールを受賞した3人目の女性監督かつ2人目のフランス人女性となった。同作品は満場一致で批評家に絶賛され、国際的にも評価が高い。ゴールデングローブ賞とアカデミー賞にノミネートされ、2024年、ともに脚本賞を獲得している。

この監督は自身の映画作品リストを通して、常に複雑な女性キャラクターをスクリーンに登場させてきた。それらをレティシア・ドッシュ(『シンプルな情熱』)、ヴィルジニー・エフィラ(『愛欲のセラピー』)、ザンドラ・ヒュラーらが演じ、成功を収めている。

仏誌『マリ・クレール』のインタビューで、彼女はこのタイプのキャラクターへの興味について、こう説明している。「これらのヒロインたちは、自分に必要なスペースと時間を持っています。そして、そうすることに罪を感じていません。私は家庭を持って以来、この生き方がいいものだと自分にも他人にも言ってきました。私の意見ですが、母は完全にいいなりになる人で、一方、祖母は偉大なフェミニストだった。私はそういう家族のパターンの上に成り立っているのです」

アリーチェ・ロルヴァケル

イタリアのアリーチェ・ロルヴァケル監督(43歳)の映画『夏をゆく人々』(2014年)は、ときに困難な養蜂家一家の生活を年代記で繊細に描いている。詩的で、情熱のこもったこの作品は、群を抜く才能を持つ映画作家によるものであり、上映された年に審査員長だった女性監督ジェーン・カンピオンの世界を彷彿(ほうふつ)とさせる。

映画撮影の遺産ともいえるこの作品は、コンペティション部門の受賞作を選ぶ際の議論を白熱させた(コンペティション部門における第2の賞、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞 ※編集部注)。彼女の才能を否定することはできない。2018年には『幸福なラザロ』で脚本賞を受賞し、2019年には審査員を務めた。2023年には『La Chimera(原題)』を発表するために、イギリス人俳優ジョシュ・オコナーとともにクロワゼットに戻ってきた。

アンドレア・アーノルド

2009年、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『フィッシュ・タンク』でその名を知られるようになったイギリス人監督・脚本家、アンドレア・アーノルド(63歳)。彼女はしばしばイギリスのケン・ローチ監督と比較される。そんな彼女の映画は、イギリスの労働者階級の暴力と社会的苦悩をある種、官能的かつ繊細に描いている。

2016年、彼女の母国イギリス以外で初めて撮影した『アメリカン・ハニー』を発表し、3度目の審査員賞を受賞した(2006年『Red Road』でも審査員賞を受賞している ※編集部注)。2021年、「ある視点」部門の審査員長としてカンヌに戻り、2024年5月、今回はキャストのフランツ・ロゴフスキ、バリー・コーガンとともに新作『Bird』を発表した。

ソフィア・コッポラ

2006年のカンヌ国際映画祭で『マリー・アントワネット』を発表したとき、ソフィア・コッポラ監督(53歳)はキルスティン・ダンスト主演の『ヴァージン・スーサイズ』(1999)や『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)の監督を務めた後で、すでに名をはせていた。高度に美的化した王妃マリー・アントワネットの世界の映画バージョンを提供するという彼女の計画は野心的と見なされ、実際、この映画は上映後にブーイングを浴びた。

一方で、カルト的な人気を獲得することとなったこの映画の製作・撮影で、この監督を優秀だと感じた人もいた。2017年に発表した『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(キルスティン・ダンスト、ニコール・キッドマン、エル・ファニング出演)は南北戦争のさなか、寄宿制の女子校での禁じられた情熱を描いた物語で、監督賞を受賞している(女性監督として史上2人目のことだった ※編集部注)。

アニエス・ジャウイ

熱心で自由奔放な監督で、映画界における平等性の欠如を何度も非難してきた「Le Collectif 50/50」のメンバーでもあるアニエス・ジャウイ(59歳)は、セザール賞(脚本賞)を筆頭に数々の賞を受賞している。2004年、映画『みんな誰かの愛しい人』で、かつてのパートナーであり共同脚本家でもあったジャン=ピエール・バクリとともにカンヌの大階段をのぼり、2人は脚本賞を受賞した。

彼女の作品は、ブルジョワでインテリな自身の社会環境から始まり、社会的な問題に惜しみなく取り組んでいる。2008年には『Parlez-moi de la pluie(原題)』、2013年には『Au bout du conte(同)』を発表した。

translation & adaptation: Akiko Eguchi

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