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マリ・クレールとケリング・グループがファッションとエコな未来を考える【FASHION OUR FUTURE イベントレポート・前編】

マリ・クレールとケリング・グループは共同で、サステナブル・ファッションに特化した取り組み「FASHION OUR FUTURE」を開始。両社の知見やスキルを生かし、業界のエキスパートやセレブリティ、活動家らの意見を取り入れながら、コンテンツの構築やイベント、キャンペーンなどを展開していく。その初イベントとして、6月にフランス・パリで開催されたシンポジウムの模様を前編と後編に分けてレポート!

6月16日、マリ・クレール グループ(本社フランス)はグッチやバレンシアガなどのラグジュアリーブランドを傘下に持つフランスのグローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング・グループ」(KERING、以下ケリング)と共に、気候問題、ファッションとエコロジー、サステナブルな未来について考えるシンポジウム「FASHION OUR FUTURE」を初開催した。会場は、パリに昨年誕生したエコファッションの新しい起業支援施設として話題の「ラ・カゼルヌ」。世界中から集まった専門家や活動家、ファションデザイナー、モデルなど業界のキーパーソンが登壇し、明日のファッションについて白熱した議論が繰り広げられ、様々な提案が上げられた。

パリ  ラ・カゼルヌ
会場となった「ラ・カゼルヌ」。パリで最古の消防署だった建物が昨年、サステナブルなファッションの発信地として生まれ変わった。

気候問題や労働問題に直面する女性たち

「ケリング」のチーフ・サステナビリティ・オフィサー、マリー=クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)は、「私たちは既に気候変動の現実に苦しんでおり、この状況に適応する必要があります」と訴えた。女優兼活動家でドキュメンタリー制作ディレクターであるアイサ・マイガ(Aïssa Maïga)は「我々西側諸国の行動は、アフリカの水不足とそれに起因する家族の解体、少女たちの教育への脅威に影響を及ぼしていることを知る必要があります」と続けた。

マリ・クレール カテル・プーリケン  ケリング   マリー=クレール・ダヴー
『マリ・クレール』フランス版編集長のカテル・プーリケン(左)と「ケリング」のチーフ・サステナビリティ・オフィサー、マリー=クレール・ダヴー(右)

アジアでは繊維工場の労働者の85%がファストファッションの消費パターンに大きな影響を受け、過酷な労働環境を強いられているという。特に影響を受けるのは女性たちで、労働者を守る団体「コレクティフ・エティック・シュール・エティケット」のナイラ・アジャルトゥルニ(Nayla Ajaltouni)は、「女性たちは彼らの労働組合でよりリーダーシップを取り、自分たちで声を上げて法律を変えていくべきです」と語った。

持続可能なファッションのソリューションとは?

『マリ・クレール』フランス版編集長のカテル・プーリケン(Katell Pouliquen)は、「我々はライフスタイル自体を変えていかなければなりません。そして服を選び、着る方法も変えていくべきでしょう」と語る。

フランスでいち早くフェアトレードとエコマテリアルを取り入れたスニーカーブランド「VEJA」の共同創設者兼CEOセバスチャン・コップ(Sébastien Kopp)は、「私たちは地球に優しく、人権を尊重するもの作りを追求しなければなりません。そのためまずブラジルへ行き、綿花畑とゴムの生産者を見つけ、彼らと共にもの作りを開発し続けています」。そして今後益々ファッションは透明性とトレーサビリティが必要不可欠であると主張した。

スニーカーブランド「VEJA」の共同創設者兼CEOセバスチャン・コップ
スニーカーブランド「VEJA」の共同創設者兼CEOセバスチャン・コップ

‘‘Made in Earth’’を理念にフランスにデザインチームを置き中国で生産するファッションブランド「ICICLE」のクリエイティブディレクターを務めるベネディクト・ラルー(Bénédicte Laloux)と、アフリカからヴィンテージアイテムを集めパリでショップを運営する「マルシェノワール(MARCHÉ NOIR)」代表のアマ・アイヴィ(Amah Ayivi)はファッションが環境にもたらす問題を対処するための可能な解決方法について討論。例えば天然染料や革新的な素材の選択、そしてアップサイクリングなどが挙げられた。

アップサイクリングとイノベーション

パリでラグジュアリーブランドを扱うリセールサイト「ヴェスティエール・コレクティブ(VESTIAIRE COLLECTIVE)」の副社長ヴァネッサ・マシリア(Vanessa Masiliah)は「ファッションの最大の問題は過剰生産にあります。新しいものを着ることだけでなく、より衣服の寿命を伸ばし、既存のものをいかに着続けていくかを考える必要があります」と訴えた。

より持続可能な服を生産するために、ファッション業界は革新的なプロジェクトを進めているという。「ケリング」のサステナブル・ソーシング及び自然イニシアチブのマネージャーのユアン・レジェン(Yoann Régent)は、モンゴルで設立した「南ゴビ・カシミヤ・プロジェクト」について紹介した。同プロジェクトにおいては動物がストレスなく育つ環境作りを目指し、生物多様性の保護、遊牧民の報酬向上を保護するための牧畜技術のサポート等を積極的に行なっているという。

マリ・クレール インターナショナルのガリア・ルパン(左)と「ケリング」のサステナブル・ソーシング及び自然イニシアチブのマネージャーのユアン・レジェン(右)

また「グッチ」は再生素材、オーガニック素材、バイオベースで持続可能な原料による素材のみを使用し、環境を配慮したデザインのコレクション「GUCCI OFF THE GRID」を立ち上げ、素材やテキスタイルの再生をサポートし、廃棄物を減らし、未使用の資源の利用を最小限に抑える活動を行なっている。「我々は循環性、再生型農業、生物多様性を軸に展開しています」と、「グッチ」のコーポレート事業&サステナビリティ部門EVPジェネラルカウンシルのアントネッラ・セントラ(Antonella Centra)は説明する。同コレクションにはサステナブルな再生ナイロンから作られた素材「エコニール(Econyl)」が用いられており、トラベルアイテムの新作などを発表したことも紹介された。

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グッチ
会場には、環境に配慮した素材で作られた「グッチ」の製品が展示された。

「ケリング」の余っているレザーストックから新たな商品を作るアップサイクルのワークショップも行われた。

今、パブリックエンゲージメントが問われる

今回の議論では企業だけでなく、消費者一人一人が意識を変え、果たすべき役割が多いことも挙げられた。著書『環境に優しいファッション』で人気のインスタグラマー、ファニー・エンジョラス−ガリチジン(Fanny Enjolras-Galitzine @thegreenimalist)や、服の型紙の販売からブランドをスタートしオリジナルファブリックもデザインする「MAKE MY LEMONADE」のファウンダー リサ・ガシェ(Lisa Gachet)は「古着を積極的に買うこと、型紙を使って自分で服を縫ってみるのも良いでしょう。また最低30回着てから次の服を買うように心がけることが大切」と良いアドバイスを提案した。

インスタグラマー、ファニー・エンジョラス−ガリチジン(左)と「MAKE MY LEMONADE」のファウンダー リサ・ガシェ(右)

「持続可能な道のりはまだ長いです」とコメントしたのはアフリカと中央アジアのデザイナーを支援する倫理的ファッションイニシアチブを主宰するシモーネ・チプリアーニ(Simone Cipriani)。「今日の努力が実を結ぶのは数年先ですが、そのためにも我々は今すぐに行動を移さなければならない」と付け加えた。

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お問い合わせ先

www.kering.com

関連情報
  • This article was published marieclaire.fr


    translation: Keiko Suyama 

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