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実力派女優ケイト・ウィンスレットが挑む新境地

ケイト・ウィンスレット photo: PAOLA KUDACKI/Trunk Archive/AFLO

【3月25日 marie claire style】1994年に『乙女の祈り』で鮮烈な映画デビューを飾ったのち、25年以上にわたって着実にキャリアを積み重ねてきた女優ケイト・ウィンスレット。『タイタニック』のヒロインで注目を集め、これまでアカデミー賞に7度ノミネート、『愛を読むひと』では見事アカデミー賞主演女優賞に輝き、世界中の映画ファンからも信頼は厚い。そんなケイトが「私にとっても新境地だった」と語るのが、最新作『アンモナイトの目覚め』。40代半ばに差しかかり、強さと美しさに磨きのかかった彼女の魅力に迫る。

 イギリスが誇る実力派として、各国の名匠たちから愛され続けているケイト・ウィンスレット。4月9日より日本で公開される映画『アンモナイトの目覚め』では、円熟味を増した秀逸な演技で観る者を魅了する。演じているのは、19世紀にイギリス南西部にある海辺の町に実在した古生物学者のメアリー・アニング。かつては化石の大発見により一世を風靡するものの、社会的地位と性別が原因で世間から忘れ去られてしまった女性だ。脚本を読み、この役を演じることを熱望したケイトは、その魅力についてこう語る。

「メアリーは貧しい家庭に生まれ、男性優位の階級社会から疎外されて生きてきたの。発掘した多くの化石も同僚の男性たちに手柄を横取りされていたけれど、彼女は意志が強く、頑固だったので、自分を見失うことは一度もなかった。好奇心が旺盛で、博識だったからこそ、すべてを独学で習得し、そして生涯学び続けたのよ。私はそういう彼女を心から尊敬するわ。そんなふうに、社会の常識を破ろうとする役に私は惹かれる傾向があるの」

 徹底したリサーチと緻密な役作りをする過程で、ケイトはメアリーの物語を今の時代に伝える意義についても痛感したという。

「長い間、私たち女性は批判の対象だったし、今でもそれは続いている。でも、歴史に名を刻んだ偉大な女性の例を挙げれば挙げるほど、女性たちの間にお互いを助け合おうという気持ちが湧き起こり、結束力が強くなっていくの。だから、#MeTooから始まった最近の運動は、この上なく素晴らしい傾向だと思うわ。メアリーのような存在がいるからこそ、私たち女性は自分の真の声に従おうという気になるの。今、女性の歴史は変わろうとしているのよ」

 劇中、ケイトが演じるメアリーは裕福な化石収集家の妻シャーロットと出会う。正反対の2人だったが、化石発掘をしながら次第に惹かれあっていく。ケイトはシャーロット役の女優シアーシャ・ローナンとともに、そんな女性同士の心を揺さぶる激しい恋愛関係にも体当たりで挑んだ。そのなかで、さまざまな気づきを得られたと振り返る。

「シアーシャと親密なシーンを撮影しているとき、彼女と完全に対等になった瞬間に興味深い発見があった。それは、これまでの自分は男性の共演者に対して対等だと思えていなかったということ。『なぜもっと前に気づかなかったんだろう』とか『なぜ男性に対して対等だと思えなかったんだろう』って頭にきたわ。でも、それが社会の現実なんだと思う。だからこそ、私たち女性は男性と対等になる権利があるんだと声を上げなければならないの。いまだかつてないほど社会の常識を覆す女性の物語を伝える重要性を強く感じているわ」

 そのなかでも、偽りなく誠実に伝えていくことが大事だと話すケイトは、さらにこう付け加える。

「女性の声を誇り高く届ける運動に欠かせないのが映画作り。その一員になれることをとても幸せに感じているの。私は女性であることで多くのことを学んできたし、いつも両方の足をしっかりと地につけて自分の意思を表現してきたけれど、まだ出発地点に立ったにすぎないと思うわ」

 映画の持つ力を信じ、女優として自らができることを追求し続けているケイトだからこそ、人々を惹きつけてやまないのだろう。自身のキャリアにおいても大きな意味を持った本作を通して、観客にも感じ取ってほしいことがあると訴える。

「メアリーは従順なタイプではないし、誰かに支配されることもない。そして、自分の存在を否定することも一切ない。でも、女性みんなが彼女のような側面を持つべきだと思うの。私自身も、今まで経験したことがないほど役からインスピレーションをもらったわ。出身や生まれた家庭にかかわらず、誰しもが限りない可能性を秘めているということを感じてもらいたい。自分の心に従い、自分の声を使って自分自身の道を歩むことが、何よりもこの世で大切なことだから」

■映画情報
『アンモナイトの目覚め』
4月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
監督・脚本: フランシス・リー
出演: ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン
配給: ギャガ

■関連情報
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(c)marie claire style / photo Cover: PAOLA KUDACKI/Trunk Archive/AFLO/photo Cover Story: (c)LONGINES / text: Masami Shimura

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