涼やかな京都の和菓子、栖園の「琥珀流し」と茶寮宝泉の「わらび餅」【町家宿おかみの、たびする京都くらす京都。】
まるで宝石! 目に涼やかで美味しい、夏の京都のお楽しみ
京都・洛北、紫野にある町家宿「karigane(かりがね)」。昭和初期に建てられた京町家をリノベーション、町家のたたずまいはそのままに、細部までこだわった内装で訪れた人を温かく迎え入れる。2017年の開業以来、和の情緒を満喫できる宿として人気だ。そんな「karigane」を夫とともに営む下岡莉香さんが、四季折々の京都の表情をスケッチします
舌の上でトゥルンとおどる!
ついに暑い暑い京都の夏がやってきました。皆さまいかがお過ごしでしょうか、kariganeおかみの下岡です。今回は、涼やかで宝石のように見目麗しい和菓子をいただける、甘味処をご紹介いたします。
まずは「琥珀流し」。大極殿本舗(だいごくでんほんぽ)さんの甘味処「栖園(せいえん)」さんでいただけます。
大極殿本舗の甘味処・栖園は、京都市指定歴史意匠建造物の京町家
琥珀流しを一言でいうと、寒天に自家製シロップがかかった一品です。しかし、舌の上でトゥルンとおどる独特の食感は、こちらでしか楽しむことができません。
メニュー開発当初には、職人さんから「こんな腰抜けみたいな寒天は、寒天とちゃう!」との反発もあったのだとか。しかし「これまでにはないもんを作るんです」というおかみさんの熱意によって、琥珀流しは生まれたそうです。そんなストーリーを知ると、味わいに深みが増します。
自家製シロップは月替わりで、7月はペパーミント。リキュールで緑に色づいた寒天は、まるでエメラルドのようです。ちなみに4月は桜の蜜、10月は栗と小豆。季節感が楽しく毎月通いたくなります。
これぞ京町家という重厚感のある店構えや、季節によってかけかえられる暖簾も見どころです。日常とはひと味違った特別感をご堪能ください。
7月はペパーミント。六角店から徒歩2分離れた本店では異なる蜜の琥珀流しが楽しめます
中庭に面したお席から見える金魚のひらりちゃん
注文を受けてから作る繊細なわらび餅
次にご紹介するのは、茶寮宝泉(さりょうほうせん)さん。下鴨神社を北へと進んだ閑静な住宅街にある純和風建築で、聞けば実業家によって建てられた数寄屋を茶房としたものなのだそう。大きな鞍馬石の敷かれた玄関の先には苔むしたお庭が広がり、異世界のような雰囲気です。
築100年以上の数寄屋造りのお屋敷
こちらでおすすめしたいのは、わらび餅です。わらびの根からほんのわずかしか取れない本わらび粉を100%使って、注文を受けてから作られます。ガラスのお皿に盛られたわらび餅は、まるで清流の底に沈むメノウ石のようにつややか。
ガラス高台にのる瑞々しいわらび餅
いつまでも舌の上を転がしておきたい優しい食感と甘みを楽しんでいると、わらびという野草ならではの野性的な香りがほのかに漂います。この繊細さを味わうために、きな粉はついてきません。外国からのお客様も多いそうですが、日本人にこそ楽しんでいただきたい「本物の味」です。
昔の人々のように、五感を駆使して涼をとるのも良いものです。夏のお洒落をして、京都にお出ましください。
夏には緑が、秋には紅葉が美しいお庭を愛でつつ、いただけます
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