Culture

映像不可能と言われ続け、2022アカデミー賞10部門ノミネート!『DUNE/デューン 砂の惑星』
2022.3.8
3月28日(日本時間)発表の「第94回米国アカデミー賞」の作品賞候補のなかで、いますぐ配信で見られる作品を紹介しています。3作目は過去、数々の映画人が挑み挫折した長尺かつ壮大なスケールの物語を、みごと映像化し、オスカーにノミネートされた作品です。
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2022.3.8
3月28日(日本時間)発表の「第94回米国アカデミー賞」の作品賞候補のなかで、いますぐ配信で見られる作品を紹介しています。3作目は過去、数々の映画人が挑み挫折した長尺かつ壮大なスケールの物語を、みごと映像化し、オスカーにノミネートされた作品です。
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ゴリゴリのSFXを駆使したSF作品は、スタッフに与えられる部門の受賞のみに終わりがちなアカデミー賞だが、今年は例外となるかも……と思わせるのが、『DUNE/デューン 砂の惑星』だ。エンタメの枠だけに収まりきれない、重厚感ある歴史物語の始まりを予感させる作品である。下馬評では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が最多受賞するだろうといわれているが、10部門ノミネートの本作の受賞数にも注目が集まっている。
10191年、人類は全宇宙に君臨するパーディシャー皇帝のもと、その臣下である大領家が各惑星を統治する宇宙帝国が築かれていた。ある日、大領家のひとつであるアトレイデス家は、皇帝から“砂の惑星”アラキスの管理者に任命される。アラキスを制すれば全宇宙を制するとまで言われているが、その理由は、香料「メランジ」が採取できる唯一の地で、メランジの売買は皇帝をも凌ぐほどの莫大な利益をもたらすからだ。
この頃、アトレイデス家当主の息子ポール(ティモシー・シャラメ)は、毎夜見る不吉な夢に苦しめられていた。彼は特殊な力を操る母親ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)の血を受け継ぎ、断片的ながら未来が視える能力があった。夢の舞台はアラキスで、その光景は悲惨なものだった。
アラキスの管理権が皇帝の“贈り物”ではないことは、ポールの父親であるレト公爵(オスカー・アイザック)も気づいていた。罠が潜んでいると知りつつアラキスに赴くアトレイデス家。そしてこの日から、陰謀渦巻く壮絶な戦いが繰り広げられることになる──。
原作は米国の作家フランク・ハーバートによる同名のSF大河小説。1965年からスタートしたシリーズは、世界で史上最も売れたSF小説のひとつで、『スターウォーズ』にも影響を与えたといわれている。
この小説の映画化には、過去に数多くの著名な映画プロデューサーと監督が挑んだが、長尺かつ壮大なスケールの物語には歯が立たず、次々と挫折していった。ついに1984年、当時『エレファントマン』の成功で注目されていたデイヴィッド・リンチ監督により映画化が実現したものの、内容的にも興行的にも成功したとはいえない結果に終わる。
こうして多くの映画人の挑戦が徒労に終わったことで”呪われた企画””映像化不可能”とされた小説に、満を持して臨んだのがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だ。アカデミー賞8部門にノミネートされた『メッセージ』(2016年)や、同賞撮影賞と視覚効果賞を獲得した『ブレードランナー 2049』(2017年)などで知られる彼は、原作の世界観を損なうことなく巧みに料理し、最新テクノロジーを駆使して見事に映像化した。本作は世界的に大ヒットし、2023年にはパート2の公開が予定されている。
この映画が成功した要因は、はまり役といえるキャストを揃えたことにもあるだろう。主人公ポール役のティモシー・シャラメは、以前おすすめクリスマス映画としてご紹介した『クーパー家の晩餐会』(2015年)で反抗期真っ盛りの陰キャ高校生を演じていたが、あれから7年、今や“新時代のプリンス・オブ・ハリウッド”と称される期待の星に成長した。本作とともにアカデミー賞作品賞の候補に挙がっている『ドント・ルック・アップ』にも出演していて、ルックスだけでなく演技力の高さも評価されている。
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ポールの母親ジェシカを演じたレベッカ・ファーガソンは『ミッション:インポッシブル』シリーズなどでおなじみ。レト公爵に扮するオスカー・アイザックは、『スターウォーズ』の続三部作/シークエル・トリロジー(15、17、19年)への出演で世界的な知名度を得た。小説『DUNE デューン 砂の惑星』と『スターウォーズ』の浅からぬ縁を考えるとオツなキャスティングだといえる。
1984年のディヴィッド・リンチ版と比べると、ようやく映像テクノロジーが原作の世界に追いついたんだなと感慨深い。見事オスカーを獲得し、“呪われた企画”に挑んで討死した映画人たちの悲願を達成できるか注目される。
香月友里
かづき ゆり。フリーライター。出版社の編集者を経てライターに。同居する5匹の犬猫たちにお仕えしながら、映画とドラマと演劇とJ-POPにどっぷり浸る日々を送る
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