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多様な文化と体験を取り込んでエウロルーチェに出現した「光の街」ミラノサローネ【前編】

インスタレーション、写真展、トークイベントetc. 照明見本市の枠を超えた展示の数々

エウロルーチェの会場に足を踏み入ると、そこは照明器具の見本市というより、暗闇の中に浮かび上がる光の街そのもの。ミッドナイトブルーの光を帯びた巨大な白い壁に浮かび上がる「You Can Imagine the Opposite (反対を想像する)」という言葉の光を灯したのは、イタリアのアーティスト、マウリツィオ・ナンヌッチ。それはヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタ などの世界的なアートフェスに何度も出展を果たし、ネオンライトを詩的に取り入れた作品で知られるコンセプチュアル・アートの第一人者からの、私たちへのメッセージのようにも受け取れる。

インテリアの祭典、ミラノサローネ
エウロルーチェの会場内でマッテオ・ピローラのキュレーションにより展示された「Dawns. The Lights of Tomorrow (夜明け – 明日の光)」の展示風景より。
Coutesy Salone del Mobile,Milano,Photo: Diego Ravier

デザインの実験場さながらに、テクノロジーにポエティックなエッセンスを加味して幻想的な日食、オーロラ、夜空、星座、天体などのビジュアルを見せた「Dawns. The Lights of Tomorrow (夜明け – 明日の光)」展や、ル・コルビュジエ、ピーター・ズントー、ザハ・ハディッドら巨匠たちの建築写真で知られる写真家 エレーヌ・ビネの、時が止まったかのような静謐な空気感で満たされた「Nature, Time and Architecture (自然、時間、建築)」展など、光の街と化したエウロルーチェの会場内には、選び抜かれたキュレーターによる「光」をあらゆる角度から捉えた展示が点在する。

インテリアの祭典、ミラノサローネ
エレーヌ・ビネの写真展「Nature, Time and Architecture (自然、時間、建築)」の展示風景。キュレーション・展示デザインは、かつてピーター・ズントーのアシスタントを務め、現在はミラノ工科大学で教鞭を執る建築家、マッシモ・クルツィが担当。
Coutesy Salone del Mobile,Milano,Photo: Andrea Mariani

光の街、エウロルーチェには魅力的なショップやレストランもオープン。デザイン、アート、インテリア、建築から文学まで「光」 をテーマにした書籍、絵本、写真集など、希少本から現在入手困難な本や、限定版のプリント、ビンテージアクセサリーまでを網羅したブックショップは来場者の関心を集め、レストランでは、ミシュランの星を持つスターシェフ、ジェンナーロ・エスポジートの高級レストランとダニエル・カンツィアンのビストロ(ピエロ・リッソーニのデザイン)が賑わった。

インテリアの祭典、ミラノサローネ
ランプシェードを装ったピエロ・リッソーニのデザインによるダニエル・カンツィアンのビストロ。
インテリアの祭典、ミラノサローネ
アーティストとの協働やギャラリー運営でも知られるイタリアの出版社、コライニ・エディツィオーニが監修したコライーニ・モバイル・ブックショップ
Coutesy Salone del Mobile,Milano,Photo: Diego Ravier

エウロルーチェという「光の街」で、人々が集い、語らい、交歓する広場としての存在を果たしたのがデザインユニット、フォルマファンタズマが設計したアリーナ「AURORE(アウローレ)」。サローネ会期中、アウローレでは今をときめく建築家、デザイナーらの登壇するトークイベント「Talks」が開催された。

インテリアの祭典、ミラノサローネ
トークイベント「Talks」に登壇した坂茂は、時折ユーモア溢れるコメントも挟みながら自身の代表作から、直近の災害支援プロジェクトまでを語った。
Coutesy Salone del Mobile,Milano,Photo: Diego Ravier

初日には建築家の坂茂が、「Balancing Architectural Works and Social Contributions (建築作品と社会貢献の両立)」をテーマに登場。ポンピドゥーセンター・メスなどの代表作から現在着手している新プロジェクト、さらに紙管、コンテナなどを利用した災害支援活動についてのトークを繰り広げ、アリーナの座席を埋め尽くした観客から大喝采を浴びた。

会場全体の展示構成を手掛けたデザインスタジオ、ロンバルディーニ22は、「エウロルーチェをどう照らすか?」 という問いに「すべて消すこと」という答えを見いだしたという。そこには暗闇の中でこそ光が感動を伝える、さらには出展各社のライティングや様々な展示が浮かび上がる、という意図があるだろう。坂茂がTalksシリーズの中で、「ライティングでは『明るさ』よりも『暗さ』が重要」と語ったことも記憶に残る。奇しくも両者に共通する「陰翳礼讃」(いんえいらいさん)のフィロソフィーは、今年のエウロルーチェを成功に導いた鍵となったようだ。

続く後編では、エウロルーチェ出展各社の注目の最新作を紹介する。

text: Toshie Fujino, edit: Miyuki Kikuchi

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