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「言葉が生きる力になる」俵万智が語る、SNS時代に言葉と仲良くなる方法

言葉を着替えることを楽しむ

言葉はファッションのようなもの――俵さんはそう語る。

「あらたまった場ではあらたまった格好をするように、言葉にもTPOがある。間違えると気まずくなるけれど、着替えることを楽しめば、言葉って本当に豊かなんです」

仕事のメールやLINE、SNS、それぞれにふさわしい言葉がある。相手や場面に応じて着替える意識を持つことで、コミュニケーションはずっとラクになると教えてくれた。そして、コミュニケーションに悩むことをネガティブなことだと思いがちだが、俵さんの言葉でまたはっとさせられる。

「私たちはしょっちゅう迷ったり、後悔したり、間違えたりするけれど、そういう人間らしさに価値があると気づけたのは、むしろAIの登場があったからかもしれません」

今はAIで短歌もつくれる時代。でも俵さんは、「AIには“悩む時間”がない」と語る。だからこそ、言葉を選び、迷いながら紡ぐそのプロセスにこそ、人間らしさが宿るのだと感じている。

俵万智 新刊 インタビュー

好奇心は“恋”に似ている

「言葉が好き」という一点から、俵さんの世界はどんどん広がってきた。歌舞伎町のホストとの歌会は大盛況で歌集が出版され、ラップの審査員を務めたこともある。

「控室でラッパーの呂布カルマさんとふたりきりになって、『何を話せばいいんだろう……』と(笑)。でも、言葉に関わることなら何でもやってみたくなるんです」

なぜそこまで言葉が好きなのか。「それは恋なんだと思う」と、俵さんは言う。

「本書のヒコロヒーさんの話のところでも書いていますが、理由が説明できるうちは、“ただの好き”なんです。でも、嫌なところも見えているのにどうしても好き。それはもう恋ですよね。私にとって、言葉はそういう存在なんです」

好きなものがあるというのは、世界への扉をひとつ持っているということ。その扉から、好奇心という光が差し込む。「推し活や音楽だっていい。心から好きなものがあるだけで、人生は豊かになる」と俵さんは語る。

関連情報

Profile

俵万智(たわら・まち)

1962(昭和37)年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代に佐佐木幸綱氏の影響を受け、短歌を始める。1988年に現代歌人協会賞、2021年に迢空賞を受賞。『サラダ記念日』『愛する源氏物語』『未来のサイズ』の他、歌集、評伝、エッセイなど著書多数。

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