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ミレーの絵が思い浮かんだ 山梨の食を生む人々の実直さ【三澤彩奈のワインのある暮らし】

「甲州」とのハーモニー 前菜も魚料理も

甲州という代表的なブドウ品種を持てたことも、ワイン県やまなしの位置づけを明瞭なものにしています。お食事のコースが始まると、前菜一皿目の天野洋喜氏(忍野八洲=忍野村)の「鮑の煮貝と葉牛蒡の色々」に合わせて『アルガブランカ・ヴィニャル・イセハラ2014』が提供されました。

前菜一皿目

前菜二皿目は山田真治氏(キュイエット=韮崎市)による「中村農場甲斐路シャモと小松菜のショーフロワ」。『ソレイユ千野甲州2019』が素材の力を引き立てます。

前菜二皿目

岩澤尚也氏(いづ屋=山梨市)作の三皿目の前菜「筍真薯の薄葛椀」には、『かざま甲州やや甘口2021』を合わせ、続く魚料理は、鈴木信作氏(Terroir愛と胃袋=北杜市)の「八ヶ岳湧水岩魚の桜蒸しファーム稲葉、山羊ミルクソース」。前菜から魚料理まで甲州で通そうと合わせていただいたのは、当ワイナリーの『三澤甲州2020』でした。

魚料理

肉料理は、豊島雅也氏(Toyoshima=富士河口湖町)による「2週間熟成鹿のパイ包み スプリング」。『ルバイヤート・プティヴェルド2018』を合わせ、最後は、堀内浩平氏(開店準備中)によるデザート「クレープで巻いたローズゼラニウムのパルフェ よつぼしとホワイトチョコレート」と、この日唯一の日本酒『七賢・アランデュカス・スパークリングサケ』で締めくくりました。

肉料理

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山梨のレストランで風土も味わって

会場では、五味丈美氏、長谷部賢氏、鈴木忍氏、飯嶋和也氏、堀内茂一郎氏ら山梨所縁のソムリエたちが手際よくサービスを進め、お料理やワインを盛り立ててくださいました。料理人もソムリエも、本業の側ら農業に携わっていることを知り、ふと、山梨県立美術館が所有するジャン=フランソワ・ミレーの絵に描かれた農民の姿が脳裏に浮かびました。農業が身近だったからなのか、子供の頃どの絵画よりも親しみを覚えた作品でした。

山梨県出身の作家、山本周五郎の物語には、地方に暮らす私たちの心に響く人情が溢れています。春の名所となっている勝沼ぶどう郷駅の線路沿いの桜の樹も、町の景観を守ろうとした地元の有志たちによって植えられたもの。山梨の食やワインの世界も同様に、地に足をつけた生き方が根付いていることを実感しました。

果樹栽培が盛んな山梨。サクランボはそろそろ終わり、これから桃、スモモ、そしてブドウが始まります。多くのお客様で賑わう季節でもありますが、是非山梨のレストランにも足を運んでみてください。

Profile

中央葡萄酒株式会社 栽培醸造責任者 三澤彩奈さん

山梨県の中央葡萄酒4代目オーナーの長女として生まれる。ボルドー大学ワイン醸造学部を卒業し「フランス栽培醸造上級技術者」の資格を取得。2007年に中央葡萄酒の醸造責任者に就任。栽培と醸造に取り組む。 2014年に世界的ワインコンクール「デキャンター・ワールドワイン・アワード」の金賞を日本で初めて受賞。甲州ワインの名を世界に。「グレイスワイン」は海外で最も飲まれる日本ワインに成長。2021年11月、「甲州」の新たな魅力を引き出した「三澤甲州2020」を発売。
「グレイスワイン」のウェブサイトはこちら

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