【NOT A HOTEL】世界的な建築家が手がけた別荘を合理的に保有? 話題の革新的なサービスに迫る
2025.8.20
2025.8.20
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2025年5月にオープンして以来、美食と温泉で心身を癒やせる拠点として、すでに所有権を持つ人たちからも熱い視線を集めるのが群馬県・みなかみ町にあるNOT A HOTEL MINAKAMI「TOJI」だ。新幹線の上毛高原駅から車で約15分でアクセスできる立地に建つ。残念ながら、オープン前に完売した物件の一つで、所有権の購入はできないが、ほかの物件のオーナーになれば、相互利用することができる施設になる。

TOJIは、湯治のこと。周囲には、水上温泉郷や猿ヶ京三国温泉郷をはじめとした18もの温泉がある場所で、当然、ここでもヴィラの中に天然温泉が完備されている。
冬にはスキーやスノーボードを楽しみながら、一面銀色の世界に身を投じ、夏は利根川の最上流でのラフティングでスリルを味いながら、休日を満喫することが可能。先に挙げた物件の所有権を購入する際には、参考にしてほしい。
建築、居住空間、レストランに分けて、実際に体験できる内容をご紹介しよう。
何度も通いながら、時間の積み重ねを楽しめる建築のテーマ
那須にあるNOT A HOTEL NASUも担当した、建築家の谷尻誠氏と吉田愛氏が率いるサポーズ デザイン オフィスが設計した建物は、“現代の温泉集落”がコンセプト。ヴィラ5棟、レストラン1棟の建物を象徴するのは、三角屋根と銅板の外壁だ。雪が積もりにくい三角屋根は、古来、豪雪地帯によく見られたデザイン。銅板の外壁は、「一文字葺(ぶ)き」という技法が用いられており、独特の趣がある。ここまでふんだんに銅板を使用した例は珍しいとのこと。

一文字葺(ぶ)きは、伝統的な神社や茶室の屋根にも採用されているもので、経年変化をめでることができるのが魅力。オーナーが通うごとに変化するさまに愛着を持ってもらえればという願いが込められ、この素材と技法が選ばれた。記念日ごとに訪れて、その時間の流れを実感することができるのも一興だ。
そして、建物の魅力を引き立てているのが、ランドスケープのデザイン。住宅から公園などのパブリックな場所まで、あらゆる環境のグリーンデザインで定評がある「SOLSO」の齋藤太一氏が担当した。素朴な自然の風景は、奥に望む谷川岳の風景と一体となり、思わず深呼吸したくなる。早朝や夕刻に、鳥の鳴き声にいざなわれて敷地内をゆっくりと散策するだけで、日常から離れた空気感に体も心も喜ぶはずだ。
本当の意味でのおこもりステイが完成するヴィラ
ヴィラは2階建てで、1階には寝室が2室、2階にはリビングルームが配されている。1階から2階へ至る経路のドラマティックな演出も特徴だ。
まず、エントランスを入ると洞窟のような廊下が目の前に続く。2階とのコントラストを出すために、あえて狭く暗い空間に仕上げている。その効果を実現しているのは、左官材を使用して、特殊な工法でムラを出した自然の土壁に近い壁の風合いだ。
ちなみに、このエントランスの右手には、スキーから戻ったらウェアやギアを乾かすことができるドライルームが完備されている。

廊下の左側には、2つのベッドルームが設けられている。NOT A HOTELとしては初めて採用した畳敷の小上がりがある寝室は、温泉旅館のような落ち着きと安心感のある空間となるように作られたのだという。

廊下を抜けた先には階段があり、そこを上ると一気に6mの天井高のダイニング&リビングルームへと誘われる。一見すると、木組の天井が特徴のモダンなログハウスのような雰囲気。しかし、山並みの借景を楽しめるガラス張りの広い窓など、日本人になじみ深い縁側でくつろぐ、“半戸外”に身を置いているような開放感に包まれる。実際、窓は開け放つことができる。

何よりうれしいのは、窓の向こうにリビングを囲むように設けられているインフィニティプール。天然温泉、サウナや水風呂を一線でつなぐ15mのインフィニティプールは、180°のパノラマを楽しむことができる。
この敷地は、月夜野と呼ばれる地域で、昔から美しい月が見られることで知られる場所。満月の夜にプールに浮かびながら、月光浴と洒落(しゃれ)てみるのも悪くない。

リビングの中央にあるソファにも、心にくい演出が。一段低くなっており、腰を下ろした時の目線で窓からのパノラミックな絶景を一望できるようになっているのだ。プールに映り込む周囲の自然の風景は、夕暮れ時には、どんなエンターテインメントよりも豊かな景観のスクリーンが、多忙な日々で少しささくれだった心を穏やかにしてくれる。

インフィニティプールの横には、サウナと水風呂、天然温泉も併設されているのでサウナ好きには天国だろう。サウナストーブはフィンランド製を採用している本格派だ。

そして、完全なおこもりがかなうのは、キッチンと共に、その奥に“コンビニ”と呼ばれる有料のミニバーのようなコーナーがあるため。アルコール類からソフトドリンク、軽食、水着なども用意されている。プラスアルファで、冷蔵庫のパネルからコンシェルジュを通して、追加のメニューをオーダーすることもできるという便利さがある。
薪火料理を味わえる宿泊者専用レストラン
プライベート感の強いリゾートや別荘なら、食事はシェフを呼ぶか、自分で調理をするスタイルになることが多い。しかし、ここには夕朝食で利用できるプライベートレストラン「熺木(きぎ)」もある。宿泊者専用なので、混み合うこともなく、部屋でくつろいでいる気分のままで美食を堪能できる。

みなかみ町の食材を中心に、“水と火”をテーマにした薪火料理がもてなしてくれる。カウンター席8席と個室2部屋があるが、ぜひリザーブしてほしいのはカウンター席。薪火台の火と、その奥に広がる山並みという少しワイルドな組み合わせの光景が、目の前のごちそうをより美味しく感じさせてくれるからだ。
コースの一品目は、森の香りをまとった一杯のコンソメ。鹿と猪の旨(うま)みを澄んだ湧き水で丁寧に引き出し、みなかみに自生するクロモジで香りづけをしている。後味に、クロモジ独特の爽やかな香りが追いかけてきて、食欲がわいてくる。

湧水の恵みで育った契約生産者の地野菜をシンプルに表現した一皿。料理に合わせて、シェフが厳選している作家ものの器とともに味わえるのも至福の時間だ。

ジャガイモの春巻きには、麹を使用して熟成した生ハムを使用しているのが特徴。この生ハムは、雑味がなく、透き通った味がする。

大いわなに島ラッキョウのソースをかけた一皿は、塩加減が絶妙。箱島湧水で育った大いわなを、薪火でじっくり焼いている。おきびの遠赤外線で火を通しているので、皮目にしっとり感が残り、身の部分もまだみずみずしさがある。

赤城牛のサーロインは、“口福”の一言。赤身も楽しめるギリギリの45日間熟成で、炎で炙(あぶ)りながら、肉自身の脂で焼いていく。熟成肉らしいナッツのような味わいも感じ、かむと出てくる肉汁のジューシー感がたまらない。ソースではなく、塩とゆずこしょうで肉本来の旨(うま)みをかみしめながらいただく。ゆずこしょうは、新潟県中越地方で栽培されている神楽南蛮(かぐらなんばん)という、ピーマンのような見た目の唐辛子の一種を塩胡椒(こしょう)でつけたもので、柔らかい辛さが肉の甘みと口の中で融合する。

レストランだけでも、予約がなかなかとれない一軒になりそうなのに、いつでもNOT A HOTELのオーナーのためだけに扉を開いているというのだから、とびきり贅沢(ぜいたく)だ。
NOT A HOTELは全国に続々と拡大中。興味がある方は、夢物語で終わらずに、ぜひ自分のライフスタイルの一部として一考してみてほしい。
Informaiton
NOT A HOTEL
https://notahotel.com/
photos & text: Rica Ogura
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