エル・ファニングが映画『名もなき者/ A COMPLETE UNKNOWN』で表現する強さと純粋さ
現在の映画界を牽引する若手俳優の一人として、注目を集めているエル・ファニング。26歳という若さでありながら、『アイ・アム・サム』で映画デビューを果たしてからすでにキャリアは24年を誇る。幅広い役柄をこなすだけでなく、ソフィア・コッポラやウディ・アレンといった世界を代表する監督たちからも愛され、名実ともに評価は高い。そんな中、話題作『名もなき者/ A COMPLETE UNKNOWN』で主人公の恋人役に抜擢。本作の魅力や役にかける思いを語る。
© Gregory Harris/AUGUST/amanaimages
唯一無二の存在感を放ち、映画界にインスピレーションを与え続ける俳優エル・ファニング。“リアル・フェアリー”とも称される透明感あふれるルックスと、ずば抜けた演技力で人々を魅了している。これまでに40作品以上の映画に出演し、幼少期から様々なキャラクターに扮してきたが、最新作『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』で挑むのは、ティモシー・シャラメ演じる若き日のボブ・ディランと恋に落ちるシルヴィ・ルッソ。本作の企画について知ったときの様子を振り返る。
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
「プレスリリースの時点で興奮したわ。だってティモシーがボブ・ディラン役で、ジェームズ・マンゴールド監督が撮るのよ。ボブのファンとして“絶対に観たい”と意気込んでいたわ。でもその後、私が演じられる役があると、さらにうれしい知らせをもらったの。演じたいという気持ちが現れていたのかもしれない。だってボブ・ディランの大ファンだったから。しかも13歳の時からね。マニアとまではいかないけど、彼の音楽が本当に大好きなの」
どこか運命的なものを感じさせるが、それも運を引き寄せる力の強さを持つエルが起こした“奇跡”と言えるのかもしれない。劇中で演じるシルヴィは、実在するボブの元恋人スージー・ロトロをモデルにした人物。彼女の著書を読み込んで役作りをしていったというが、深く理解していたエルだからこそ表現できたことがあったのもうなずける。
「彼女はあまり知られていない人物だったし、ボブと歌ったり演奏したりもしないけど、単なるガールフレンドという存在ではなかった。深みのある人だし、意義深い活動をしていてボブに影響を与えた。アーティストであり、政治的な信念を持った60年代の活動家でもあったの。彼女と出会ったからこそ、ボブも政治に興味を持った。自分の言葉で歌うように彼女はボブを促したし、そういう事実や強さを表現して、スージーという人を伝えたいと思ったわ。ボブのそばにいたのは純粋な愛があったからで、何かを得ようとは思っていなかった。彼女の純粋さは本当に美しいものだったのよ」
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本作ではボブとの繊細で複雑な関係性が見事に描かれているが、それは主演を務めたティモシーとの信頼関係の上に成り立っていたことがわかる。
「ティモシーと初めて共演したのは、私が19歳の時。『君の名前で僕を呼んで』が公開される前で、彼が有名になる前から私は知っていたの。それと同じように無名の頃のボブを、シルヴィも知っていた。私たちは共演経験があり、ふざけ合うような仲だったからこそ、初期のシルヴィとボブを表現できたと思う。ティモシーは、どんなに難しい役も絶対に演じられる素晴らしい役者よ。今回も、想像を超える形でボブを演じ切っていたわ」
1960年代初頭、後世に大きな影響を与えたニューヨークの音楽シーンを舞台に、19歳だったミネソタ出身の一人の無名ミュージシャン、ボブ・ディランが、時代の寵児としてスターダムを駆け上がり、世界的なセンセーションを巻き起こしていく様子が描かれる。ディラン役にはティモシー・シャラメ、エル・ファニングはディランの恋人となる人物、シルヴィ・ルッソを演じる ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
ティモシーも「エルとは長い付き合いだから、とてもありがたかった」と語っているが、この2人だったからこそあの空気感を醸し出すことができたのだろう。そして、本作の魅力を語る上で欠かせない要素といえば、俳優たちによる歌唱シーン。ティモシーは5年もの時間をかけて音楽のトレーニングを行い、ボブの楽曲を50曲ほど習得したという。いずれも事前録音ではなく、現場で出演者自らライブで歌っているため、スクリーンからも臨場感が伝わってくる。
「ニューポート・フォーク・フェスティバルのシーンは、フェスを開催するような形で撮影する方法を、監督が採用したの。シルヴィは演奏しないから私は観客の1人。ボイド・ホルブルック演じるジョニー・キャッシュが歌い、モニカ・バルバロがジョーン・バエズとして出てきて歌って、30分間にわたる本格的なコンサートだった。それを目の当たりにできたのは素晴らしい体験だったわ。フェスティバルの臨場感を感じられたのは、すべて監督のおかげよ。そして、なによりみんなの歌唱力に驚いたし、その努力には頭が下がる思い。本業は歌手じゃないのに、映画で歌うのは緊張するし不安になるもの。その上、大勢の人の前で歌わなきゃいけない。だからこそ、みんなの歌や演奏に本当に驚いたわ」
あらゆる才能がひしめきあうなかでも、輝きを放つエルは観る者の心に大きなインパクトを残す。近年は俳優業のみならず、製作業にも積極的に取り掛かっており、今後さらなる活躍が期待されている。これまでも多くの刺激を与えてくれたエルだが、まだまだ“序章”に過ぎないのかもしれない。この先もエルが映画の歴史において欠かせない存在であることは、間違いないだろう。
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN 』 2月28日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー 監督:ジェームズ・マンゴールド 出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック、ダン・フォグラー、ノーバート・レオ・バッツ、スクー ト・マクネイリー 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 北米公開:2024年12月25日 原題:A COMPLETE UNKNOWN ©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved. 公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/acompleteunknown