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ケリング・グループが目指すサステナブルなファッションの最前線【FASHION OUR FUTURE イベントレポート・後編】

『マリ・クレール』フランス版編集長のカテル・プーリケン(左)と「ケリング」のチーフ・サステナビリティ・オフィサー、マリー=クレール・ダヴー(右)

マリ・クレールとケリング・グループは共同で、サステナブル・ファッションに特化した取り組み「FASHION OUR FUTURE」を開始。両社の知見やスキルを生かし、業界のエキスパートやセレブリティ、活動家らの意見を取り入れながら、コンテンツの構築やイベント、キャンペーンなどを展開していく。その初イベントとして、6月にフランス・パリで開催されたシンポジウムを、前編・後編に分けてレポート。後編では、シンポジウムに登壇したケリングのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのマリー=クレール・ダヴーへのインタビューを紹介する。

グッチやバレンシアガなどラグジュアリーブランドを傘下に持つフランスのグローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング・グループ」(以下ケリング)は、ラグジュアリー業界の中で環境問題に対して積極的な活動を起こすパイオニア的存在として知られている。25年以上に渡り革新的な素材開発、再生農業の推進、環境問題に対応した様々なツールを開発し、これまで人類と環境への影響を最小限に抑える努力を続けてきた。

先日、パリで行われたマリ・クレール グループ(本社フランス)と「ケリング」が主催したファッションと環境問題に関するシンポジウム「FASHION OUR FUTURE」では、ケリングのチーフ・サステナビリティ・オフィサーのマリー=クレール・ダヴーがサステナブルに関する最新の活動内容と、今後の課題についてマリ・クレールのインタビューに答えた。

ラグジュアリーに必要なものは製品の持続性

気候変動により動植物の保護が緊急課題となっています。「ケリング」はこの課題にどのように立ち向かっていますか?

私たちのブランドに欠かせない天然資源を保護するために、まず生物多様性保護戦略が必要不可欠です。そのため環境への影響を測定するツールとして「環境損益計算書(EP&L)」を作り、Co2排出量、水使用料、大気汚染、水質汚染、土地利用、排気物質を測定し、環境負担を可視化、定量化、比較検討できるようにしています。さらに2017年以降「ケリング・スタンダード」を定め、サプライチェーンの各段階において技術的に生態系を保護するための配慮がなされているかを判断しています。

モンゴルのゴビ砂漠で実地している「南ゴビ・カシミヤ・プロジェクト」では、動物福祉を保証する牧畜技術に焦点を当て、伝統的な高品質な生産を促進し、7年間で25トン以上の環境を配慮したカシミヤを生産しグループ内で使用してきました。2020年には「自然再生基金」を創設し、更なる一歩が踏み出しています。100万ヘクタールの農場と牧草地を再生型農業の土地に変え、高品質な皮革や綿などの原材料を作ることを目的にしています。

消費者はより服の素材に関心を高めていますが、この分野で最も有望なイノベーションはありますか?

イノベーションについて話す時、それは開発に必要な時間を考慮する必要があります。私たちはこの分野で既に120を超えるスタートアップと協業していますが、我々と働く前にまずそのイノベーションが本当に機能し、更に我々の品質基準をクリアしているかをチェックします。とはいえ、再生農業や革なめしの際の重金属の除去など、多くは既に実用化されています。

2021年、「グッチ」は2年の研究開発を経て、動物を使用しない新しいサステナブルな素材「デメトラ」でスニーカーを発売しました。また「バレンシアガ」のWinter 22のショーでは、レザーの代替品となるミセリウム(菌系体)をベースとしたEPHEA™が発表されるなど、次々とイノベーティブな素材が開発されています。

サステナブルな新素材「デメトラ」を使用した「グッチ」のスニーカー
ミセリウム(菌系体)をベースとしたEPHEA™を使用した「バレンシアガ」のWinter22のショー

【関連記事】「グッチ」がサステナブルな新素材を開発。スニーカーも発売

ジーンズの製造は非常に環境を汚染すると言われています。環境への影響をどのように制限しますか?

我々は持続可能な生地のサンプルを作ることを目的として、2013年にイタリアでマテリアル・イノベーション・ラボ(MIL)を立ち上げ、デニムの問題に懸命に取り組んでいます。ラグジュアリーブランドの場合は、多くの量を作らず、より長く着られる素材の開発が急務です。

消費者からは商品の透明性を求める声が高まっていますが、どのように対応していますか?

企業が財務実績を報告するのと同様に、社会的および環境的な目的と結果を一般に公開しています。ブランドはより顧客との会話を重視し、特に販売員はお客様に良い情報を提供できるように訓練しています。タグに全ての情報を書くことは不可能だからです。

若い世代はこれらの問題に敏感ですね。「ケリング」は彼らとどのように前進していきますか?

我々は未来の消費者であるZ世代やミレニアム世代と多くのコミュニケーションを図っています。そのため我々は学生の教育に関しても積極的に行い、例えばフランスのファッションスクール「Institut Français de la Mode」と共同で「サステナビリティ・チェア」を設立、持続可能な開発とファッションのクリエイションを手助けし、また「London College of Fashion」と共に世界初となる大規模なオンラインコースを立ち上げ、ラグジュアリーファッションとサステナビリティが学べる環境を提供しています。今後、さらに他のファッションスクールとも連携を取って行く予定です。

私たちの目標は未来を担う世代がもの作りの段階で正しい判断し、そのためのツールを提供していくことだと考えています。

【関連記事】マリ・クレールとケリング・グループがファッションとエコな未来を考える【FASHION OUR FUTURE イベントレポート・前編】

お問い合わせ先

www.kering.com

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