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自由を求め闘うウクライナ市民を追ったドキュメンタリー『ウィンター・オン・ファイヤー』

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、各メディアは連日このニュースを伝えている。 なぜ、ウクライナがこのような事態にさらされているのか、そもそもウクライナとはどんな国なのか──報道を見聞きしているだけではわからないことも多い。 そこで、ウクライナの歴史や地理的背景、国民性など、この国の置かれた状況への理解の一助となりそうな映像作品を集めてみた。

市民vs大統領、凶暴で壮絶な衝突

ウクライナを舞台とした東西の綱引きは長きにわたる。2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻の背景を知る上で、2013年11月から翌14年にわたりウクライナで起こった騒乱は、重要な出来事のひとつといえよう。

キエフで発生した学生の集会が、やがて大規模な反政府勢力に発展して政府と衝突。その過程を追ったドキュメンタリー映画が『ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い』である。イスラエル系アメリカ人であるエフゲニー・アフィネフスキー監督がディレクションし、2015年にNetflixオリジナルとして公開された本作は、第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

2010年、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチは欧州連合(EU)加盟を公約に掲げて大統領選挙に立候補。しかしその一方で、密かにロシアとの関係強化を進めていたヤヌコーヴィチは、大統領になると一転してEUとの自由貿易協定調印を見送る。突如方向転換したことに対し、欧州統合を願っていた人々は旧ソ連時代への逆行だと反発。13年11月21日にキエフの独立広場でデモが発生した。

ウクライナ語では「マイダン」と呼ばれる独立広場。この時の騒乱は「マイダン革命」ともいわれる

最初に集まったのは300人ほど。しかし、SNSによる呼びかけによって、その数は増え続けた。人々はEU協定署名を訴えたが、同月29日に政府がEUとの交渉破談を発表すると、「ヤヌコーヴィチ退陣」を叫びはじめる。いよいよ看過できないと判断した大統領サイドは、デモ隊鎮圧のために警察特殊部隊「ベルクト」を動員。その日から、 “革命”を叫ぶ市民と政府の間で、凶暴で壮絶な衝突が繰り広げられる。

ベルクトには元囚人の雇われ隊員もいて、100万人に膨れ上がったデモ隊に対して目を覆いたくなるほどの暴力を振るい、果ては赤十字のスタッフまで銃撃する。その光景はもはや警察による市民デモの鎮圧とは言い難い。

いうまでもなく、これは西側の視点で制作された映画である。騒乱には別の側面もあったかもしれない。しかし、戦いの渦中に入り至近距離から捉えた映像は、紛れのない真実を伝えている。ひとたび衝突が始まれば、あっという間に理性もモラルも消散し、過激の一途を辿るものだ、ということを。

125名の死者、65名の行方不明者、そして1890名の負傷者を出したこの革命は、2014年2月22日にヤヌコーヴィチがロシアに亡命し、議会によって大統領を解任されたことで幕を閉じた。

しかし今、ヤヌコーヴィチが再び浮上してくるのではないかという説がある。今後の成り行きを理解するためにも、このドキュメンタリーは一見の価値があるといえよう。本作に映っていた市民が、今どうしているのか……考えると胸が塞がれる。
※『ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い』Netflix独占配信中


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香月友里

かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る

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