【東京クリエイティブサロン 2025】篠原ともえさんが訪ねる、創造性のインスピレーションハブ
デザイナーであり、アーティストの篠原ともえさんが、話題の「東京クリエイティブサロン(以下、TCS )」を体験。「TCS」は、ファッション、デザイン、アート、伝統工芸を縦横に楽しめるイベントで、東京の10エリアで開催されている。今回選んだエリアは、ティーンエイジャーの頃から縁が深く、イベントの中心地でもある“原宿”。創作者としての視点で、TCSの魅力を語ってもらった。
──東京クリエイティブサロンとご自身の共通点を教えてください。
TCSがスタートした2020年は、私が夫と共にデザイン会社「STUDEO」を設立した年なんです。同年に、とてもわくわくする大規模なデザインの祭典が始まったことに私自身も関心を寄せていました。海外都市のイベントにならい、東京をハブとして日本中のコンテンツが一堂に集まるという試みが新鮮でした。エリア同士をデザインがつないでくれていることも楽しみが広がりますよね。 開催地の一つに“原宿”があるのも共通点のひとつ。原宿は、会社を立ち上げた地であるとともに、多感なティーンエイジャー時代の思い出深い場所。自分でデザインした90年代ファッションのスタイルを受け入れてくれた、特別であり神聖な場所です。自分自身のクリエイティブの原体験が詰まっています。その地から、多彩な日本の新しいコンテンツが世界に発信されていくというコンセプトは、注目すべきアクションでもあり、シンパシーを感じます。
若者たちが発信する新しい作品に未来を感じ、刺激を受けたという篠原さん
篠原さんが鑑賞していたのは、こちらの作品。会場には、SNS映えするスポットもある
──本日、原宿エリアの中でも、TCSの拠点となる「クエストベース(ハラカド4F)」を訪ねていただきましたが、どのような印象を持ちましたか?
過去に何度かTCSに訪れていますが、全エリアのハブに当たるスペースがあると一同にコンテンツも観覧できるので楽しみやすいと感じました。ここにくれば、東京の面白さを学べる空間になっています。2025年が初の試みと伺いましたが、ぜひ今後も続けてほしいです。クリエイティブな祭典の中心地として、多くのクリエイターを輩出してきた原宿が選ばれたのは納得であり、うれしいですね。また、中央に東京のイラスト地図と地球儀が融合した空間デザインもとても好きでした(最初の写真で、篠原さんが座っているコーナー)。10のエリアがぎゅっと凝縮された地図では、東京がいかに創造的でアイデアにあふれた都市であるかが一瞬で分かるよう可視化されています。イタリアで開催されているミラノサローネなどは、会場同士が離れた場所にあるようなのでTCSはエリアが隣接し回遊しやすいのも魅力のひとつです。中央に掲げられた地球儀は、東京に集まったクリエイティブな力を集結して、世界に発信していく象徴。ここにいるだけで、エネルギーをもらえるような感覚になりました。
会場を彩る東京のクリエイティブマップはこちら
──2025年のテーマは、「QUEST(クエスト)|さがそう」です。訪れた人に、何かを探してみて、そこから発展してほしいという思いが込められています。このテーマについて、どのように思われますか。
クリエイターとして私がデザインする際にも同じプロセスをたどるので深く共感します。まず、美意識を探求して、発展させていく。クエストベースでは、10のエリア、それぞれの見どころが一目でわかるよう展示されています。エリアの特性に合わせて、ファッション、デザイン、伝統工芸などさまざまな分野があるので、ファッションに興味がある人がアートへ、そしてアートに興味がある人が伝統工芸へ、というように好奇心が循環していくのもいいですね。最初に会場に足を踏み入れたときに、展示を見るだけではなく、体の中に浸透していくようなイマーシブな体験ができる空間だなと感じました。クエストベースで過ごすだけで、自然と探求と発展を体感できるのではないでしょうか。
──他のエリアで、訪れてみたいところはありますか。
六本木です。クエストベースにも一部が展示されていますが、「のとのいえ—里山が紡ぐ、古道具の記憶—」をぜひ実際に見てみたいと思っています。被災した石川県・能登からレスキューされた古材や古道具に宿る美を未来へつなげるというコンセプトは、伝統工芸に興味がある私には興味深いもの。六本木は、大好きでよく訪れる街なので、その地で日本古来の美にスポットを当てた作品が展示されるのもうれしいですね。
ほかに、伝統工芸としては、丸の内では岩手から刺し子を施したスニーカー「SASHIKO GALS(サシコ ギャルズ)」。日本橋では、有松鳴海絞りにルーツを持つ「suzusan(スズサン)」や世界的デザイナーの須藤玲子さんたちが日本橋ならではの素材や、手仕事とコラボレーションした「こいのぼりなう!」など、現代と伝統工芸のリンクも見られるようです。
会社を立ち上げてから、デザインするだけではなく、そのデザインが社会にワークしていくことに喜びを感じています。また、日本の伝統工芸や稀有(けう)な技術をデザインの力でつないでいくことはデザイナーの責務だとも思っています。その答えとしてこれまでの作品に伝統技術とアイデアをコラボレーションさせた革のきもの「THE LEATHER SCRAP KIMONO」があります。この作品は光栄なことに、2022年に第101回ニューヨークADC賞で二つの賞をいただきました。 受賞の際に体感したのは、日本の審美眼は世界に届くクオリティーを持っているということ。TCSの伝統工芸の展示は、日本文化の素晴らしさを再発見し、深く知っていただけるものになっていると思います。この発信は美しく尊い伝統技術と向き合うきっかけづくりになりますよね。
六本木エリアの「のとのいえ—里山が紡ぐ、古道具の記憶—」では能登でレスキューされた古道具たちが展示・販売される
──心に残った展示を教えてください。
木材の構造物が目をひく、「過剰性のニワ」をテーマに建築とAIの可能性を探った展示です。積水ハウスと東京大学特別教授の隈研吾さんが中心となって設立した「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE – KUMA LAB)」の学生たちの作品で、循環や再利用、環境づくりに根付いた視点が軸になっていることに刺激をいただきました。
先述の革のきものでも、本来廃棄されるエゾ鹿の革の端を生かして、水墨画のような表現をしています。ものづくりにおいて、今やSDGsは創作マナーの一つ。何かを生み出すときには、まず社会的解決をしているかというソリューションが問われます。私は、これを難しいことではなく、デザイナーとしてどう取り組めるかという挑戦であり、好奇心を掻(か)き立てられる課題だと捉えています。
未来を担うデザイナーたちが同じように、試行錯誤している姿勢に胸を打たれました。いい意味で、迷いや問いかけが漂っていることにも愛おしさを覚えますね。 展示を真剣に見ている学生の姿も微笑ましい光景でした。
国内外から集まった「KUMA LAB」の学生たちの作品の前で。篠原さんの衣装は、ご自身でデザイン・制作されたオリジナル。緻密な鉛筆画で大輪の花が描かれている。4/25(金)から六本木MIDTOWNでスタートする「こいのぼりGALLERY」にて、同じ手法の鉛筆画で描かれた鯉のぼりも展示される
同じく「KUMA LAB」の作品の一つ
──若者のクリエイターたちの才能を育て、自信を持たせることもTCSのテーマのひとつです。その視点で注目されているイベントはありますか。
クエストベースの展示にもありますが、TCSの一環として、3/29(土)に六本木ヒルズ大屋根プラザで「Next Fashion Designer of Tokyo 2025/Sustainable Fashion Design Award 2025(ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ 2025/サステナブル ファッション デザイン アワード2025)」が開催されます。「Next Fashion Designer of Tokyo 2025」は、東京から未来を担うデザイナーを生み出し、世界で活躍できる人材の育成を目的に、東京都が都内在住または在学の学生を対象としています。「Sustainable Fashion Design Award 2025」は、日本の伝統文化であるきものの生地などを活用した新たな作品を、世界に発信するアワードです。私は、後者の審査員を務め3年目となります。
東京都がファッションの祭典を開催したことも大変うれしく驚きましたが、行政がこういったクリエイティブなコンテンツとコラボレーションすることに未来を感じます。私自身、高校、大学とデザインを学ぶ中で、さまざまなファッションアワードに応募した思い出があり、若者に挑戦するチャンスを設けてくれたことに感謝したいですね。 エントリー作品は、じっくり手仕事と向き合いよく練られているものが多く、ファッションを愛するいちデザイナーとして、参加者と同じ温度感でこのアワードを見守っています。
篠原さんが最終審査員となっている若手クリエイターの登竜門のひとつであるアワードのエントリー作品の一例
──最後に、これから訪れる方たちにメッセージをお願いします。
TCSは、23日(日)の最終日まで、イベントが盛りだくさんです。まずは、ぜひ原宿のクエストベースへ足を運んでみてください。
友人、パートナーはもちろん、お子さんと一緒に来ても楽しめるはず。クリエイティブなパワーにあふれた空間では、心地よいアート体験が待っています。会場中央のイラストマップの周辺でくつろぎ、毎日開催されるトークショーを見るのもおすすめです。 原宿は、昔からクリエイターたちに愛されてきた縁起のよい場所。海外から足を運ばれている方々の姿も多く見かけ、感度の高いみなさんがTCSにも集結しています。これからデザイナーやアーティストを目指す人たちにとっても、きっとインスピレーションを授けてくれますよ。
costume: Tomoe Shinohara photos: Yuya Miyata hair & make-up: Misato Narita text: Rica Ogura
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