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アルマーニ / リストランテとレスピラシオン。能登半島地震チャリティーディナーの“真の目的”とは

東京・銀座の「アルマーニ / リストランテ」にて、石川県金沢市のスペイン料理店「respiración(レスピラシオン)」の梅達郎シェフと八木恵介シェフをゲストに迎えた、能登半島地震チャリティーディナーが開催された。能登の食材を中心に、2つのレストランの“合作”も見られた希少なディナーコースは、2日間の売り上げの10%を、能登半島地震で被災した地域への復興支援として寄付。意外にも「本当に望んでいるのは、チャリティーディナーの開催ではない」と語る、シェフたちの真意とは?

共通点は、食材への向き合い方や生産者との関係性

「じつは去年からカルミネとブルノと、『一緒に何かやろう』と話してはいたのですが、1月1日に能登半島地震が起こり、すぐに『チャリティーで一緒にやろう』と声をかけてもらったんです」

そんな言葉を皮切りに、今回のコラボレーションのきっかけを語る、梅シェフ。ともにミシュランの星をもつレストラン同士、数年前からinstagramを通じて交流を深めていったという。

左から「レスピラシオン」八木恵介シェフ、「アルマーニ / リストランテ」エグゼクティブシェフのカルミネ・アマランテシェフ、ブルノ 昼間・マドリッドシェフ、「レスピラシオン」梅達郎シェフ

「レスピラシオンの料理は、繊細で美しいだけでなく、食材をとても大切にしているのが伝わってくるので、以前から一緒にやってみたかったんです」(カルミネシェフ)

SNSを見ているなかで、食材への向き合い方や生産者との関係性などが似ていると、互いに感じていたそう。

能登を訪れて結ばれた、“作り手”と“使い手”の信頼関係

「NATO高農園」高利満さんとカルミネシェフ

2月にはカルミネシェフとブルノシェフも能登の生産者を訪問。中能登町で年間約300種のハーブやエディブルフラワーを育てる「あんがとう農園」と、能登島で赤土の土づくりからこだわり有機野菜を育てる「NOTO高農園」を訪れ、そのこだわりに衝撃を受けた。

 「あんがとう農園」の代表・明星孝昭さんと、カルミネシェフ

「震災後の能登を訪れたとはいえ、滞在できたのは1、2日。どれだけの被害に遭われているか、いつまで断水が続くのか、そのほんの一部を見たに過ぎないので、私たちが被害を語るようなことはできません。でも1つだけ言えるのは、出会った皆さんがすごく前向きに接してくれていたこと。そして、朝早くから丁寧に説明してくれて、1つ1つの食材にとてもこだわりを持っていることや、力強い美味しさが伝わってきました。私たちから、この種類を使いたい、あの種類を送って欲しいとリクエストをするのではなくて、『何かおすすめのものを送ってください』とお願いして、夜のお任せメニューで使わせてもらっています」(カルミネシェフ)

「生産者さんたちも、“シェフたちはどの野菜なら、どう使ってくれるんだろう”と想像して送ってくださって、そこで“分かり合える”ということがまた、その生産者さんのモチベーションにも繋がっているんだと思います」(梅シェフ)

「アルマーニ / リストランテ」と「レスピラシオン」の合作を楽しむ一皿とは?

今回のスペシャルディナーでさらに興味深いのは、コースのうちいくつかのメニューが、「アルマーニ / リストランテ」と「レスピラシオン」の合作であること。

「普段のコラボレーションなら、2つのお店で相談し、メインはそちらから、前菜はこちらからと、1皿ずつ合わせて構成することが多いのですが、今回は、例えばタパスは両店とも2皿ずつお出ししたり、パンも両店から1種類ずつ。とくに山菜の料理は、二つのお店の完全な合作です」(ブルノシェフ)

前菜のタパスからスタート。手前の2皿が「レスピラシオン」作、奥の2皿が「アルマーニ / リストランテ」作

スタートは、「レスピラシオン」のオープン当初から君臨する、“始まりの一皿”。石川県の甘海老を余すことなく使用したタルトだ(手前・左)。甘海老の殻や卵を混ぜ合わせたタルト生地の上に、自家製塩麹でマリネした甘海老の身、覆ったシートには甘海老の味噌を使うなど、口一杯にねっとりと濃厚な旨みが広がっていく。

お次は、ブッラータチーズに、「NOTO高農園」のトマトをスモーク・フレッシュと2種の食感で合わせたタルト(手前・右)。

「アルマーニ / リストランテ」作は、パルメジャーノチーズのクロケットから。黒トリュフのジュレがジューシーなアクセント(奥・左)。

タルタル仕立てのハマチをじゃがいもの薄いチップで包み、トップにキャビアを乗せた一品は、メリハリのある食感に頬がゆるむ(奥・右)。

同じタイミングで2つのレストランの味わいを一緒に楽しめる構成は、早々にゲストを魅了した。

さらに“合作”の力強さを感じたのが、「レスピラシオン」が作る蓮根の練りものに、「アルマーニ / リストランテ」が作るスープをかけていただく、コース中盤の一皿「山菜」。

(左)蓮根農家である川端崇文さんの蓮根をすりおろし、焙煎し、粉末にした金沢産の六条大麦を練り込みんで蒸しあげた、蓮根の練りもの(右)周りをなめこと天然の行者にんにく、浅葱、銀杏のピクルス、牛蒡の泡で囲む

「『NOTO高農園』さんの野菜を最初にカルミネに送ったら、それを使ってスープを作ってくれました。僕らは『こういうスープを作ってくれてるんじゃないかな…』という想像だけで、スープをかける具を作ったんですが、ディナーの前日に初めて合わせてみて、バシッとハマったので、めちゃくちゃ気持ちよかったんです(笑)」(八木シェフ)

蓮根団子に、カルミネシェフ特製のスープをかけて完成する「山菜」。標高1000mの白峰で生息する杉の葉とそのオイルを、香りのアクセントに添えて

もちろん、「アルマーニ / リストランテ」のスペシャリテの一つである「カンネッローネ」や、「レスピラシオン」では必ずコースに組み込まれる「パエリア」など、それぞれのスペシャリテも存分に披露された。

伝統的なイタリアのパスタ「カンネッローネ」。ボローニャスタイルのラグーを詰めたカンネッローネに、なめらかな⼝あたりのベシャメルソース、フォンドヴォーを合わせ、コクのある味わいに惚れ惚れ

「チャリティーディナーという意識はない」。食でつなげるサポートを

今回の2日間のディナーの売り上げの10%は、能登地方を中心とする能登半島地震で被災した地域への復興支援として、一般社団法人NOTOFUE(ノトフュー)に寄付される。あらためて、「チャリティーディナー」には違いないが、当のシェフたちはその意味を常々考えているという。

「もともとカルミネと一緒に何かやろうと話していたことですし、僕らにとってこのディナーでお客さまに募金してもらおうという考えは一切ないんです。『コラボレーションディナー、すごく楽しかった』とか『石川県の野菜ってこんなに美味しいんだ』とかって感じてくれて、『石川県ってどんなとこなんだろう』とか『能登に行ってみたいな』って思ってくれたらそれでよくて、今後につながることが目的。実際に被災地の方たちからすれば、チャリティーディナーの開催よりも、本当に望んでいるのはお水や電気だったり、今日寝るとこだったり、明日の食べ物だったりするなかで、僕らが今やれることがあるとすれば、発信し続けて、風化させないことだと思うんです」(梅シェフ)

「そういった意味でも、この東京の中心にあるアルマーニ / 銀座タワーで、海外出身のシェフたちが日本の食材を使って世界中に発信できるということの素晴らしさもありますし、単純にレストランて楽しいな、素晴らしいなと思ってくれるきっかけになると思っています」(八木シェフ)

「初日には能登の生産者さんも食べに来てくれましたし、私たちも、『チャリティーディナー』という言葉では言い表せません。今回はレスピラシオンとアルマーニ / リストランテの“スペシャルディナー”として行いましたが、このあとは、私たちなりにできることをやっていくつもりです。例えば能登から野菜を卸してもらうだけでなく、できるだけ他のシェフたちにも、食材の素晴らしさを共有していくなど、“食”を通じて少しずつサポートの力を増やしていきたいですね」(カルミネシェフ)

アルマーニ / リストランテでは、今後も「OMAKASE」コース内で能登食材を使用した料理を提供する予定。今後のスターシェフたちの競演も、期待せずにはいられない。

interview&text: Aki Fujii

アルマーニ / リストランテ 能登半島地震チャリティーディナーを4月18日、19日に開催
令和6年能登半島地震 日本の「美味しい」のためにできること

ARMANI / RISTORANTE 銀座
公式サイト

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