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イタリアのジュエリー「ダミアーニ」。シルヴィア・ダミアーニさんが語る、美しさの神髄


──シルヴィアさんが最も大事にしているジュエリーは。
「いくつかありますが、ひとつ挙げるとすればダイヤモンドのソリテール(宝石を中央にひとつ配置した指輪)です。5カラットのダイヤがセットされているので、いつも身につけているわけではありませんが、父があるクリスマスに母に贈ったものです。母は最近公の場に出なくなり、『あなたがつけて』と手渡されました。父は母に贈り物をするときはいつもどこかに隠すのです。それを母が見つけるというサプライズが見ていてすてきでした。こうした過去の記憶と母が譲ってくれたという思い出が重なって、胸が熱くなります」


──ジュエリーは人の記憶やつながりと結びつきますね。
「父がよく言っていました。『ジュエリーの作り手は運がよい』と。祝い事や幸せな時に買う人が多い。自分自身のための時もあれば、だれかに贈るためのこともある。私たちは幸せであると同時に、責任も重いのです。買った人の幸せな気持ちや記憶にふさわしい美しいものを作らねばなりません」


──重い言葉ですね。
「父の言葉は私たちに残された遺産です。ジュエラーは責任と義務を負うのです。ダミアーニはブランド名であるだけでなく、私たちの家族の名前でもある。信頼を得るために全力を尽くしています」

「ダミアーニ」ブレスレット
WG×ダイヤモンド ¥27,995,000(税込)


──ところで、高額で一点物のハイジュエリー市場の競争が激しくなっている状況をどう受け止めますか。 
「ディオールやシャネルなどのファッションブランドもハイジュエリーを手がけるようになりました。これは進化です。ハイジュエリーは誰もが手にできるものではありませんが、幅広い人の注目が集まり、つけてみたいと思う人が増えることを肯定的に受け止めています」
「国際的な展開をしているイタリアのハイジュエリーのブランドでは、私たちは唯一、創業者ファミリーが現在も経営しています。ハイジュエリーは注文生産であり、石の管理をする弟とお客さまが直接対話できる。つまり創業者家族と直接やりとりができる。これはダミアーニならではの強みです」


──世界的に女性のリーダーの存在感が強くなっています。ご自身もさまざまな社会貢献活動もしていますが、女性のエンパワーメントをどうとらえますか。

 「子供のころはこんなに女性の社会進出は進んでいませんでした。20年ぐらい前は男まさりの仕事ぶりが平等と思われていた時期もあります。しかし、リーダーは自分らしさを保つことが重要です。機会均等は大事ですが、もっと男女が互いの優れた面を生かせばいいですね」


──イタリアの首相は女性です。
「そうですね。女性がとるリーダーシップの場合、権力で上から押しつけるのではなく、同じ情熱を共有することが多いです。イタリアでも他の国でももっと女性が政治の世界に進出したらいいのにと思います。実際、私も政界進出を打診された経験がありますが、素質がないのでお断りしました。公の仕事にもっと女性が多く携わるようになれば、世界はよくなるはずです」

シルヴィア・ダミアーニさんが語る


──ところで、2024年にダミアーニは創業100周年を迎えます。
「ひとつの到達点であると同時に未来につなげる出発点でもあります。いろいろな思いがこみ上げ、感慨深い。この重要な節目のためにたくさんの準備をしなければなりません」


──具体的には。
「イベントをまずは3月にイタリアで開催し、日本でも行いたいと計画しています。記念すべきジュエリーとして、1点ものを私たちのスタイルで表現する予定です。でも、今話せるのはここまで。それ以上はサプライズです。時が来たらまた喜んでお知らせします」

聞き手:宮智 泉(マリ・クレールデジタル編集長)

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