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持続可能なリゾート運営のためにできること。星野リゾートが取り組む環境経営とは?

軽井沢星野エリアには2か所の水力発電所があり、大半の電力をまかなう

経営ビジョンとして「環境経営」を大きな柱に掲げる星野リゾート。その創業の地である「星のや軽井沢」でも、ゴミの資源化100%を目指す「ゼロエミッション」、施設内で使う電力をできるだけ自給する「自然エネルギーの活用」、そして自然を守りながら観光資源として活用する「エコツーリズム」に取り組む。「それは特別なことではなく、持続可能なリゾート運営を行っていくために欠かせない大切な要素」と星野リゾートの星野佳路代表は話す。他施設でも地域の実情に合わせ、独自の活動を行っている。その取り組みの実際を見てみよう。

ゼロエミッション

施設内で出るゴミは28種類に分別される。それらを個別に再資源化しやすくするための取り組みだ。2011年には、それらすべてのゴミのリサイクル方法や業者が見つかり、ホテル業界初の再資源化100%を達成している。

生ゴミの堆肥化では、生ゴミに紙片や金属が交ざっていないか、スタッフが直接選り分ける

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施設でのサービスにも気を配っている。例えば、結婚披露宴で出される料理。同じメニュー、同じ量という業界の常識を覆し、参列者が着席した際に、和食か洋食を選んだり、希望する分量を伝えたりできるようにした。そうすることで生ゴミの削減だけでなく、顧客満足度の向上にもつながったという。

プラスチックゴミの削減を図り、客室ではペットボトルではなく、何度も使えるジャグに入れて飲料水を提供

「客室に備えるアメニティ類についても見直していきたい」と星野代表。アメニティごみ削減のため、19年より順次ソープ類の個包装を止め、現在では国内の全宿泊施設でボトルポンプ式を採用。プラスチックゴミなどの削減を目的に、将来的に使い捨ての歯ブラシをなくし、愛用の歯ブラシ持参を呼びかけ、希望者に良質な歯ブラシを販売することも検討中だ。

自然エネルギーの活用

「星のや軽井沢」の前身となる星野温泉旅館の開業直後から水力発電を開始し、その後、自力で水力発電所を設け、電力の約8割を自給してきた。「自然エネルギーの活用」は施設のDNAでもある。さらに温泉の排湯熱と地中熱を組み合わせ、ヒートポンプで活用している。こうすることで「星のや軽井沢」では、厨房のプロパンガスと自動車のガソリンを除き、化石燃料を一切使っていないという。

1931年に完成した水力発電所。左から2番目が3代目星野嘉助。発電所の設計から工事まで自ら手がけた

エコツーリズム

自然を守りながら観光資源として活用する取り組みも、星野リゾートが大切にしている「レガシー」と言ってもいいだろう。星野代表の祖父に当たる星野嘉助が「日本野鳥の会」創設者で歌人の中西悟堂に弟子入りした縁で、野鳥観察を通して森林保護に取り組んだ。

日本でエコツーリズムを行うため、星野代表が「野鳥研究室」を1992年に設置した。その後「ピッキオ」と改称し、軽井沢星野エリアに隣接する「国設軽井沢野鳥の森」をメインフィールドに、「空飛ぶムササビウォッチング」などのツアーを実施。加えて、軽井沢町から委託され、ツキノワグマの保護管理事業にも取り組んでいる。

「ピッキオ」が企画した「空飛ぶムササビウォッチング」は、外国人宿泊客の人気も高い

もちろん、他施設でも持続可能なリゾート運営のために、地域の実情に合わせて活動を行っている。「星のや竹富島」(沖縄県)では、水源が限られている島との共存を図っていこうと、昨年から海水を淡水化して飲料水として自給。「星野リゾート 西表島ホテル」(同)でも、イリオモテヤマネコの保護活動などを通し、日本初の「エコツーリズムリゾート」を目指している。

「西表島ホテル」では、様々なエコツーリズムに力を入れている

こうした環境面での取り組みについて、星野代表は「特別なことをしているつもりはありません」と話す。「経済的な価値を創造しながら、社会的なニーズに応えていくことは地域の魅力を発信するリゾート施設として当たり前のこと。サステナブルなリゾート運営を行うために、地域の自然環境を次世代に受け継いでいく取り組みは欠かすことができません」

「施設が自然と共生していることがリゾート運営の大切な要素」と話す星野代表

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お問い合わせ先

星野リゾート www.hoshinoresorts.com/aboutus/sdgs/

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Profile

高橋直彦

『マリ・クレール』副編集長。星野リゾートの取り組む環境経営は、「ラグジュアリー」と「サスティナビリティー」が矛盾しないことを教えてくれる。施設のある地域の「日常」を徹底して守ることが、宿泊客のための「非日常」の演出にもつながっていく。

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