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トランプ関税があなたのクローゼットに及ぼす影響を解説

wildpixel / iStock.com

連日ニュースをにぎわせているトランプ米大統領の関税政策が、ファッションにどのような影響を与えるのか? 大統領選挙戦が行われていた頃から、その問題について注目してきたエディターの考察を紹介する。マリ・クレール インターナショナルのアメリカ版デジタル記事よりお届け。

ここで、大統領の関税計画について知っておくべきことをすべて説明する。

ドナルド・トランプ氏が2024年、大統領選挙の勝者と宣言されて以来、ネット上ではコントラストメイクアップの方法への興味は薄れ、経済政策のほうへの関心が少しばかり高まっている。具体的には、トランプ大統領が就任2期目の主要アジェンダとして喧伝(けんでん)し、2025年3月3日(現地時間、以下同様)に大統領令に署名した、輸入品への関税(中国への追加関税率)についてだ。

トランプ氏が選挙戦で提案した関税は、すべての輸入品に10~20%、中国からの輸入品には最大60%というもので、最初はさほど騒がれることもなく浮上した。しかし、選挙前の最後の数日間とその直後には、パニックに陥ったファッションマニアや管理職のオフィスにいるCEOから一般市民まで、ネット上で警鐘が鳴り響き始めた。

関税を他国が支払う税金と誤解している人がいるが、実際には製品を販売している企業に請求されるものだ。そして米国の消費者は、多くの海外からの製品を購入している。そのため、関税のツケを払うために、各ブランドは私たちがオンラインレジや実際のレジで支払う価格を引き上げることが予想される。この状況は、小売業界の大変革につながるすべての要因を備えている。私たちの服がどこで作られ、私たちが何を選んで購入するかについてだ。コスチュームデザイナー、エマ・スコットの「Amazon、Walmart(米大手スーパー)、Temu(中国のオンラインサイト)で何でも買う社会が、中国製品に60%の関税が課せられるとどうなるのかに気づいたとき、何が起こるのか純粋に興味がある」というツイートが話題になった。

値札を見て驚くことよりも、もっと多くの問題がある。ファッション・ジャーナリストのエイミー・オデルは自身のニュースレター「Back Row」で「値上げは服を買う消費者に連鎖的な影響を与え、結果としてファッション業界に様々な悪影響を与えるだろう」とつづっている。

トランプ政権が関税計画を最終決定する前、ロビイスト(企業や個人を代表して、政治家や政府に働きかける仕事をしている人)やブランドは抜け穴を探し、専門家たちは2025年の関税によって私たちのクローゼットすべてに何が起こりうるかを描き出していた。その後、トランプ大統領は2024年11月25日、自身のSNSアプリ「トゥルース・ソーシャル」の投稿で、メキシコとカナダからの輸入品に25%の関税をかけることを就任初日に実施すると述べていた。また、中国からの輸入品には少なくとも10%の関税をかけると約束し、さらに引き上げる可能性もあるとした。

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就任からさらに数週間を要したが、2025年3月1日、トランプ大統領はメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税をかけ(カナダのエネルギー輸出に対しては10%)、3月3日、中国からの輸入品の関税を2倍の20%に引き上げると発表した。『NPR』(米国公共ラジオ放送)によると、少なくともカナダと中国の2か国は独自の関税で報復した。

大統領執務室での税制発表は、ファッションウィークのランウェイからは遠く離れているように見えるかもしれない。しかし、今年後半に生産されるコレクションや、すでに店頭に並んでいる商品には影響を与えるに違いない。経済学入門の教科書を倉庫から出してくる代わりに、第2期トランプ大統領の任期中に関税がどのようなことを引き起こすのか、そしてそれがあなたの買い物習慣にどのような影響を与えるのか、その内訳を読んでみよう。

ところで関税とは何?

これは誰もが最初に考える疑問である。「関税」と「トランプ大統領の関税計画」の検索は大統領選挙後の数日間で、合わせて6150パーセントも急上昇し、「誰が関税を支払うのか」の検索は350パーセントも増加した。

最も基本的な定義によれば、関税とは輸入品や輸出品に対して政府が課す税金のことで、製品を輸送する企業が支払う。米国では、衣料品、家電製品、テクノロジー、その他の小売りカテゴリーに対する輸入関税が最も一般的である。多くの場合、国内製造業と雇用の拡大を促進するために実施される。ファッション業界で言えば、「メイド・イン・USA」のタグが付いた商品が増えることを意味する。

しかし、トレンドのスニーカーであれ、トートバッグであれ、1か所で原材料を調達し、組み立て、出荷する製品はほとんどないため、輸入関税が必ずしも意図した結果をもたらすとは限らない。企業はしばしば、事業全体を再構築するためのさらに高いコストを避けるため、関税を即座に支払うべく、社内コストを削減したり、ショッピングモール(またはオンラインショップ)で目にする価格を引き上げたりする。

トランプ大統領の関税計画とは?

トランプ大統領はホワイトハウスに戻る際、関税に関するいくつかの公約を掲げた。第一に、米国に輸入されるすべての商品に10~20%の関税をかけること。第二に、中国からのすべての輸入品に60%の関税を適用すること。そして第三に、メキシコからのすべての輸入品には25%(もしくはそれ以上)の関税をかけるというものだ。彼はこの政策を、連邦政府の資金を調達する方法であると同時に、他国に対する報復のための戦術であると位置づけた。トランプ大統領は、2024年9月のカマラ・ハリス民主党大統領候補との討論会の壇上で、「75年を経てようやく、我々が世界のためにしてきたことのすべてに他の国々が報いてくれることになる」と語った。

厳密にいつ、どのように関税が導入されるかは、すぐには発表されなかった。「ビジョンはあるが、ゲームプランはない」と当時トランプ政権の経済政策に詳しい関係者たちが米『CNN』に語っている。

2024年11月25日までに、関税計画の構想以上のものが出てきた。トランプ大統領は「トゥルース・ソーシャル」に、2025年1月20日の就任初日にカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税をかけ、中国からの輸入品には少なくとも10%の関税をかけると投稿した。大統領はこの決定を、米国に流入しているとされる違法薬物に対する報復と位置付けていた。トランプ大統領はまた、中国からの輸入品に対する関税を引き上げる可能性もあると付け加えた。ワシントンD.C.の中国大使館の代表は、「貿易戦争や関税戦争で勝つ者はいない」と反論している。

トランプ大統領は約束を完全には守らなかった。関税は2期目就任から43日、2025年3月3日に名言され、3月4日午前0時過ぎに発効された関税措置には、前述のカナダとメキシコからの輸入品に対する25%の課税に加え、中国からの輸入品に対する20%の税引き上げが含まれていた。

ホワイトハウスでの演説で、トランプ大統領は関税を「政治家が不正直で愚かで、あるいは何らかの形で買収されたために使わなかった、非常に強力な武器である」と呼んだ。英『BBC』によると、アメリカの株式市場はこれを受けて急落し、世界の指導者たちはすぐにこの政策を非難した。カナダのジャスティン・トルドー首相は、緊密な隣国や同盟国に課税するのは「非常にばかげたことだ」と述べた。

さて、関税は私の買い物習慣にどう影響するのだろうか?

今年の2025年春のトレンドには楽しみなものがたくさんあるが、関税が施行されれば、それらと関わるハードルはさらに高くなるだろう。衣料品、家具、家電製品など、生活必需品の買い物も同様だ。

全米小売業協会(National Retail Federation)の調査によると、この関税案でアメリカ人の購買力が年間最大780億ドル減少する可能性があるという。この調査では、小売業者が負担しなければならないコストは、単独で支払うには高すぎるため、私たちが店頭で目にする価格は上昇すると示唆されている。

「関税は基本的に、商品が他国の国境を越えた時点で徴収される税金であるため、中国から商品を輸入している小売業者は、より深刻な影響を受けるでしょう」と、FIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)で経営管理学を教えるショーン・グレイン・カーター准教授は言う。

綿のドレスやTシャツからランニングシューズ、さらにはブランドバッグに至るまで、「メイド・イン・チャイナ」はあなたのクローゼットのほとんど隅々まで覆っている。「2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して以来、中国はほとんどの価格帯のファッションカテゴリーにおいて、ファッション製造業界の主要な存在となっています」とグレイン・カーター教授は説明する。「エシカルファッションアプリ『Good On You』によれば、世界のファッションの65%は中国で生産されています」

中流階級のファッションや手頃な価格のブランドでさえも、手が届かないと感じるようになることを覚悟しよう。カーター教授は、ファストファッションは非常に価格に敏感なカテゴリーであり、「その結果、ZARAやH&M、その他の企業は、これらの関税を負担する最善の方法を決定しなければならないだろう」と指摘する。

もちろん、ファッション業界は価格上昇を避けるために、社内のコスト削減を行うことができる。しかし、生地の品質や染み防止加工の光沢感、あるいは玄関先に届く荷物の包装など、節約のために他の何かが犠牲になるかもしれない。

長期的には、小売業者がサプライチェーンの再構築を検討することで、価格は安定する可能性がある。「当然、結果として他国で商品調達するほうがより安価になるでしょう」とカーター教授は言う。「そうなれば、複数の企業間での製造競争も激しくなり、消費者向けの小売価格が安定する可能性があります」

トランプ関税は新商品だけに影響するのか?

中古の「バーキン」バッグや以前愛用していたゴヤールのトートバッグでさえ、関税の影響から逃れることはできない。米国の中古高級品市場もまた、さらなる値上げを始め、新品をターゲットとした政策からシフトすることになる。

「二次市場の価格は、一次市場の価格に連動して上下します」と「Fashionphile」(高級ブランドのリセールプラットフォーム)創設者兼社長のサラ・デイヴィスは言う。「そのため、米国に輸入しているブランドが、商品に関税が課せられると、それに応じて小売価格を引き上げることが多く、それは転売価格も上昇することを意味します。小売価格と再販価格は間接的に連動しているのです」

一部の高級ブランド品転売業者は、中古の「レディ・ディオール」やルイ・ヴィトンの「ネヴァーフル」のコレクションをアジアの中古市場から仕入れている、とデイヴィス氏は指摘する。もしヴィンテージ品が海外から調達されれば、さらに高値になるだろう。「これらの商品の輸入に関税が課されれば、米国の再販業者にとっては、より高い仕入れ費用を意味します。業者が利益率を維持したければ、その分を顧客に転嫁せざるを得なくなるでしょう」と彼女は説明する。

2025年に、2024年のレートに近い価格でバッグが欲しいなら、顧客から直接仕入れている企業やP2P(サーバーを介さず、クライアントが対等な関係でやりとりする)のプラットフォームを検討してみるのもいいだろう。これらの企業は、他の市場が直面しているような逆風を免れているかもしれない。「高級ブランドが直営店や百貨店で大幅な値上げを余儀なくされる可能性があるという事実によって、再販のような、より手頃な経路に消費者の関心がさらに集まることになるかもしれません」とデイヴィス氏は言う。「消費者は、ここ数年間、ラグジュアリー業界で見られる価格上昇に対し、すでに不満を声高に叫んでいます。さらに価格が高くなり、手に入る可能性が限られてくることによって、一部の消費者の我慢は限界に達し、再販という、より手頃な価格設定の選択肢を求めるようになるかもしれません」

では、トランプ大統領の関税が発動された今、買い物をやめるべきか?

あなたの欲しいものリストが、最高のデザイナによるトートバッグや高級品でいっぱいであろうと、Amazonで販売されている最高に素敵なTシャツだけであろうと、「注文」ボタンを押す時期は昨年だった。関税がどれくらい続くのかは不透明だが、(トランプ大統領が)「関税」を「辞書で最も美しい言葉」だと宣言したことで、確かにそうなりそうだ。それでも、専門家の見識やドナルド・トランプ陣営の発言によれば、トランプ大統領は一歩も引くつもりがないことを示している。つまり、今年は価格上昇または製品の品質低下(あるいはその両方)がもたらされる可能性が高いということだ。

編集部注:この記事はドナルド・トランプ大統領の新しい関税計画に関する情報とともに、2024年11月26日に更新された。2025年3月3日に発効された関税に関する情報にともなって、同日2回目の更新が行われた。

※(  )内編集部注

translation & adaptation: Akiko Eguchi

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