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新世代ポップスター、オリヴィア・ロドリゴの影響力とは?

今、世界中が夢中のシンガーソングライター、オリヴィア・ロドリゴ。全米・全英を含む15カ国で初登場1位に輝いたデビューアルバムでは、10代の女の子たちの等身大の恋愛事情を歌い、絶大なる共感を得る。アジア系アメリカ人であるオリヴィアのエンターテインメント業界での大成功は、アメリカで肩身が狭いと感じているアジア移民の若者たちへのエールとなるのか。

キラ星の如く輝く、アジア系アメリカ人のポップスター

ポップシーンに突如現れたライジングスター、オリヴィア・ロドリゴ。2021年5月に発表したアルバム「SOUR(サワー)」はビルボードチャートで初登場1位を獲得。さらにデビューシングル「Drivers License」は8週連続で首位を獲得し、最近ではSpotifyで10億ストリームを達成した。次のMTV Video Music Awardsでは、5つのカテゴリーにノミネートされている。Instagramのフォロワー数は1,600万人以上、TikTokは1,000万人以上と文字通り、パワーセレブリティの一人に急成長した。

2003年カルフォルニアで生まれたオリヴィアは今年で18歳。幼い頃から歌や踊りが大好きで、ディズニー・チャンネルに出演するなどキャリアを積んできた。そして16歳のとき、ディスニープラスで配信しているドラマ『ハイスクール・ミュージュカル:ザ・ミュージカル』の主役に大抜擢され、一躍人気者に。シンガーソングライターの才能も開花させたオリヴィアは劇中歌「All I Want」を発表し、全米チャートを賑わすことに。

自身のルーツを隠すことなく告白

そんなオリヴィア・ロドリゴは、フィリピン人の父とドイツとアイルランドにルーツを持つ母の元に生まれたアジア系アメリカ人。外見的にはアジア人的な要素は薄い彼女が、アジア系アメリカ人であることを知らない人も多いかも知れない。もっともオリヴィア自身は自分のルーツに関して隠しているわけではなく、3年前に出演した番組で曾祖父がフィリピンから移住してきたことや、祖母の作ったルンピア(揚げ春巻き)を食べるなど、家族が伝統を守っていることを語り”私はアジア太平洋諸島の人間です “と宣言している。とは言え、彼女がドラマ『ハイスクール・ミュージュカル:ザ・ミュージカル』で演じている役柄、ニニ・サラザー=ロバーツがフィリピン人と白人のカップルの娘であることに注目している視聴者はほとんどいないだろう。

オリヴィアだけでなく、多くのポップスターは、自分のアイデンティティを主張しなければならず、外見上の理由から、すべての黒人やすべてのプラスサイズの女性を代表しなければならないと考えがちだ。もちろん、ロドリゴも意図的に自分の経歴を強調しているものの、ほとんどのファンは彼女のルーツを無視。ルックス的にアジア人であることが目立たないため、そのことをファンたちはスルーしているのだ。もちろん、それはロドリゴの意図しているところではない。

「小さな女の子から『アジア系アメリカ人であなたのような立場にいる人気者を見たことがない』というようなメッセージを受け取ることがあるの。それを見ると泣きそうになる。でも確かに私自身も見たことがなかった。ポップスターといえば、白人女性のことだと思っていたくらいだし」とオリヴィアは語っている。彼女が書く歌詞は、アジア系アメリカ人たちの心に響くという意見も多い。

多くのアジア系移民の子供たちを牽引する存在に

オリヴィアは、SNSを通じてアジア人に影響を与える「モデル・マイノリティ」(人種的に少数派でありながら、社会的に成功している人々のこと)についての啓発や、他の有色人種や「Black Lives Matter」運動との連帯についても率直に話している。もしオリヴィアが選挙の投票に行くことを呼びかければ、きっと彼女のフォロワーたちの市民活動を活発化させることもできるだろう。さらに、近頃では、ホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領やアメリカの感染症対策トップのアンソニー・ファウチ博士とワクチンについて会談し、若者にワクチン接種を促すキャンペーンに参加したことも、オリヴィアがいかに「今」を大切にしているかを物語っている。

音楽業界におけるオリヴィアの人気がアメリカ国内だけでなく海外でも高まるにつれ、より多くの有色人種の子供たちが彼女に勇気をもらうだろう。ポップスターという枠にとどまらず、人種問題や社会問題にも高い意識を持ち続けるオリヴィアのさらなる活躍が楽しみだ。

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