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ポーランドの国立バレエ団で最高位ダンサーを務めた海老原由佳さんが、大阪・関西万博「ウーマンズパビリオン」に登壇!

国内・海外180以上のパビリオンが出展し、連日大きな盛り上がりを見せている2025年大阪・関西万博も、いよいよ終盤戦に。10月13日の閉幕まで、まだまだ多彩なイベントも予定されている。今回は、ポーランドパビリオンのアンバサダーを務める日本人バレエダンサー・海老原由佳さんにお話をうかがった。

海老原由佳 ウーマンズ パビリオン
Photo: A.Stykowski/PAIH

ポーランドパビリオンのアンバサダーに就任

海老原由佳さんは、ポーランド国立バレエ団で長年主席ソリストとして活躍し、2020年にはカンパニー初で唯一のプリンシパル(最高位ダンサー)バレリーナに任命されたポーランドでも著名なバレリーナだ。

ポーランドパビリオン・アンバサダーとして活動するため一時帰国中の彼女が、「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」に登壇した。女性たちの体験や視点を通じ、公平で持続可能な未来を志すことを呼びかけているこちらのパビリオンで語られた、バレエ人生を通じた海老原さんの特別なストーリー。その一部を、「マリ・クレール」にも語ってくれた。

まずは今回、ポーランドパビリオンのアンバサダーを引き受けた経緯は?

「昨年12月に現役を引退した後、ポーランドの投資・貿易庁の方から万博のお話をいただきました。日本人がポーランドで13年間も踊っていたこと自体が珍しく、国立バレエ団のトップとして、引退公演もたいへん盛大に行っていただきました。声をかけてくださった投資・貿易庁の方も、ファンとして私の踊りを見てくださっていたようで、今回のアンバサダーという大役につながったのだと思います」

海老原由佳

カンパニーで唯一のアジア人が、トップを取る快挙

海老原さんがポーランドで活動をスタートした14年前、それまでカンパニー(バレエ団)にアジア人は一人もいませんでした。

「日本を出てからは約20年になるのですが、それまでイギリスやフランスでも踊ってきました。最初は小さなカンパニーで踊って、そこでトップを取ったらもっと大きなカンパニーに移って、という形で転々としていたので、ポーランドでも同じようにするつもりだったんです。しかし、いろんな役を任されて踊っていくうちにレパートリーにも恵まれて、2年後にはファーストソリストになりました。一番下から上っていったこの2年間は、何で日本人が!といったように、風当たりももちろん強かったですね。けれど、監督をはじめ努力を認めてくださる方がいたことが、大きな喜びになりました」

彼女が切り拓いた道に続くように、ポーランド国立バレエ団だけでなくポーランド国内の様々なカンパニーに所属する日本人ダンサーの数は、年々増えているそう。

「私がこれほど長くポーランドでやってこれた理由を客観的に分析してみると、日本人とポーランド人の感性が、深いところで似ているからかもしれません。また、日本人は感情表現が繊細で、踊りは軽やかで蝶々(ちょうちょう)のようだと形容されることもあります。私についていえば、長年の海外生活で培ったダイナミックな踊りもそこに合わさったことで、評価してもらえたように思います」

海老原由佳

逆境やコンプレックスを強みに変える

しかし、活躍に至るまでには、様々な障害やコンプレックスを乗り越える必要があったと語る海老原さん。

「本当は中学や高校のときにバレエ留学をしたかったのですが、親の反対もあって大学に進みました。焦って自分を見失いそうになることもあり、あの頃が一番たいへんでしたね。でも、バレエだけではなく、いろんな世界を知って人生経験を重ねた方が、舞台での表現にも生きるはず。自分を信じられるように、もっと知識を増やそうと考えるようにしました。ようやく海外に出てみると、ヨーロッパの人は体形や見た目の美しさにも最初から恵まれています。自分と比べては嫌になり……。ものすごくコンプレックスでしたが、その分誰よりも努力したと思います。忍耐力と集中力、そしてバレエに人生をかける思いは負けない。コンプレックスが、逆に私の強みになりました」

海老原由佳

海老原さんのように、仕事や夢の実現のためにがんばっている女性に伝えたいことは?

「壁にぶち当たることは絶対にありますし、むしろ壁はあったほうがいい。目の前の失敗に囚われず、もっと前を見て、自分は必ずここへ行くんだ!という強い意識を常に持って進んでほしいです。信念を持って努力していれば、絶対に誰かが見てくれています」

海老原由佳

親日的で、日常に音楽があふれるポーランド

最後に、ポーランドの魅力について語ってもらった。

「とても親日的な国です。“made in Japan”と聞くと、みんな『いいね!』と評価してくれますし、日本食レストランはたくさんあって、抹茶やおにぎりも流行っているんですよ。日本の漫画も大人気で、日本語を学びたい人も多く、日本語学科がある大学も。日本という国が身近に浸透しています。ポーランドの人々は、温かくておおらか、そしてとてもフレンドリーです。子どもを連れて街を歩いていると、おばあちゃん達がすぐに声をかけてあやしてくれます。初めはちょっと壁を作る感じがあっても、一度受け入れたら両手を広げてサポートしてくれる。私はそういう方々に支えられてきました」

ポーランドは、ショパンを生んだ国として有名だ。万博のポーランドパビリオンでも、ショパン国際ピアノコンクール参加者による生演奏が、毎日行われている。

「コンサートは街の至る所で、毎日のように開催されています。夏は野外コンサートもおすすめ。音楽を聴きに行くことは、日常なんです。バレエやオペラ、民俗ダンスなども身近に溶け込んでいて、劇場は日本のように着飾っていくところではありません。芸術への国のサポートが手厚いのもいいですね。美しい街並みには自然も多く、安全。長年暮らしていて落ち着きます。日本の方にも、もっと訪れていただきたいです」

text: Satsuki Tadokoro

大阪・関西万博「ウーマンズ パビリオン」で「カルティエ」が表現する女性のエンパワーメント
大阪・関西万博ポーランドパビリオン。ショパンの名曲を間近で鑑賞できるピアノリサイタルを毎日開催

Profile

海老原由佳/Yuka Ebihara

海老原由佳
1986年、東京生まれ。6歳からバレエを始める。イギリス、フランスなどのバレエ団を経て、2011年からポーランド国立バレエ団に所属し、プリンシパルとして絶大な人気を博した。2014年と2017年には、ポーランド国内の最優秀女性ダンサー賞を受賞。また、2019年にはポーランド文化功労章「グロリア・アルティス」銀メダルを受章。2024年12月に現役を引退後は、後進の指導など新たなキャリアを築いている。2歳の女の子のママでもある。

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